ル・クルーゼの鍋
キッチンにひと際目立つ、水色の鍋。
重くて仕舞うのがめんどくさくて、そのままコンロに置きっぱなしにしているから、余計に存在感を発揮している。
このル・クルーゼの鍋は、万能でとても気に入っている。カレー、肉じゃが、クリーム煮。ただ、うどんやパスタを茹でてもいい。ちょっとやそっとじゃ壊れないし、焦げ付かない。
この鍋は、少し前に実家から持って帰ってきたものだ。何を隠そう、これは私が初任給で買って親に贈った鍋だ。なんとなく給料をはじめて貰った時、そういうしきたりに倣って、イトーヨーカドーで選んで買ったものだ。
その後、たぶん１，２回ほど使われた後に、大事に仕舞われて使われることなくキッチンの奥底に眠り続けて約10年。もう初任給の恩も時効だろうと思い、回収したのである。回収しても、恩は忘れていないから大丈夫。
おそらくその良さもよく分からずに、当時はとても安直に選んだなんか良さそうな道具「ル・クルーゼの鍋」は、使ってみてやっぱりいいものだった。道具による微妙な味の違いが分かるのか、といえば、たぶん分からない。
けれど、道具によって料理をするときの気持ちやちょっとした所作が変わるのは確かだ。鋳物だから水はちょっと少なめでいいだろうとか、火加減も弱めにしようとか、一つひとつの過程で、道具の恩恵を受けて料理のおいしさにつながっている。いい道具は、正しい所作を教えてくれる。
じゃがいもがいっぱい家に転がっている。今日はこれを作ってみようかな。
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