五木田智央は、なぜ人気になったのか?(ユニクロなどとコラボするアーティスト)作品解説
ミステリアスでそわそわする雰囲気、それでいて上品なこの作品。作者の名は、五木田智央(ごきた ともお)。
アメリカで高い評価を受け、バスキアやKAWSを見出した伝説のギャラリスト「メアリー・ブーン」のお墨付きを得た日本人アーティストです。
サブカルチャーやアンダーグラウンドから影響を受けた独特の世界観と、美しいモノクロームのグラデーションが、絶妙なバランスで描かれていますよね。
この記事では、そんな五木田作品の歴史と魅力を紹介していきます!
1. 元イラストレーターが世界的な画家に
五木田智央は、1969年東京生まれ。高校生時代から友人の依頼や、母親がやっていたジャズバーに来る編集者たちから仕事を受けて、イラストやデザインの制作を開始します。
1998年、19歳の時に雑誌「BARFOUT! 5月号」で描いたUA(ウーア)の顔イラストが表紙に採用されたことをきっかけに、ファッション業界や音楽シーンから注目を集めることに。
その後、雑誌や商業デザインの仕事を続けていましたが、90年代半ばに画家へ転向。90年代後半には、大量に描かれたドローイング作品により熱狂的な支持を得ます。
近年はモノクロームのグラデーションや大胆な描線といった自由な表現で、具体的なモチーフを見せつつも抽象的なペインティング作品を多く発表しています。国内では、「タカ・イシイギャラリー」、海外では「Blum & Poe」のギャラリーに所属。
主な展示としては、
2012年:DIC川村記念美術館の「抽象と形態:何処までも顕れないもの」に参加
2014年:DIC川村記念美術館で個展「THE GREAT CIRCUS」
2015年:ロサンゼルスのHonor Fraser Galleryで個展「BÉSAME MUCHO」
2016年:ニューヨークの老舗ギャラリー メアリー・ブーンで個展「Out of Sight」
2018年:東京オペラシティアートギャラリーで個展「五木田智央 PEEKABOO」
2020年:タカ・イシイギャラリーで個展「MOO」
があります。
この経歴だけでも、近年の精力的な活動状況が伺えますね。
2. モノクロで描く理由は、世界がそれに注目したから
五木田のメタリックなグラデーションで描いた人物画は、具象的なモチーフを用いながらも、顔は描かずに抽象的なイメージで構成されたものが多いです。
「なぜ、顔が塗りつぶされているのか?」と、よく記者から聞かれるそうですが、「プロレスのマスクや、アフリカの仮面に惹かれているから」と答えた過去がありつつも、本人いわく、自分でもよく分かっていないそうです。
また、モノクロームで描く理由は、現代美術の世界で注目してもらえるようになったのが、モノクロームの絵画だったから。
五木田さんは大好きなプロレスを題材にするなど、自ら描きたいものを描きつつも、時代が求めるものに答える柔軟さがあると言えるのではないでしょうか。
五木田作品の傑作を多く所有しアート界への影響力も持つ ”ビッグコレクター”と呼ばれるのが、KAWS、前澤友作氏、桶田夫妻、BIGBANGのT.O.P氏などです。名だたる方々にコレクションに所蔵されていますね。
作品集『ランジェリーレスリング』(2000年、リトルモア)
「ランジェリーレスリング」は、五木田が海外での活動が広がるきっかけとなった、2000年に出版されたドローイング集です。
そして、この作品集を見たというニューヨークの知らない作家からグループ展のオファーが。グループ展に参加すると五木田の作品は好評となり、国内外で多数の展覧会を開催することになった代表的な作品集です。
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