オグナ 小説(6)
↑これまでのお話
それから数日は何事も無く過ぎた。
私が大人しくしているからなのかも知れない。
あの衝撃の出会いから考えると拍子抜けな気がした。
まあ、顔だけ皇子には大人しく旅立って欲しい。面倒事は嫌だ。
そう思っていたのに
ただ、頼まれた野菜を届けに出ただけなのに、庭の中心で綺麗な女性に愛を囁いている顔だけ皇子を目撃してしまう。
囁いているだけじゃなくてそこで抱き合い顔を寄せ合っている。
ひゃー
慌ててその場から逃げた。
あとから聞いたらアレはいろいろなところで目撃されるらしい。
相手はオトタチバナヒメというあの顔だけ皇子に付き従っている妃なんだそう。
そんな存在がいるならもう私の事は忘れてるよね。
なーんて思っていた時が私にも有りました
「姫さま、オトヨ様がお呼びでございます。」
と通達があった
私はスズ達に着替えさせて貰って父に会いに行く。
「ミヤズです。」
部屋の外から声をかける
「入れ」
オトヨの部屋だけ軒が深く、外から葦簀を立て掛けて有るので昼間でも薄暗く目が慣れるのに少し時間が掛かった。
父は板の間に円座の上で胡座をかいている。
私は遅くに生まれた子なのだがオトヨは姿勢も良く精悍な顔つきで年齢を感じさせない。
「座りなさい。」
「はい。」
父の前に少し距離を空けて座った
「聞いていると思うが、今、小碓命が来ている。」
「はい。」
「タケイナダネから聞いたがもうすでに面識が有ると言うことだな。」
「はい。お会いしました。」
「ミヤズを妃としたいそうだ。」
「はい。ーーぅえぇ?」
「否は無しだ。」
「嫌です、あんなあっちでもこっちでもイチャイチャしている節操の無いやつ。」
立ち上がって父に少し近づく
冗談でしょ、遠征に女連れて歩くようなのに嫁ぐの?
嫌すぎる
「皇子だからな。無下にもできん。」
「でも策は有るのでしょう?」
「策は有るが、使わん。妃になれ。」
「なぜですか?」
「なぜ、か。」
オトヨは楽しそうに顎を擦る
「なんとなく、だな。天叢雲剣が選んだのだろう?」
「あれは…、確かに光っていましたけどそれとこれとは関係ないでしょう」
「そうなのか?」
「わ、かりませんけど…」
だんだん声が小さくなる
「直ぐにとは言わんらしい。」
オトヨが手で座れとしたのでそこに座る
「なぜ天叢雲剣が光りだしたのかが知りたいのだそうだ。だから暫く近付くのを許して欲しいと。」
「そういうことなら良いですけど。じゃあなぜ嫁ぐとかそんな話になるのですか?」
「それは単純に気に入ったらしい。」
なんだとー!
それで良いのかくそオヤジ!
とんでもないな、あの顔だけ皇子っ
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