【小説】D€STRU 〜EP3・EP4〜
EP3
『だから違うって。そこはさっきこうだって言ったでしょ。本当にセンス無いわね3番!』
大好きな憧れの人から個人レッスンを受けるスペイベよりも大好きな憧れの人から罵声を浴びるスペイベになりそうだ。天羽蓮とのレッスンは3時間が経過した。
『3番、何でアイドルになったの?』
唐突な質問だった。汗を拭う椎名シイナくるみはドリンクを飲む手を止めて答えた。
『ダンスが大好きで大好きで。それに天羽蓮みたいに誰かを幸せにする存在になりたいって思ったからです。私が生きる幸せを与えて貰ったように』
椎名くるみは恥ずかしそうに言った。
『志しは高いみたいだけど、その(ダンス)レベルはこの世界に五万といるわよ』
無表情で自分の話はスルーした。
『わかってます。自分でも上手だとは思ってません。でも踊るのが大好きだし楽しいしもっと上手になりたいし』
『ふ〜ん。じゃあここで2番になる簡単な方法教えてあげようか』
天羽蓮は不敵な笑みで椎名くるみに迫ってきた。
『1番じゃなくて2番ですか?』椎名くるみは不思議そうな顔をした。
『そう2番よ。当然、私が1番。3番が2番』
『2番やら3番やらややこしいですよ。ちゃんと名前で呼んで下さい。くるみって名前で』
『めんどくさ~名前覚えるの嫌いなんだよね』
『それに私が2番ですか。絶対無理ですよ』
『簡単よ。私が1番なんだから私を完全コピーすれば良いのよ』
『完全コピー?』
『そうよ。1ヵ月で仕上げるから来週のショーケース欠席ね』
⭐️1ヶ月でチームNo.2になる
⭐️来週の公演欠席
『無理 ✖︎ 3』
このチームには天羽蓮の他にダンスが上手い人は沢山いる。ダンスだけじゃない容姿も完璧歌も上手いそんな人達が集まるのがアイドルグループ、
【 D€STRU 】
それに人生一回きりのデビュー公演を欠席なんて無理✖︎3。
『そんなの無理ですぅ~』
EP4
初日のレッスンは明け方まで続いた。
あれから天羽蓮は、アドバイス以外は口を開かず緊張感は継続されていた。
『よし今日はこれであがろう。これ以上やってもキャパオーバーしてるしね。マネージャーには電話しといたから、ここ(施設)で今日から泊まり込みね』
『はぃ。。。』
椎名くるみは驚く事無く、天羽蓮の無茶振りにもすっかり慣れてしまっていた。
更衣室でシャワーを終え、スタッフから預かったキーで部屋に入る。大きな溜息をついた瞬間、誰かが部屋にいる事に気付いた。
『どれだけ嫌な事あったらそれだけ大きな溜息出るのよ?』
そこには天羽蓮がパジャマ姿で髪を乾かしていた。
『わぁ〜?!蓮さんのパジャマ姿♡生で見られるなんて。スペイベ(スペシャルイベント)発令!!!』
椎名くるみは天羽蓮のガチオタでもあった。
『同じ部屋なんて聞いてません♡』
椎名くるみは飼い主からご褒美を与えられた仔犬の様に喜んだ。
『あんたなんかめちゃくちゃ嬉しそうね?』
『そりゃ嬉しいですよ。天羽蓮とお泊まり出来るなんて世界中の蓮オタが聞いたら発狂しますよ』
『あんたオタクなの?気持ち悪っ!!』
『蓮さん!世界中の蓮オタを敵に回す気ですか?』
『あんたがキモいだけ。無駄口叩いてないで早く髪の毛乾かして寝な。仮眠したら練習再開するよ』
『はーい♡』
『キモッ。このオタク野郎!』
『はーい♡』
椎名くるみはこの合宿期間中、天羽蓮からの呼び名が「3番」から「オタク」に変わった事は言うまでもない。