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まとまらない言葉

言葉が好きだから、言葉をおろそかにするのは嫌だ。うまく言えない言葉、言葉にならないことがいっぱいある。でも、それを簡単な言葉でまとめたくない。

言葉を尽くす、積み重ねる。言葉は溜まっていくものだ。雪みたいに儚くて消えそうなのに、積もり積もった言葉は、重い。

落ち込んでいる誰か、傷ついている誰か、苦しんでいる誰かを励ます言葉は少ない。がんばれ、も大丈夫、も気休めでしかなく、かえって苦しめるかもしれない。一言では言えないし、長い時間をかけて言葉を探す。

声の大きな政治家は、よく口を滑らせるわりに、肝心なことは平気で壊れたロボットのように定型文をくり返す。そうやって言葉を、踏みにじる。

べつに、自分の言葉で語ってほしいとは言わない。けれど、その言葉になんの意味も見いだせない空虚な空々しい言葉が、本当に聞き取りたい言葉を押し込める。自分の言葉なんて無くても、自分の口に馴染む言葉、安心してすらすら話せる言葉があるのに、わざと分かりにくい難しい言葉を使ったって、なにも伝わらない。

私の言葉も、いつもまとまらない。自分の気持ちをうまく伝える言葉が見つからなくて、黙り込んでしまう。だから、そうした沈黙も許してくれるゆっくりとした時間を共有したい。一緒に言葉を探して、まとまらなさを共有できたら、私の弱くてどうしようもない言葉も掬い取ってくれる気がする。なかなか出てこない言葉と向き合う静かな時間がもっと必要で、いろんな人の長い長い話をゆっくり聞いてみたい。


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