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中国映画『独行月球』(邦題:月で始まるソロライフ)その1

 ここ3~4年、以前にもまして中国の映画とドラマをよく観るようになり、観れば観るほど中国の映画・ドラマは年々面白くなっていると感じます。気がつけば、年間数十本観るようになっていたので、観た映画やドラマの感想などをつらつらと書いてみようと思います。また、中国映画やドラマを観ている方の中には中国語を学んでいる方もたくさんいるかと思います。自分も同じです。映画やドラマは中国語の能力向上にもものすごく有用だと思うので、中国語についても少し触れつつ書いてみようと思っています。
 最初の1本を何にするかはものすごく迷いましたが、やっぱりこういった記録を書くキッカケになった1本にすることにしました。
 というわけで、今回は《独行月球》(邦題:月で始まるソロライフ)です。

【独行月球の好きなトコロ】
・最初のオープニングのポップな感じ
・独孤月と刚子(カンガルー)の間のバトル→交流→友情→家族のような愛情
・それぞれの場面にマッチした音楽(特に「回家之路(カントリーロード)」とColdplayの「A head full of dreams」)
・宇宙を描いた画像がすごくリアル(ウソっぽくない)
・沈腾と马丽が共演していて、しかも主人公・独孤月の全ての動機と原動力が司令官・马蓝星への愛情という描き方
・他の映画やドラマで観たことのあるキャストの新たな魅力を発見できた

【かぶりキャスト】※今まで別の映画やドラマで観たことのある俳優
沈腾(独孤月):《夏洛特烦恼》《满江红》《西虹市首富》《抓娃娃》
马丽(马蓝星):《第二十条》《夏洛特烦恼》《这个杀手不太冷静》
常远(朱皮特):《人生路不熟》《夏洛特烦恼》
黄才伦(葫芦丝儿):《这个杀手不太冷静》
辣目洋子(魏辣斯):《热辣滚烫》《抓娃娃》《大反派》《末路狂花钱》

【お気に入りシーン その①】
・月に隕石がどんどん降ってくる場面で既に隕石が落ちたトコロ(クレーター)に2度落ちることはなーい!と叫びながらクレーターに飛び込もうとしたら同じトコロに落ちてきて吹っ飛ばされるところ。
 独孤月:“两颗炮弹不可能落在同一个弹 坑 里――――!!”(2発同じ全く同じトコロに落ちるなんてことは無ーーーい!!)

【お気に入りシーン その②】
・アポロ18号の機体では自分と刚子の両方が一緒に乗ることができない為、刚子を僻地に捨ててこようとして刚子に締め上げられてる時に偶然アイデアが閃いて、それを機に物語が一気に展開していくところ。
 独孤月:“明朝有个叫万户的人,想飞上天,就坐在了绑满了二踢脚的椅子上,椅子现在咱们有了,就差二踢脚了。动力最大的二踢脚就在月球,宇宙之锤的原型机就存放在这,人类第一个月面基地,长存湖科研基地。(明の時代に万戸という人物がいて、彼は空を飛んでみたいと思い、ロケット花火を何十本もくくりつけた椅子を作り出したんだ。俺達はもう椅子は持ってる。あとはロケット花火だ。)
 本当にそんな人が実在したのか知らなかったので、ググってみたら本当にいました。この映画観なかったら、どう勉強してもこの人物のことを知る機会なんかなかったんじゃないかと思います。新しい知識や物事を知れるのも映画の好きなところです。

【お気に入りシーン その③】
・长存湖科研基地に行こうとするも、エネルギーの関係で行く方法がない、地球のスタッフ達もお手上げ状態の中、独孤月が見事な発想の転換で行く方法を見つけた時に画面2分割で独孤月と马蓝星が同時にセリフを喋るところ。
独孤月:来了。
马蓝星:他不是不分东西。
独孤月:我就是要逆向而行。这-就是我的计划。
马蓝星:这-就是他的计划。
马蓝星:月球的自转速度只有每小时十六点六公里,也就是说太阳光在月表的移动速度,也只有每小时十六点六公里。
独孤月:只要一直追着太阳跑,白天就可以从原来的十四个地球日延长到四十一个地球日。
马蓝星:我们认为这个任务不可行,是因为白天不够长。
独孤月:只要我把白天延长,这个任务就完全可行。
马蓝星:只要坚持每天跑二十个小时以上
独孤月:绕月一圈的同时
马蓝星:载上宇宙之锤,-任务就完成了。
独孤月:任务就完成了。
 この2人の共に歩んだキャリアや様々な背景を知った後で映画を観てるので、2人の絡む場面というのは脳内で勝手にテンション2割増しで処理されてると思うんですが、それでもイイです。

