杉浦研の運営方針
こんにちは。杉浦研究室の杉浦です。
この記事は、杉浦研究室の運営方針や実際に実践していることを、杉浦自身がまとめたものです。とても長いですが、当研究室に配属を希望する学生さんには目を通していただきたい内容となっています。
慶應義塾大学理工学部情報工学科は8割程度の学生さんが慶應義塾大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻情報工学専修に進学をしますので、研究室の運営方針も人数がマジョリティなその内部進学者に寄せつつ、一方でできる限り、大学院からの進学者や留学生への配慮をすることを考えています。
杉浦研究室
研究室には、学部4年生が4名、修士課程学生が7名、博士後期課程学生が2名在籍しています。ここには当研究室の研究テーマがわかるリンクを置きました。
・メンバー
・研究プロジェクト
・論文リスト
・研究動画リスト
・SlideShare
・Twitter、Facebook、Instagram
研究室に配属されたら
当研究室は、B4で配属されてすぐに対外発表ができるように研究室内でのメニューを組んでおり、配属された学生さんにはそのための努力をしていただきます。目的は大きく2つあります。
これを実現するために、研究室では学部4年生で以下のようなメニューに取り組んでもらいます。研究室ではこの学部4年生の時期が一番忙しいと言えます。1月末の卒論発表までに研究テーマを2周させるということも特徴的な点だと思います。
研究テーマの決定方法
研究活動をはじめてすぐの段階で、自分で発案したテーマに取り組んでいるか、他者のテーマかは重要としていません。研究として成立するテーマを考えるのは、そんなに簡単なことではなく、分野に関する深い知識やさらにタイミングや運なども関係しています。これが決まらないことで、ずるずると研究に着手できなくなってしまい、仕舞には研究自体が嫌いになってしまうことがあります。
もちろん自身のアイディアに取り組むことができないというわけではなく、学生さん発案のアイディアが研究テーマとして成立するように教員もまずは一緒に考えます。2018年度の学部4年生の仮卒論では、4名中1名、2019年度の仮卒論の4名中2名が自分自身で発案したテーマに取り組んでいます。
一方で、教員側から見てテーマとして成立をしないことが明らかな場合、例えば過去に全く同じようなアイディアが発表されている場合などは、別のテーマに取り組むことを勧めています。当研究室では、アイディアカタログという、日々教員や配属学生によって更新されているアイディアのリストがあります。また研究室として取り組まないといけないテーマ(共同研究や競争的資金関連)も多数存在していますので、これらに取り組んでもらうことをお勧めしています。
私自身も最初のころ取り組んだテーマの2つは、当時の指導教員や所属していた国プロの総括から「これやってみない?」といただいたもので、まともに研究テーマを出せるようになったのは修士課程の後半から博士課程に入ったころでした。
研究のサイクルを何周か経験ができたメンバーには、今度は自分自身で主体的に、既存の研究の課題や、新規の研究アイディアを考えてもらい、多少のリスクがあってもそれに取り組むことを推奨しています。研究サイクルを何度か回していく中で、深い知識が身につき、新たな課題が発見できるようになり、修士課程修了までには自然とテーマを自分自身で発案できたり、自分自身で考えながら研究を推進できる能力が身についているようになると考えています。
研究室での滞在
よく「コアタイムはありますか?」という質問をもらいますが、研究室では今のところそのような時間を設けているわけではありません。一方で、教員としては「平日の日中に研究室で研究をする」ということは基本だと考えており、配属学生にはそれを伝え、それが前提の運営や教育をしています。
最近、色々とコミュニケーションツールが発展して、遠隔にいても作業ができるようになってはきていますが、研究室という場におけるフラッとはじまる教員や先輩、同級生との会話の直接的・間接的にも研究の進捗や自身の成長への寄与は無視できないほどに大きいと感じています。また当研究室は、ハードウェアの開発、研究室に設置されたセンサ機材による研究、広い空間を利用する研究も多く、そのようなテーマを研究室外に持ち出して取り組むことは困難な場合があります。
そのため、授業日、ミーティング日以外の平日にも積極的に研究室にきて活動できる人を当研究室では歓迎したいと思います。
配属を希望したいけれども、例えばアルバイトをする必要があり、日中研究室にくることができないという状況でしたら、相談をいただければ必要な分をカバーできる研究室内でのアルバイトを紹介したいと思います。
とはいえ、現状のメンバーの全員が毎日かかさず研究室にくることができているかというとそんなこともなく、教員もそれに対して事細かく指摘をしているわけではありません。また自分の将来に向けて、研究以外の活動にも力を入れたい学生もいますから、配属希望のときにそういった事情を教えていただければ、教員としても応援し、研究活動との両立ができるように配慮をしています。
一方で特段にそういった事情もなく研究室にくる頻度が低いメンバーには指導をしています。教員の希望としては上記の通りで、またそれが自然となるように、研究環境やマネジメントを試行錯誤している最中です。
ミーティング
研究室のミーティングは主に3つあります。
運営ミーティングと進捗共有ミーティングは隔週で合わせて実施、2019年9月から留学生が加入しましたので英語での開催、1on1は月に1~2度の実施を目標としています。
教員と学生の居室が同じ
当研究室では、教員と学生の居室が一体化しています。このような研究室は慶大理工では少ないようです。一体化している理由は2つあります。
学生同士での支え合い
当研究室は学生同士で支え合って研究を進めていただくことになります。こうするのは2つ理由があります。
