合唱曲

  学校は好きじゃなかった。好きじゃなかったのだけれど、なぜだか〝合唱曲〟が堪らなく好きだった。「赤いやねの家」「君をのせて」「翼を下さい」「Believe」「心の瞳」「時の旅人」「旅立ちの日に」他にもまだまだある。心の瞳は好きだった先輩のクラスが歌った曲で、一曲まるごとがその淡い恋心の象徴そのものみたいに、今でも聴けば一瞬にして当時の気持ちに引き戻されてしまう。

  合唱曲の魅力は、何といってもその爽やかさにある。美しい歌詞と、伸びやかなメロディー。歌っているときは皆一斉に同じ言葉を発し、どんなに荒んだ心を持っている者がいようとも、そこには汚れた言葉も、罵りも存在しない。捻くれもののわたしが、正統派の代表のような〝合唱曲〟に心惹かれるのは、そんな現実離れしたところにあるのかもしれない。

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