ACIDMAN 『INNOCENCE』:(純真無垢)という作品に込めた想いとは?
ACIDMANの12枚目となるアルバム、INNOCENCEに込めた想いとは?
その真っ白なパッケージに込められているものは一体なのか?
その答えは、予想を遥かに超えてバラエティに富み、ドラマチックに感情を揺さぶる名作でした。
コロナ禍の2021年にリリースされた12作目のフル・アルバム
生命・宇宙をテーマとした日本のロックバンド、ACIDMANの12枚目となるアルバム、INNOCENCE。
2017年の前作『Λ』から4年振りにリリースされた”純真無垢”という意味のこのアルバムだが、その間2020年に新型コロナウイルスのパンデミックが世界を襲い、全ての音楽活動が一時立ち止まることになった。
当然その影響はACIDMANも例外なく受け、ライブ活動は制限されながらオンラインライブを通じて活動を繋ぎとめてきた。
ちなみに、このアルバムの完成前にも配信限定で発売前配信ライブを行っている。
(アルバム限定版のDVDに収録。)
元々死生観や世界の終わりに関するテーマの歌を紡いできた彼らだけに、コロナを経て生み出される作品は一体どんなアルバムになるのだろう?
当然これまで以上に悲しみと、そこからの希望に満ち溢れた濃密な世界観を表現するといった、いうなれば”重たい”作品になるだろうと想像していた。
しかし、初めて聴いた感想は意外にも聴きやすい、予想外にライトな印象に驚いた。
前作『Λ』を経て、よりカラフルな作品が誕生した
前作『Λ』がかつてないほど壮大でスケールの大きな宇宙観と死生観を表現した作品だっただけにその延長線上の作品を想像していたが、意外にも軽快なリズムと切れのいいカッティング・ギターの目立つ、肌触りのいい作品といった印象だ。
『Λ』では彼ら(というより作曲者の大木伸夫)のSF・宇宙テーマとした世界観をとことん突き詰めた音楽性だっただけに、よりポップに、カラフルな作風にシフトしてきているように思える。
それでも、歌詞をしっかり読み込むとこれまでテーマにしてきた輪廻転生や命の尊さ・一瞬の人生の儚さについて歌い、宇宙から見た人類とは何なのか?といったバンドのテーマは一貫している。
そんな重たいテーマだからこそ、あえて現代風の聞きやすいサウンドで調理することでより多くの人に届けられる楽曲になっていると思う。
コロナを経験し、人類が学んだこと
そして、意外とコロナのことはアルバムに影響がないようにも感じられるが、決してそうではないだろう。この作品のタイトルである「INNOCENCE」純真無垢の意味について考えてみると、きっと彼らが伝えたかったのは
"コロナを経て価値観がリセットされた世界" なのではないかと思う。
元々透明で生まれてきた私たち。
コロナによって一度価値観がリセットされた世界で、本当になりたかった自分になること・本当の自分が心からやりたかったことをやることこそが大切なのだと。
インタビューで、「もともと常にコロナ禍のような世界観のバンドなので、このご時世が直接精神的に影響を与えたということはない」といった趣旨を語っている大木伸夫氏だが、個人的にはどうしてもこの時代とこの作品のメッセージがリンクしているように感じてしまう。
汚れのない真っ白な自分に生まれ変わって、純真無垢な自分と向き合うことの大切さに気づかせてくれる。そんな作品なのではないかと、勝手に思っている。