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色々な十字架/90年代を彷彿とさせる沈美なるV系バンド
突然ながら、とんでもないバンドに出会ってしまった。
2023年7月12日にCDデビューした異色のV系バンド、色々な十字架。
90年代-00年代のV系を彷彿とさせししバンド。
長くなりそうですが、思い切って全曲レビューをしてみたいと思います。
色々な十字架とは?
有名な水族館の水を全て飲んだことがあるという、謎のキャッチコピーを持つシンガーソングライター、ティンカーベル初野(tink)により、もともとはエイプリルフールのネタとして生み出された90年代リバイバルバンド。
正統派ヴィジュアル系バンド風の楽曲に、荒唐無稽で理解不能な歌詞を載せたシュールな世界観が大きな反響となり、本格的にバンドとして始動したそう。
真面目に語るのもバカバカしい歌詞と、高い演奏力・ヴィジュアル系の素養のギャップがクセになる今大注目のニューカマーです。
(歌詞を聞き取らずに聴いている分には)幸せな気分で一昔前の沈美なるヴィジュアル・ロックの世界に浸れます。
全曲レビュー
01. 6年生を送る会
アニメの主題歌になりそうなメロディアスで疾走感のあるイントロから、ノスタルジーを感じさせる切ないメロディー。
ただし歌っている内容は「6年生を送る会」。
それでも、アルバムの中で一番歌詞が日本語として成立しているので、
唯一意味が通じる曲でもあります。
間奏のベースのスラップソロがスリリングでカッコいい。
02. 蜜
これは完全に初期の頃のガゼットみが濃厚。
力強いベースライン、ツインギターのコンビネーションが、まるで00年代へとタイムスリップしたのかと錯覚させます。
溢れる蜜を僕は啜って 溢れる蜜を舌で啜って
と、エロティックな歌なのかと思ったら、
木々から出ている樹液を舐めたいから、虫をどかして木を舐める
というただの変態だったというオチ。
さらには、
ジジイの軽トラ イーブイ描いて
ババァの原付 勝手に売って
つきたてお餅を醤油で食って
お外になってるびわとか食って
と意味不明の歌詞を切ないメロディにのせるシュールな世界観が段々とクセになってきます。
サビの入りだけは真面目そうなのに、すぐに勘違いだったと気付かされるシステム。
君のためならば おててのままで
木をパンチしてカブトとか落とす
きっとサビの入りで、「君のためならば・・・」と切なく入っておけば何でも許されると思っているに違いない。
それは大正解。ヴィジュアル系ってそういうものだから。
03. 大きな大きなハンバーグ
ポップで爽快感がある曲。
裏腹に歌詞はサイコパス。
知らねえババアを柔道の大会 勝手にエントリー
ガンバ
お水を飲みますよ(プールのお水)
ゴクゴク飲みますよ(田んぼのお水)
池のお水 下流のお水 いろんなお水
なんやかんやで、お水を飲みたがる謎の世界観。
04. TAMAKIN
切ない恋愛について歌う、90年代特有なナヨナヨした空気感全開。
唯一真面目な歌詞なので安心して聴いていられる。
と思ったらサビの最後に何の脈絡もなく登場する、
「タマ○ン」という言葉の破壊力。。。
全てブチ壊しにする強烈ワードにハッとさせられます。
沈美なる90年代の空気感が台無しや・・・
しかし、あなたは未だかつて聴いたことがあるだろうか?
ここまで切ない「タマ○ン」」という言葉の響きを聞いたことがあるだろうか・・・?
唐突に、哀調を帯びた楽曲をブチ壊すこの言葉、ただのギャグのように聞こえるが、その本当の意味は、「2つで1つであるタマ○ン」と、「お互いの想いとは裏腹に離れ離れになってしまう切ない感情」との対比を歌っているのではないだろうか?
