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【国際ニュースを分かりやすく解説!】フランス上院・下院で移民法案が可決され成立。


ニュースの内容

概要

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、国内で激しい論争を引き起こしている新しい移民法案を擁護しています。この法案は、一部の政治家や市民からの批判にもかかわらず、「フランスに欠けていた盾」として提示されています。マクロン政権内での意見の相違が明らかになり、この法案に対する内部の深い分裂が表面化しています。法案の主な内容には、移民の規制強化や社会福祉アクセスの制限が含まれており、これが左派の地方政府との間で特に議論を呼んでいます。マクロン大統領は、この法案がフランスの社会的統合と安全保障に対する重要なステップであると強調しています。

法案の内容

  1. 国籍の剥奪: 警察官や政府代表の故意の殺害で有罪判決を受けた二重国籍者は、フランス国籍を剥奪されることがあります。

  2. 家族再統合規則の厳格化: フランスに住む権利を得た外国人は、家族を呼び寄せる申請をする前に少なくとも24ヶ月(現行は18ヶ月)待たなければならず、安定した収入と健康保険を持っている必要があります。さらに、フランスに来ることを希望する配偶者は21歳以上でなければなりません(現行法では18歳)。

  3. 移民を受け入れない国への制裁: 移民法案には、不法移民の送還に関する協力や、フランスとの移民流入管理に関する合意の尊重に基づいて、開発援助を条件付ける条項が含まれています。

  4. 外国人学生の保証金: 学生ビザを申請する外国人は、将来の送還費用を保証するための返金可能な預金を行う必要があります。ただし、経済的に困窮している学生や優れた試験成績を持つ学生には例外が認められることがあります。

  5. 予防拘留の適用拡大: 公共秩序に対する脅威を構成する行動をとる予備審査を受けている難民は、逃亡のリスクがある場合に特に、予防拘留されることがあります。

  6. 外国人未成年者の行政拘留の廃止: 外国人未成年者はもはや拘留施設に入れられなくなります。

  7. その他の規定: 法案には、非EU移民の失業者が住宅手当を受けるまでの待ち時間を5年に延長すること、移民の子供がフランス国籍を取得することを難しくする移民割当の導入などの措置が含まれています。労働力不足の分野で働く移民は居住許可を取得しやすくなる一方で、不法移民の追放も容易になります。

この法案は、エマニュエル・マクロン大統領の政党内での重大な反対と内部の不一致にもかかわらず、フランス議会の下院を通過しました。法案の可決には保守派議員の支持が重要であり、極右からの支持も受けましたが、その支持は法案の通過には必要ありませんでした。法案の可決により、いくつかの左派閣僚が反対を表明し、保健大臣のオーレリアン・ルソーは移民法の厳格化に抗議して辞任しました。

エリザベス・ボルヌ首相は、この法案が「予備審査申請の処理手続きを大幅に簡素化し、犯罪者や過激派の外国人を迅速に国外追放することを可能にするため、我々のシステムをより効率的にする」と述べています。

この法案は、ヨーロッパ全体で移民政策が厳格化する傾向を反映しており、フランスにおける移民と統合に関する重要な議論を引き起こしています。

よく分かる解説①なぜヨーロッパ全体で移民政策が厳格化しているのか

ヨーロッパ全体で移民政策が厳格化している背景には、いくつかの主要な要因があります。

1. 政治的・経済的不安定性の増加

  • 中東と北アフリカの危機: 特にシリア内戦やリビアの混乱など、中東や北アフリカ地域の政治的、経済的不安定性が多くの難民を生み出しました。これらの難民は安全な場所を求めてヨーロッパへ流入しています。

  • 経済的不安: 経済的な理由で移民を求める人々も増えており、特にアフリカや東欧からの経済移民が目立ちます。

2. 社会的・文化的な懸念

  • 統合の問題: 多くの国で移民の社会統合がうまくいっていないとの懸念があります。言語の障壁、文化の違い、雇用市場での挑戦などが、統合の過程を複雑にしています。

  • アイデンティティと価値観の衝突: 移民による文化的多様性が、一部の国民の間でアイデンティティの危機や価値観の衝突を引き起こしているとの認識があります。

3. テロリズムとの関連

  • テロ攻撃への恐れ: 近年、ヨーロッパで発生したテロ攻撃は、一部では移民や難民と関連付けられています。これにより、一部の国民や政治家の間で移民に対する懸念が高まっています。

4. 右派の台頭

  • 右派ポピュリズムの成長: 移民に批判的な右派ポピュリズムの政党や政治家がヨーロッパ各国で支持を集めています。これらのグループは、移民に対する厳しい制限を訴えることが多いです。

5. EU内の調整と対立

  • EUの政策の調整: EU加盟国間で移民に関する統一されたアプローチの欠如が、政策の調整において課題となっています。

  • 国家主権の問題: 移民政策に対するEUの介入に反発する国もあり、国家主権と地域共同体間のバランスをとる問題が生じています。

よく分かる解説②フランスにおける移民の歴史


フランスの移民政策の歴史は複雑で、国の政治、経済、社会に大きな影響を与えてきました。以下に、主要な時期とそれに関連する政策の概要を説明します。

第一次世界大戦前(1900年頃まで)

  • 初期の移民: この時期、フランスには主にヨーロッパの隣国からの移民が流入していました。特にイタリア、ベルギー、ポーランドからの移民が多かったです。この時期の移民政策は非常に柔軟で、労働力として移民を受け入れる傾向にありました。

第一次世界大戦後(1918年~1939年)

  • 労働力の需要増加: 第一次世界大戦後、フランスは労働力不足に直面しました。そのため、外国人労働者を積極的に受け入れる政策を取りました。特にポーランド、イタリア、スペインからの移民が増加しました。

  • 経済危機と政策変更: 1930年代の世界恐慌により、フランス経済は大打撃を受け、移民に対する態度が変わりました。失業率の上昇と共に、移民制限政策が導入されました。

第二次世界大戦後(1945年~1970年代)

  • 再建と労働力の需要: 戦後の復興期には、労働力不足が再び問題となり、フランスは主に南ヨーロッパや北アフリカからの移民を積極的に受け入れました。

  • 「ゲストワーカー」プログラム: 1950年代から1970年代にかけて、フランスは一時的な労働者としての「ゲストワーカー」を多数受け入れました。これにより、アルジェリア、モロッコ、チュニジアからの移民が増加しました。

1980年代以降

  • 統合政策の強化: 1980年代以降、フランスは移民に対する統合政策を強化しました。これには、フランス語教育や市民権教育が含まれます。

  • 移民法の厳格化: 2000年代に入ると、フランスは移民法を厳格化し、不法移民の取り締まりを強化しました。また、合法的な移民に対しても、より厳しい統合要件を設けるようになりました。

現代の課題

  • 多文化社会との融合: 現代フランスは、多文化社会としてのアイデンティティを模索しています。移民社会の統合、多文化主義と国家アイデンティティのバランスが主要な課題となっています。

  • 難民問題とEUの役割: 近年の中東やアフリカからの難民流入により、フランスはEU内での移民政策調整にも関与しています。

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