【お気に入りシーン その④】
・刚子を載せたコンテナが途中で離れてしまって、それを助けに戻るかどうかという場面で、马蓝星が“不能救,但是,他会救(助けに行ってはダメ。でも、彼は行くわ。)”と言った後の展開。
马蓝星:不能救。但是,他会救。
独孤月:我才不救呢。你死了你也怪不着我。让你别来,你别来,你偏要来。我要回去救你,咱俩都得死。你会死,我会死,你会死,我会死,你会死,我会死,你会死,我会死,你会死我会死,死就死――!
葫芦丝:他掉头了!他竟然掉头了!
独孤月:刚子!我来了!
中介人:他这下漂移一下子就漂进了我的心里。
八级钳工:是个爷们儿!
葫芦丝:这个世界上有这样一种人,普普通通是他的人设,碌碌无为是他的日常,但是在关键时刻,他们总能挺身而出,逆向而行!独孤月,就是这种人!
马蓝星:笨蛋。
 前半のセリフはツンデレ感満載で、そこからの「死就死――!」って叫びながらの大ターンは普通にウルって来ました。おちゃらけナレーターもココのナレーションあたりから感情剥き出し、みんなの心の声の代弁者みたいに見えてきて、この映画の盛り上がりに不可欠な役になってきました。助けに来てくれた独孤月の顔を宇宙服のヘルメット越しにペロペロ舐める刚子と再びツンデレモードに戻る独孤月もまたイイです。

【お気に入りシーン その⑤】
・刚子を助けに戻ったことで月盾基地への最後の55kmが届かず、もう最後の頼みの綱「探月狗」もアッサリ使いモノにならなくなり、絶体絶命に。もうこのまま最後の時を迎えるしかないのかという時でも銀河を見上げながら马蓝星への想いを口にする独孤月。そしてここで流れてくる「回家之路」。超好きな場面です。
 その後の閃きからカンガルースキーへの流れ、そして、軽快な音楽にのって月面を滑っていく場面、更に最後に現れた大峡谷。そこに迷うことなく突っ込んで、みんなが「あ~っ!」と絶望にも近い表情を浮かべたところからのジェット噴射月面空中飛行!泣きました!あのジェット噴射した瞬間の葫芦丝の表情とみんなが歓喜の雄叫びをあげている時の马蓝星の表情はスゴイ演技、絶妙な表情だなぁと感動しました。
 ちなみにこの時に流れてる音楽はCold Playの「A head full of dreams」という曲で、洋楽に疎い自分はこのバンドのことも知りませんでしたが、この場面へのマッチ度と曲名、歌詞がすごく好きで、彼らのドキュメンタリー映画を観ようと思ってます。

【お気に入りシーン その⑥】
・以前、地球からのシグナルだと思っていたのが実は刚子の尻尾が触れた機器の雑音だったことを知り、地球はやっぱり滅亡してる、もう人類はいないんだ、と絶望して最後に马蓝星に宛てた手紙を書くところ。とその内容。
 独孤月:马蓝星,你最喜欢的这首歌我已经学会了,原以为还有机会能唱给你听,现在看来,是不可能了。你知道吗?一直以来我习惯了孤独,直到现在我才明白。人活着的意义在于加班回到家,有人能为你亮起一盏灯,累了,有人能陪你喝杯酒,陷入低谷的时候,有人能给你一个温暖的拥抱。这两年来,我努力地活着,就是为了重新回到你们身边,回到你的身边。但是现在,我已经没有再坚持下去的理由了。
 この後、地球の基地はスタッフ全員が何かの計画を立て、実行するかのような慌ただしい動きを見せます。その動きを見て、『宇宙兄弟』の中でアメリカ、ロシア、JAXAが一つのミッションの為に協力して懸命に力を尽くす場面を思い出し、その時の感動が蘇ってきました。映画の中のこの場面って、その後の地球規模の電気文字の計画だったんだと思いますが、その実行と马蓝星の人々への呼び掛けもすごく良かったです。もちろん、『独孤月,你不是一个人(独孤月、あなたは一人じゃない)』が『独孤月,你不是人(独孤月、あなたは人じゃない(=このろくでなし)』に変わってしまって、独孤月が膝から崩れ落ちるところも好きです。もし韓国漫画の原作にない場面だったら、よくこんなの思いつくなぁと驚きです。原作の韓国語や日本語で全く同じ文で表現した場合、意味は通じるけど中国語ほどの絶妙感はないと思うので、本当にスゴイなぁと思ってます。

 兎にも角にも、人類が滅亡していないことを知って、生きる気力を取り戻す感激の場面をこういう搞笑な場面にするのが沈腾、马丽の映画のスゴイところ。

というわけで、この後の隕石月面衝突から迎えた613日目、独孤月は遂に地球と交信に成功するのですが、この場面も良すぎて良すぎて……
このまま書き続けるとキリがなさそうなので、一旦ここまでにして、映画の後半40分は別稿で書きたいと思います。


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