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猫のお告げは樹の下で

半径3メートル以内にヒントがある。

映画監督・宮崎駿が自身の企画のタネを問われた際に答えた言葉だ。灯台下暗し。身近な場所にこそヒントがある。そこに気づけば、私たちの日常はまた違った彩りを見せるのかもしれない。

小説『猫のお告げは樹の下で』は、自分自身の中に隠れている未来へのキーワードを1匹の猫が指し示す、ほっこり心温まる作品だ。町で悩み事を抱えたり行き場を見失った人たちが、毎回神社で1匹の猫と出会う。神主に「ミクジ」と呼ばれているその猫は、境内に植えられているタラヨウの葉を1枚落としていく。落とされた人にしか見えないメッセージを添えて。そのメッセージがひとりひとりの道を開くカギとなっているのだった。

人から言われて気づくこと。自分でわかっているのに上手くできないこと。できていないと気づいているのに人から言われると頑なになること。上手くやれないことには相応の原因がある。なぜだろう。ごくたまに謙虚な気持ちになって考えてみると、結局は自分に原因があるなと気づくことが多い。次からは気をつけよう。かなり強く意識していないと、結局そのまま上手くいかずに終わってしまう。

自分の気持ちのあり方と物事のとらえ方をどう考えるか。応えは身近なところにあるのかも。ミクジはしぐさだけでそう語りかけてくる。でも、一度会ったりそれっきり、それ以降同じ人の前に姿を現すことは少ない。寒い日にぽっと温かくなるカイロのように、心に灯をともしていく。最近忙しくて本を読めていない方にこそ、ゆっくりと心落ち着く場所で、1編だけでもお試しいただきたい1冊だ。

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