平和な日常を過ごせるのが当たり前ではなくなる恐怖
私は、文化大革命については映画や小説でしか知らない。
香港に住んでいた頃に一度だけ、福建省出身の方が「自分達のところは文革が終わるのが遅かったから、穴掘りとかの労働を経験してるんだ。だから、今の生活は何も恐れることはない」と話されるのを聞いたことがある。
いつもは紳士的な方だけど、そのときは語気を強めて少し自虐的に話していたことにゾワっとしてしまったのを今でもはっきり覚えている。
その場にいた香港人の人達が一様に、「あまり触れてはいけない話題」のような雰囲気を醸し出していたことも覚えている。
どうして急に文化大革命の話をしたのかと言うと、あるニュース映像を見たから。
この公開謝罪の様子を見た時に「文革だ」と思わず声に出してしまった。
ルールを守らなかった為の罰とのことで、文化大革命とは全く意味合いが違うし、実際の文化大革命を目にしたわけでもない。
だけど、私の知っている知識の全てが「文化大革命時のつるしあげ」と完全一致して恐怖を感じた。
まだ誰も正解が分からないこのコロナ禍で、世界中が疲弊している。
日本だって例外じゃない。
常軌を逸した行動だと批判できるのは、安全圏から高みの見物をしているからだ。
渦中にいたら、自分が生き残るために「おかしい」と思っていても異常行動をとるだろうし、他人を犠牲にしてしまうかもしれない。
私は親も戦争を経験していないから、戦争については本やテレビや映画などの語り継がれた記憶しか有していない。
だけど、コロナ禍で「戦時中はこんな感じだったのか?」と恐怖を感じることが出てきている。
自分の意見を自由に言えるし、政治批判をしても捕まることはない国だけど、世の中が不安だらけになって同調圧力が強くなる時に感じる恐怖。
海外で生活したことがある身としては、日本が平和ボケしていて危うく見えることは多々ある。
だけど、こんなに安価に安全が手に入る国は他にはない。
こどもだけで公園まで行って遊ぶことができる
自転車の鍵をつけっぱなしでも盗まれる率が少ない
水道水が飲める
道路が歩きやすい
自動販売機が乱立している
など、いろいろなことが挙げられる。
もちろん例外はあるけれど、国全体として他の国と比べると治安の良さは断トツだ。
アフガニスタンや香港など、自由を知った後に自由を取り上げられた人々がどれだけ辛いか、想像に難くない。
日本はまだ平和。
だけど、平和を維持するのは簡単なことではない。
外的要因に警戒する必要もあるし、何より日本は災害大国。
一瞬にして平和でなくなる要素が満載な状況なのだから、自分の周りの平和をできるだけ長く保てるように、できる限り備えておきたい。