オルガンの練習と、母と弟 | 母とのこと #1
幼稚園のころ、オルガンを習っていた。
家で練習するように、って言われていたのだろう。
記憶しているその日、オルガンに向かっていたら、母が弟を抱いて様子を見に来て、練習しているわたしの横に立った。
わたしがオルガンをひいていると、弟がオルガンのふたに興味を持ったのだろう。ふたに手をかけてしまい、オルガンのふたがバタンと閉まった。
オルガンを弾いていたわたしの手は、当然、挟まれた。
はっきり覚えてはいないけど、わたしはたぶん、びっくりして、そして痛くて、泣いたと思う。
その次の日、わたしがオルガンに向かっていると、母はまた弟を抱いて様子を見に来て、わたしの横に立った。
わたしは、
弟がまたふたを閉めてしまうんじゃないかと怖くて、オルガンから手をひっこめた。
昨日あんなことがあったのに、お母さんはなんでまた同じように弟を抱いて横に立つのだろう。わたしが痛い思いをしても、どうでもいいのだろうか。
また手を挟まれる不安と、理解できない母の行動と...
わたしは混乱して、何も言えず、だまっていた。
翌日だったか、何日か後だったかは覚えていない。
母が言った。
あんた練習したくないんだろうから、オルガンの先生にやめるって言っておいたよ。
母は、そんな母だった。
わたしのことを、勝手に判断して勝手に決めた。
自分が、わたしが練習しにくくなるようにしてないか、なんて考えない。
わたしが自分で考えて決められる子になるように、なんて考えない。
母は、そんな母だった。