君は僕に近づいて 僕は君と遠ざかる
君は一緒だねと泣いてて 僕は強がり笑ったね
タマ○ン
Ahこの街では誰もが孤独で タ○キンのようにいかなくて・・・
すいません、考えすぎでした。
05. 花言葉がうまれる会
こちらも90年代の風を感じる優雅な楽曲。
MALICE MIZERやLAREINEといった中世ヨーロッパを彷彿とさせるノスタルジー満開な美しきシングル。
ただ歌詞については相変わらずふざけ倒していて、
オムツで外に出た変質者がしっかり裁かれて、今ではスーツで外に出ているという報告から、ありそうで本当はない花言葉をひたすら連呼する謎楽曲。
いや、ありそうな言葉は一つも出てこない。。。
06. 機械じかけの変態~ラケット女王様~
これはもう完全にMALICE MIZERだ・・・
マリスのILLUMINATIとS-CONCIOUSと合わせた様な、刺激的で機械的なデジタル感強めなトラック。
歌は若干BUCK-TICKな要素も感じられます。
ドMが女王様にしばかれ、バトミントン選手からスマッシュされ、資格の勉強をしながらも機械になりたいという予想の遥か上を行く世界観。
07. 凍らしたヨーグルト
バンドの演奏力の高さを感じられる、王道なヴィジュアル・ロック。
ザクザクしたギターのリフから、切なくも透明感のある高速アルペジオが空間を切り裂く。Aメロからのアコースティックギターのバッキング、うねるウォーキングベースの旋律と、聴き所が満載でバンド感溢れている。
ただ、相変わらず歌詞はふざけ倒している。
歌の入りこそ普通のヴィジュアル系と勘違いさせるが、すぐに勘違いだったと現実を教えてくれる。
まだ行かないで ノアの箱舟よ 置いていかないで
弁当を食う前に・・・
人のイヌのご飯を 衣の海に沈めていく オリジナルのかき揚げ
知らねえババアの買い物カゴに それを入れます
その後、知らない地区の祭りに勝手に参加して、子供みこしで誰よりもワッショイ言ったり、ガキだけでなく親も泣かしてかき揚げに入れたりと非常に破天荒でワイルド。
ちなみにヨーグルトはほとんど関係ないし、凍らせてもいない。
08. グローリー・デイズ
若干ラファエルを感じさせるポップでキャッチーな要素たっぷりな曲。
メジャーコードで聴き易く、アルバムの中でエッセンスとして上手くバランスを取っている。
似たもの同士、寄り添っていこうというテーマだが、
池の水飲むもの同士 砂利食う同士
高めあっていこう
知らねえジジイの軽トラ ゴールドに塗って 勝手に売るもの同士
水族館で水も飲みます
そんな同士はいない。
09. スイミーはそういうことではないです
なんとなくラルク アン シエルに寄せているようにも感じられる。
服を脱ぎ捨て、最終的には刑務所に行くという沈美で珍奇な唯一バラード調の曲。
哀愁たっぷり。
10. ご飯が食べられる古書堂で
昔は、こういう感じのバンドいっぱいいたな・・・と懐かしい気持ちにさせてくれる。なぜか説明できないけどなんかエモい。
例えるなら、インディー時代はダークな世界観だったバンドが、メジャーに行って少しポップになってしまった時にやりがちな曲。ライブの最後に演ってファンとの絆を感じさせがちな曲。伝わるかな?(汗)
ただし歌詞は全く関係なく、
ご飯が食べられる古書堂(街の食堂のこと)でおばちゃんと信頼関係を築いて、最終的にマンガを盗んで売ってお小遣いにするという、人情もクソもない外道な主人公の歌でした。
11. 良いホームラン
1stシングル。正統なヴィジュアル系のフォーマットにのっとり、一番分かりやすく親しみやすい曲ではないだろうか。
イントロのオルゴール風ストリングスから一気に激しくなる構成は、これぞヴィジュアル系!とガッツポーズしたくなるような安心感。
歌詞は例に漏れなく支離滅裂だが、何をしているのか想像しやすい内容なので聴き取りやすい気がする。
知らねえババアの原付 勝手に人に売ります
知らねえババアの腕にデジモンのタトゥー入れます
そしてやっぱりサビの入りだけそれっぽい事言っておいて、あとは全部適当という相変わらずなシステム。
夜空にある星の瞬きひとつ数えて
水族館のおさかな 平気で海に全部逃がします
あと、どうしてもお水を飲んでしまう謎の性格も最後まで健在でした。
市民プールのお水 生簀や下流のお水 平気で全部飲みます
ひとんちの金魚平気で食います
まとめ
長くなりましたが、ここまで読んでくれてありがとうございます。
正直疲れました。。。
最後まで読んでくれたあなたは、立派な変人です。
まとめると、色々な十字架とは
・古きよき時代を思い出させし沈美なるバンド
・知らねえババアに容赦しないバンド
・いろいろなお水を飲んでしまうバンド
という事が分かりました。
よかったらYoutubeやサブスクでチェックしてみてください。
ノスタルジックでシュールな世界観の虜になってしまうかも知れません。
それでは、アディオス!