Day in,day out
窓から入ってくる風が、初夏の匂いだった。
たったそれだけで
記憶と一緒に思い出が鮮明に押し寄せてきて、溺れそうになる。
匂いが記憶と本能に直結しているというのは本当だなといつも思う。
はじめて、これからあの人が新しい生活をはじめる町へ会いに行った日のこと
周りが手にする"日常"が私たちには特別で、
その日常を一緒に過ごせることが幸せで
遠くない未来にまた必ずやってくると信じていた日
些細な願いすら突然叶わなくなって
わたしの時間はずっと止まっている。
欲しいものは、欲張りな願いなんかじゃない
それがたとえ偽物でも
わたしにとってかけがえのない時間で
当たり前じゃないからこそ
心の底から愛おしい、大切なもので
ただそれが永遠に続けばいいと思っていた。
未来に期待をすることが、欲張りな願いだったのか
それが突然絶たれてしまったのは
欲を出したわたしへの罰なのかはわからないけど。
叶うなら
せめてあの夏まで時間を巻き戻したい
会えなくても まだいまよりも、
ずっとずっと幸せだった時間に。
たった半年の
たった数える程しかない儚い夢みたいな
だけど心から満たされていた時間
雪が溶ければまた過ごせると思っていた、
特別で愛おしい日常
幸せだった記憶のかけらを食べながら
あの日から抜け出せないわたしは
ずっと夢の中を生きてるみたいに戸惑っている。
あなたを思って泣いても
現実は変わらない
ならばせめて
夢の中で会うことを願うくらい
許されはしないのかな。