第3号被保険者制度(3号年金)を批判する・その7〜Q&A
今回がとりあえず3号制度について最終回です。
以前、ツイッターで3号制度への怒りを語っていたら
「保険料免除制度は3号だけじゃありませんが?学生も無職も使えまーす」
と勝ち誇ったリプをもらったことがあります。
3号以外の免除制度は、重い病気や障害がない限りは払わなかった分だけ将来もらえる年金額が減る制度です。そもそも他の無職者向けの制度が3号と同等ならわざわざ3号制度を作る必要ないですしね。
また、例えば下記のようなサイトでよく、
「世帯年収が同じなら受け取る年金額も同じだから3号制度は不公平じゃないよ!」
という説明がされておりますが、そんなわけあるかと思いますね。
3号の話を見ているととかく詭弁や勘違いが多いんですよね。
というわけで、いままで見かけたよくある3号制度擁護について「FAQ」の形で私の反論をまとめました。
Q1. 3号の掛け金は夫が払っているので赤の他人は負担していませんよね
A1. 3号の掛け金は、独身者も含めた2号被保険者全員で負担しています。赤の他人が負担しています。
Q2. 厚生年金は二人分の金額を支払って、その分を夫婦でもらえる年金なので、3号年金制度こそ平等な制度ですよね
A2. 厚生年金がもともと「働く夫と専業主婦」の組み合わせを想定して設計されたのは事実ですが、3号年金が発足した1985年の年金大改革の時に、同時にその概念もなくなりました。
今の厚生年金は、基礎となる国民年金(一階)の上に積み上がる、「二階建て」の年金という考え方であって、決して二人分ではなく、一人分です。
また、国民年金の場合は任意で加入する「確定拠出年金」が「二階」の部分に当たります。その際にも二人分払っていることにはなりませんよね。
余談ですが、仮に厚生年金が「二人分」の年金保険料を支払っているのだとしても、独身者まで二人分支払い続けないといけない根拠にはならないと思うのですが。依然として不公平極まりない制度ということになるだけですよね。
Q3. 夫婦間で稼ぐ金額が違っていても、世帯年収が同じ世帯同士ならば払う額ももらう額も同じになります。だから3号年金は不公平ではないですよね?
補足:
この理屈何回も見かけたんですが、まず理解するのが面倒なんです。
だいたいほとんどが世帯年収1000万円同士を比較しています。主張の詳細をできるだけ簡潔に書いてみたいと思います。
・夫婦1:2号年収500万円夫 & 2号年収500万円妻
・夫婦2:2号年収1000万円夫 & 3号妻
必ず上の組合せで、さらに3号妻は年収0円ということになっています。(最大130万円まで稼げるのは無視されています)
まず年金保険料の支払いについて。
「年収500万円2名」と「年収1000万円1名」では、厚生年金保険料の合計支払額は同じになる。
(厚生年金は所得税と違って累進制になってないからですね。それはそれで問題ではとは思いますが。)
次に、貰える年金の金額ですが、厚生年金とは『「国民年金(基礎年金)」に「厚生年金」がプラスされる二階建て構造』という考え方を踏まえて、
夫婦1:夫「基礎年金+厚生年金500万円分」+ 妻「基礎年金+厚生年金500万円分」
= 世帯合計「基礎年金二人分+厚生年金1000万円分」
夫婦2:夫「基礎年金+厚生年金1000万円分」+ 妻「基礎年金のみ」
= 世帯合計「基礎年金二人分+厚生年金1000万円分」
ほーーーらなんと、払う金額も同じなら貰える合計も同じになりましたよ☺️
これぞ平等!3号制度が無くなったらむしろ不平等😠というわけですね。
分かりやすく説明できたか全然自信ないですが。
A3. (2号2号夫婦)vs(2号3号夫婦)だけではなくて、(2号独身)と比較してみてもらえませんか?それだけでも、(2号3号夫婦)が3号分だけきっちり得してることはわかりますよね。
例に出している(2号2号夫婦)vs(2号3号夫婦)も、3号が最大年収130万円までは稼げるのを無視してますよね?それを考えあわせればこの組み合わせでも(2号3号)のほうが優遇されています。
そもそも例に出されているパターンも、年収500万円同士の夫婦と、夫だけ1000万稼ぐ夫婦の年金支払額ともらえる額が同じであることがなぜ「平等」ということになるのか私にはわかりませんがね。
Q4. 3号年金制度は立場の弱い主婦の無年金を救うために始まった制度です。決して不平等なものではないのでは。
A4. 3号年金が開始される前にすでに7割の主婦が国民年金に自らの意志で加入していたことを思うと、立場の弱かった主婦の無年金を救うという名目は怪しいのではないでしょうか。当時もそれについては疑問が出ていましたが、納得できる答えがされたようには決して思えません。
3号制度ができる前の年金全体の加入状況は、「男2700万人、女2500万人」だったので女性のほうが著しく加入率が低いという事実もないです。すでに国民年金に加入して国民年金を支えていた主婦700万人を一気に無償化してまでなぜ3号を始めたのか考えると、やはり主婦を優遇したかったからではないでしょうか。
