第3号被保険者制度(3号年金)を批判する・その3〜年金局長の著書(2)
引き続き、年金局長の著書を見ていきます。
「新年金法・61年金改革・解説と資料」吉原健二編著https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001hjdu-att/2r9852000001iqsm.pdf
1985年(3号制度制定当時)には女性労働者数が専業主婦の数を初めて抜いて、また主婦も国民年金に自主的に加入する率が7割に及んでいる状況が前回説明されました。
状況的に主婦ももう国民年金保険料の支払いを義務化しても良さそうなものですが…
3号年金がなぜ必要だったか
国民年金加入者の4分の1は主婦だったとは知りませんでした。結構なボリューム層ですよね。
しかも、厚生年金と国民年金を合わせた全被保険者数は、「女子2500万人」に達していて、「男子2700万人」と大差なかったらしいです。ただ廃止するわけにはいかないと言いますけど、そのまま強制加入に移行しても、それほど深刻な影響にはならないですよね。
サラリーマンの妻以外の強制適用の時はそれでも構わず推し進めたんじゃないんですかねえ。
他の無業者と同じルールで免除にすればいいのではとしか思いませんが。
しかしやっぱり「すでに主婦の七割が納めてますよね?」って意見、当時もちゃんとあったんですね。そりゃそうですよね。
まじですか??サラリーマンの給料は全額把握して厚生年金きっちり天引きしてるのに?家でやってる副業までは見抜けませんてこと?だったら自営業者のほうが把握難しくないですかね。
なんかもう面白くなってきました。なんで主婦だけそんなに手取り足取り心配してあげているのか。すでに主婦以外の女性は強制加入させられているうえに、当の主婦ですら七割が自分から加入済みなのに。
「したのである。」と言われても、なんかいきなり結論ぶっ飛ばしてませんかね。現実的な方法とは。私の感じる現実とはずいぶん異なるようです。
これって、厚生年金の加入者全員に妻がいるという前提なしには成立しない論理じゃないんですかね。
3号制度への疑問の声に答える局長
ほらやっぱりおかしいって言われてる。
この理屈だと、配偶者加給年金が全廃されているべきですけど、妻が終生受け取れたこの頃よりもだいぶ短く期間限定となったとはいえ、2024年の今に至るまで連綿と続いてるんですよね。
そもそも、年金制度を個人単位の保証とすることが、年金改革の最大の目的だったような。これまでどおり夫の保険料でまかなわれることにしたらおかしいじゃないですか。しかも負担してるのは「夫」じゃなくて「厚生年金加入者全員」なのに。
健康保険制度は主婦と他の無業者とを分けてないんだから、それを参考にするなら、他の被扶養者にも3号を適用するか、他の被扶養者と同様に主婦も年金払うようにしないとやっぱりおかしいですよね。
事務的にもたいへんなところ恐れ入りますけど、サラリーマンの妻だけ特別扱いする3号制度もよっぽど事務的に大変じゃないんですかねえ。
(苦笑)
その後40年間、見事に主婦の自立心を奪ってきましたね。
さて続けて、「夫が仕事を辞めたり死んだりしたときに、事務的に煩雑じゃないか、実務上うまくいかないのではないか」という反論に対して局長答えていわく、
え、私も必要な届け出をきちんきちんとするから年金も健康保険も免除させてくれませんかね。
そもそも1号でも2号でも確定申告があったり転職や転居をする時には届け出必要じゃなかったっけか。
ここ重要ですね。というのも「厚生年金はもともと夫婦二人分の金額を払って二人分の年金もらう制度だ」という理由で3号年金を擁護する人を頻繁に見かけるんですよ。
3号ができた時に、ちゃんと年金権は個人単位となることが強調されている。それこそが当時の年金改革の柱ですからね。1985年以降の厚生年金加入者は二人分払ってはいないし、二人分の年金が支払われるべき根拠はどこにもないということがよくわかります。
3号制度を成立させて感慨に浸る局長
……「名実ともに女性の人権と権利が認められたといえるであろう」
うう腹立つ。
一体何にもっとも迷ったのか知りませんけど、他の女性と同様に主婦も強制加入で保険料を徴収する方向にすれば、「苦心」なんかする必要なく平等な年金権を実現できたはずなのに。
「夫人の年金権の確立」というか「家父長制特権の確立」じゃないっすかね?
問題がすべて解決されたどころか巨大な火種を植えつけられて40年も女性を分断させてきたんですが。
しかも「女性にとっては喜ばしい」とか言うの図太すぎませんか。「評価されなければならない」て自画自賛楽しそう。
さてクライマックスを迎えてツッコミどころだらけでしたが、今回はこの辺で。次回は、働く女性の代表として女性議員がどのように反論したかを見ていきましょう。
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