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AIのそれっぽさ(前編)—人はなぜそれっぽさに騙されるのか #AI時代の素人哲学 vol.4

AIが私たちの日常に深く入り込む中で、私たちは哲学的な問いに直面しています。この「AI時代の素人哲学」シリーズでは、素人の視点からAIと人間の関係を掘り下げ、私たちがこれから直面するであろう新たな問いについて考えていきます。AIがもたらす影響をどのように捉え、理解すべきか。このシリーズを通じて、AI時代における人間らしさや倫理、創造性を再考していきます。


1. はじめに

日常生活やビジネスの場面で、私たちは相手の「それっぽさ」に影響され、無意識に信頼感を抱いてしまうことがよくあります。特に、見た目や振る舞いがプロフェッショナルに見えると、その人や物事を信頼しやすくなります。このような「それっぽさ」は、AIが人間らしさを模倣する際にも大きな役割を果たしており、私たちがAIを信頼する要因の一つとなっています。この記事では、まず「それっぽさ」そのものの本質を探り、次にAIの「それっぽさ」にどう対応すべきかを考えていきます。

2. それっぽさが強く機能するシーン

ビジネスのプレゼンテーション

見た目や話し方が洗練されていれば、内容が少し薄くても、信頼感を抱かせる効果があります。整ったスライドデザインやプロフェッショナルな態度によって「それっぽさ」が演出され、聴衆はその内容に安心感を抱くのです。

ブランド構築

商品パッケージや広告のデザインが高品質に見えると、製品自体の価値も高いと認識されやすくなります。これにより、消費者は製品の本質を判断する前に、その見た目から信頼感を持ち、購入を決めることがよくあります。

AIアシスタントやチャットボット

AIが人間の言葉を自然に理解し、会話できるように設計されていると、私たちはそのAIに信頼を寄せます。たとえば、顧客サービスにおけるAIチャットボットが人間のように振る舞うと、それだけでユーザーの安心感や信頼感が高まります。

3. それっぽさの裏に隠れた危険性

表面的な信頼に頼りすぎるリスク

表面的な「それっぽさ」だけに基づいて信頼感を持つと、内容が薄かったり、実質的な価値がなかったりする場合に、信頼を失うリスクがあります。これはビジネスでも顕著で、外見やスライドの見栄えだけで決定されるプロジェクトが、実際には期待を裏切るケースもあります。

過度な期待が引き起こす失望

AIが高度な技術で見た目や対話を「それっぽく」作り出す場合、ユーザーはそのAIがすべての問題を完璧に解決できると思い込むことがあります。しかし、AIがミスを犯したり、期待に応えられない場合、その信頼が一気に崩れ、ユーザーに深い失望を与える可能性があります。

4. なぜそれっぽさを見抜けないのか?

認知バイアスとプラトンの「洞窟の比喩」

私たちが「それっぽさ」に騙される理由の一つは、認知バイアスにあります。プラトンの「洞窟の比喩」によれば、人間は洞窟の壁に映る影を現実と誤認してしまいます。これは、私たちが見た目や表面的な情報を現実そのものとして受け取りやすいことを示しています。AIが見せる表面的な「それっぽさ」は、私たちの認識を歪め、本質的な部分を見逃させてしまうのです。

社会的条件付けとウィトゲンシュタインの「言語ゲーム理論」

ウィトゲンシュタインの「言語ゲーム理論」では、社会や文化的な背景が私たちの言葉や行動を定義しているとされています。つまり、特定の場面や状況で何が「それっぽい」とされるかは、社会的に規定されたルールに従っています。AIがこのルールに従って振る舞うと、私たちはそのAIが「プロフェッショナルで信頼できる」と感じやすくなるのです。言語ゲームとしての「それっぽさ」は、特定の社会的文脈の中で強化され、私たちがそれを見抜くことが難しくなります。


ここまで、「それっぽさ」がどのように私たちに影響を与え、AIによってもその力が活用されていることを探ってきました。ビジネスや日常で、表面的な要素が信頼感を作り出す仕組みや、その危険性についても考察しました。しかし、ここで終わりではありません。AIが生み出す「それっぽさ」は、ただ私たちを惑わすだけではなく、悪用されるリスクも存在します。

次回は、AIがどのように「それっぽさ」を利用して私たちを誤解させ、時に騙す場面が増えているかを具体的に見ていきます。そして、その「AIの嘘」に騙されないためには、私たちがどのようにして批判的思考を持ち、AIと向き合うべきかを考察していきます。


🤖💡 「AI時代の素人哲学」シリーズでは、AIが私たちの生活や思考に与える影響について、哲学的な視点から考察しています。
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