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子育てが終わってもまだケアをさせるのか

子育てが一段落した40代の女性を集めて、育児・家事支援のサービスを行政主体でできないか、というツイートが炎上していた。

https://togetter.com/li/2035107?page=5

40代とかまだ子育て真っ最中だとか、なぜ女性だけなんだよとか、ツッコミどころは山ほどあって、炎上する要素も盛りだくさんなので、承認欲求のためのツイートだと思う。

と言いつつ、では現実にいま保育をはじめとしたケアを担っているのは誰か、地域の仕事をしているのは誰か、という点においては、いろいろと社会課題が多い。
大前提として、今そういう仕事に就いている人は、本当にすごい。誰でもできることじゃないし、すごいスキルと経験をもって社会に貢献している、尊い仕事だ。

と前置きをしたうえで、とりあえず統計を見る。
保育士の男女比をみると、女性が約95%。平均年齢は37歳だ。ホームヘルパーは、約8割が女性、平均年齢は51歳だ。

https://www.mhlw.go.jp/content/000656131.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000661531.pdf

ケアが家族内だけにとどまらず、外部化、アウトソースされていても、その担い手のほとんどが女性である、という現実がある。それでいて、平均年収ももちろん低い。
実質的にすでにツイートのような状況になってしまっていて、保育士不足、ヘルパー不足、介護や保育における過重労働、子育て・介護のケア負担の女性への偏重など多くの社会問題となっている、とも言える。そもそもの現状認識からツイート主の考えは間違っている。

上野千鶴子氏は、1990年に書いたその著書で『なぜ人間の生命を産み育て、その死を看取るという労働が、その他のすべての労働の下位に置かれるのか』と述べているが、そのままその問いは現在も解決されていない。

私も保育業界で採用の業務をすることになって、2年ほど経つ。残念ながら求人に給与が良いとは書けないし、「やりがい」「風通しのよさ」「透明性」「現場重視」「研修制度」「子ども一人ひとりへの寄り添い」といった言葉でしか語ることができないでいる。もう少し「働きやすさ」みたいなことくらい言えたらいいのに、と思っているし、そうする動きもしている。給与の改善ももちろん課題として認識しているし、同時に準市場的な採用競争のなかで、その難しさもわかる。

保育士からフリーのベビーシッターへ転職する人も増えている。けれど、ベビーシッターの多くは個人事業主で、時間給は単価2,000円代に設定できるものの、移動時間や保育以外の依頼主とのやり取りに時給は発生しない。そのうえ、定期的に仕事があるわけではなく、依頼も短時間保育の細切れだと稼ぎづらい。
ほかのアルバイトと掛け持ちでやる、など工夫しながらやりくりしている人が多い。

ケアはより社会的な立場が弱いほうに流れやすい。いまの給与のまま、人手不足が解消されない、女性の社会的地位が向上し誰もケアの仕事をしない、となれば、次に待っているのは外国人労働者の受け入れによる保育士不足の解消だろう。

この手の話題は、結局のところ、保育士が定時で無理なく働けて、十分な給与とキャリアが得られ、すべての子育て世代が安心して保育を任せることができるように待遇を改善できるくらい子育て関連の予算をつける、以外に解決策はない。

議論すべきは、そのためのお金を誰が払うか、だけど、その議論は分断を生みやすい。既婚/未婚、老年層/老年層、男性/女性、わかりやすい二元論的な記号がいっぱいあるから。

でも、少子化は少しずつ進行していく病気のように、社会に影響を与えていく。その責任は誰も免れないのではないか。「ケア」は誰もが必要なものだから、誰もがその負担を少しずつ負い、ケアする人を支えていけないだろうか。

私は、誰か特定の集団や個人だけにその負担を偏らせるのでなく、社会のみんなでケアを分かち合いたい。その支え方は、それぞれの立場で多様であっていい。誰も避けられない問題として、ひとの一生をどうケアするのか、と考えたい。


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