例えば学内外発表に向けた練習では「教員と練習をする前に必ず学生同士で1回以上は練習をする」というルールを設けています。卒業論文や修士論文についても、論文に対して数名学生の査読者がアサインされ、フィードバックを行うような仕組みで運用しています。また日々開発した成果を隠すことなく、積極的にメンバーと共有をするということも大切にしています。このように教員とだけでなく学生同士での交流が必須の研究室です。
オンラインでのコミュニケーション
メインのツールはSlackを使っています。このSlackでは四六時中メッセージが飛び交います。Slackはメッセージを受け取る側がその通知を各自で設定できますので、「送る側は送る時間を配慮しなくて良いが、祝日や深夜に返信を期待しない」という方針で運用をしています。
また教員のGoogleカレンダーは配属学生にも公開されており、教員が今どこで何をしているかがわかるようになっていて、学生との時間調整に対するコストを下げています。また最近では、配属学生のカレンダーも教員に共有してもらい、授業がある時間帯や旅行などで長期で研究室を離れるときに、そのカレンダーを通して教員と共有できるようになっています(プライベートな情報を共有のカレンダーには含まないでくださいと伝えています)。
学外との交流
学外との交流がたくさんある研究室です。
ノートPCの配布
当研究室では、学生個人一人一人にノートPCの貸し出しをしています。一方で特段理由がない限り、デスクトップPCの配布はしません。その理由は次の3つです。
長期休暇
長期休暇期間は、通常よりもミーティングの頻度を下げて運用をしています。授業期間の平日にコツコツと研究をしているメンバーが、長期休暇中にまとまって休んだとしても、卒業自体に影響を与えるということはこれまでほとんど発生していません。この間は自分の成長につながる活動を主体的に取り組んでもらうことを期待しています。学会投稿や発表があるメンバーもいますので、それに向けてはしっかりと準備をしてもらいます。また研究の進行が遅れているメンバーはこの期間も努力をしてもらいます。
留学やインターン
研究が順調に進んでいれば問題ありません。特に自分自身のスキルアップや、実績としてプラスに働く課外の活動(アルバイトを含む)に対しては、積極的に送り出しをしています。自分でそのような場所を見つけてくるのも良いですし、見つからない場合は、教員が推薦できるアルバイトやインターン先のリストをまとめていますので、そこから推薦をしています。
広報活動
研究成果を「自分の名前」とともに世の中に発信することはとても重要な学術活動です。論文を出版するというのは代表的な発信の形式ですが、大学研究は税金によって支えられており、納税者の方々にご理解いただくためにも、論文以外にも様々なカタチで成果を社会に発信することが求められています。研究室でも可能な範囲で成果を届けられるように、ウェブのコンテンツを充実させたり、SNS等を使った発信、対外的なデモンストレーションを積極的に行っています。
就職先
当研究室は立ち上がって1年半の研究室ですのでメンバーがどういった方面で活躍していくのか、まとまって紹介できるほどのデータはありません(研究室の数少ない進路の情報については配属説明会で紹介をします)。
ラボとしての就職対策は特に現在行っていませんが、日々の雑談や1on1のミーティングの中で進路に関する会話をするようにしています。OB/OG訪問や紹介して欲しい企業がある場合は、共同研究先や私の先輩・後輩の関係を辿ってできる限り対応するようにしたいと思っています。
また、就職に対する個人的な考えですが、実力が十分あり、かつ卒業後も日々成長に向けて努力できる能力が身についていれば、新卒での就職活動が思い通りにいかなくても、将来的には皆さんが自然と思い通りの方向に進んで行くと信じています。
最後に
最後まで読んでくださりありがとうございます。
この文章の作成&公開に至った理由は、研究室に配属前の当研究室に対する印象と、後の印象の「差」をできる限り小さくしたいためです。この差は、ほとんどの場合ネガティブに働いてしまうことが多く、大きければ大きいほど、学生、教員双方が不幸になってしまいます。
また、当研究室は2018年4月より独立した研究室として立ち上がりましたが、1年半経過してようやくまとまった運営方針を文章として紹介できるようになってきたというのも今回公開に至った理由です。研究室の運営方針は日々変化するものですので、その都度こちらの記事を修正したり、追記していきますし、また読んでいただく方々も「2019年10月段階での」運営方針としてご理解いただけると幸いです。
研究室の運営方針は、個人個人に合わせて簡単に変更できるものではありません。配属を希望している学生さんが、このnoteに目を通した後でも、まだ杉浦研に魅力を感じていただけていたり、やっていけると思えているようでしたら、ぜひメンバーとして加わってほしいと考えています。
運営方針を教員自らの言葉として公開する研究室は増えてきました。お茶の水女子大学 伊藤(貴之)研、明治大学 中村研、東京大学 稲見・檜山研は研究室運営に関する丁寧な記事を公開しており、当研究室の運営においても参考にしております。このように公開されている記事と本記事は、内容としていくつか重なるところがありますが、重なっている部分も含めて研究室の運営方針として文章化をし、公開しておくことが大事であると思っています。
本記事は、教員の目線で書いています。実態に沿って書いているつもりですが、興味がある方は、これに加えて、学生さんによる記事「杉浦研での研究生活」の方も目を通していただくと、より研究室の様子がわかると思います。本記事以外でも、例えばこのような記事でも一部研究室運営について紹介をしていますので、興味のある方は合わせて一読いただけると助かります。
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