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再エネ地域共生促進税の導入

渡部貴志(弁護士)


⑴ 前提


 日本中の各地で森林を伐採して再生可能エネルギー発電施設を設置して斜面崩壊などが発生する事例が頻発しています。
 山林の斜面を削って設置された大規模な太陽光発電は、森林の破壊や動植物の生息環境に影響を与えるだけでなく、土砂崩れや洪水の拡大という災害の危険をもたらしています。また、高さが数百メートルに及ぶ大規模な風力発電は、その巨大な羽を運ぶために大規模で直線的な林道を必要とし大規模な自然破壊を伴うだけでなく、景観の悪化という問題を生じさせています。 
 そして、それらの事業の多くは地元資本ではなく、外部資本事業者によって進められており、その点も地域住民との軋轢に繋がっています。

 このように、外部資本事業者による大規模な再生可能エネルギー施設と地域住民や自然環境の保護が対立関係にあるような状態が生じています。その対立をめぐって、地域社会が分断するケースも存在し、地域社会に恩恵をもたらすべき再生可能エネルギー施設が害悪となってしまう事態も生じており、これは気候危機を回避するために再生可能エネルギーを拡大するという視点からは、決して望ましい状況ではありません。

⑵ 再エネ地域共生促進税条例の制定


 宮城県でも、外部資本事業者による大規模再エネ開発について、地域住民との対立が目立つようになっています。例えば、宮城県奥羽山脈の中部、宮城県加美町では「加美富士」と呼ばれる薬萊山を望む山間部に、風力発電設備を設置する計画が立てられ、町が地域住民から町有地の使用差し止めなどを求めて提訴されるまでに至りました。

 このような対立が先鋭化する状況下において、宮城県では、再生可能エネルギー地域共生促進税が条例により導入されました。これは、0.5ヘクタールを超える森林を開発し、再生可能エネルギー(太陽光、風力、バイオマス)発電設備を設置した場合、その発電出力に応じて、設備の所有者に課税するものです。
 この条例は、再エネの最大限導入と、環境保全の両立を目指す新たな取組みとして、再生可能エネルギー発電事業の地域との共生の促進に向けた税を導入することを目的としています。

 特徴としては、温対法の促進地域の設定を待つのではなく、事業者の提案を受けて、自治体と協議会による地域の合意形成のプロセスを重視し、促進地域に「準ずる地域」と認定できる合意形成を追求することで地域共生型再エネを促進するという点にあります。
 そもそも、税を課す条例でありながら、その主目的は税収を得ることではなく、事業者に対して対策をとるよう誘導することを目的としており、その過程において、地域社会との合意形成を促す枠組みを創出したことは非常に評価することができると思います。

 もっとも、新しい取り組みであり、同条例に基づき設置される協議会の構成や自治体がどれほど関わるかなど、試行的にならざるを得ない点もあるかと思いますが、気候危機対策の観点から評価されるべき野心的な取組みであると思います。
 このような取り組みが全国的に広がることが望ましいのではないでしょうか。

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