そもそもサラリーマンの夫を持つ主婦だけを救って他の無業者を救わなかったのはなぜなのかわからないですよね。仮に当時困っていた主婦が大勢いたとして、その後40年間も免除制度を続ける必要があったでしょうか。数年の移行期間を設けて、あとは他の無業者と同じ扱いにすべきだったと思います。
Q5. 年金には、主婦以外の人が利用できる支払い免除制度があるじゃないですか。3号だけを優遇とみなすなんておかしいですね。
A5. 確かに3号制度以外にも年金の支払い免除制度はありますが、重い障害がある人が対象となる制度以外は、すべて保険料が未納だった期間分だけ将来受けとる年金額が減額される制度です。年金受給額の減額を避けるためには、後納で支払わないといけません。
それに対して3号制度は健常者でも適用され、1円も払わなくても払ったとみなされて将来の基礎年金が満額支給となります。
問題は免除制度があるかないかではなくて、その内容が平等かどうかですよね。
3号制度はサラリーマンの主婦を不当に優遇する不平等な制度です。
Q6. 主婦にサラリーマンを支えろと言ってこういう制度を導入しておいて、いまさら不平等だからと廃止するなんておかしいです
A6. 3号制度は、導入が議論されていた当初から、働く女性たちによって不公平が糾弾されていました。その声をずっと無視し続けてきたのは主婦だったのではないですか。
少なくとも3号の壁の恩恵など受けずに働いている女性が、主婦にあなたの夫を支えるようお願いすることなどなかったでしょう。
しかも、もし3号制度が廃止されても、今まで払わなかった分を改めて払えとは言われていないのです。(私の個人的な意見としては、過去まで遡って払って2号加入者に返還すべきだと思いますけれど)
他の人と同じように1号加入者として保険料を払うようにしましょうというだけのことなのだから、今まで享受してきた特権がそのまま残ることを思うと相変わらずお得な話ですよね。過去に享受できた分を返還しないでいい以上は、仮に今この瞬間に3号が廃止になってもあなたは特権者のままです。
Q7. 3号制度の廃止は、女性差別の是正が目的などではなく、単なる増税ですよね?3号が廃止されてもどうせ2号の負担額は減らないです。政府の目論見に乗ったらいけませんよ
A7. 確かに今の自民党が女性の地位を真剣に考えているとは思えないので、実際のところ政府にとっては体のいい増税にすぎないかもしれません。年金の財政が常に逼迫していることを思えば、3号を廃止しても2号の負担額は減らないのもその通りでしょう。
でもそれは全く別の問題です。問題の核心は、制度自体が不公平だということです。政府の思惑に乗りたくないから不平等は残すべきなんて馬鹿げています。
主婦に家父長制ボーナスを与える思惑で始まった制度が、時を経て主婦からも税金を取ることを望む思惑で終了する。
女性が自ら立ち上がって不平等な制度を拒否する形で終了させることができたら良いと思っていますが、主婦が立ち上がらないのだから仕方ありません。
政府の思惑に乗りたくないのなら、特権に安住することを望んで変化を拒否する主婦にこそ苦言を呈してください。
Q8. 主婦は夫を支えることで社会に労働力を還元しています。主婦に報酬はあるべきでしょう?
A⒏ 報酬はご主人様からもらってください。
Q⒐ 3号年金は男性の利用も多くなってますよ。もはや家父長制優遇制度とはいえないのでは
A9. 夫の3号加入者は10万人ほどなので人数的に少なくはないですが、3号加入者全体に対する割合は1%台なので、誤差の範囲内と言える程度でしかないですね。
かつてはほぼゼロだったところ最近になって増えてきたという時代の変遷を考える意味では無視すべきではないでしょうが、3号制度が家で夫を支える妻への報酬制度であるという実態は少しも揺らいでいないです。
Q10. 2号加入者が支払った年金保険料は、1号を支えるために流用されています。3号だけが不公平を糾弾されるのはおかしいです。
A10. 厚生年金から国民年金に保険料が補填されているのは確かにおかしいと思いますが、年金制度全体の問題と3号の是非とは分けて考えるべきです。
3号のマイナス面は保険料が厚生年金から全額拠出されているということ以上に、女性の労働現場を歪めたことにあります。3号は不公平な制度であり、日本の女性を分断させました。制度が始まる当初から働く女性たちから糾弾されていたことは忘れるべきではありません。
Q11. 3号家庭は、所得を稼ぐためのリソースを、家事育児介護のような所得にならない部分にあてる選択をしています。家庭内でのリソース配分は国が定めるべきことではないです。
A11. 家庭内でのあり方を国が定めるべきではないと言うなら、まさしくサラリーマン家庭の主婦のみを優遇する制度こそ廃止しなければいけないですよね。
家事も育児も介護も専業主婦だけが担っているわけではないのに、なぜ専業主婦だけが気遣われなければいけないのでしょうか。3号制度は、専業主婦家庭という形態を取りやすくするよう国が定めている制度です。
付け加えれば、既婚男性が主婦ブーストを獲得して、女性や独身男性と比較して飛び抜けて収入をぐんぐん伸ばしていくこともまた、日本が抱える深刻な病理です。
不平等な制度は廃止して、主婦も「壁」を気にせず動けるようにしましょう。