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SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」ターゲット別解説~

るんるんぴぃです。おひさしぶり。         今回はSDGs目標14「海の豊かさを守ろう」に付随する10個のターゲットたちを分かりやすく解釈するお話です。                       ちなみに「海の豊かさを守ろう」の原文は「Life below water」。こちらだと生命の存在感がはっきり出ています。waterが池や川を表す可能性も考えやすいですね。

以下、総務省による原文の仮訳を見出しの最初に引用の形で掲載させていただきます。           また、数字のターゲット: 具体的な達成すべき課題  アルファベットのターゲット: 上記のための手段   の実現について書いてあります。          なお、書き出すとキリがないので、ここでは各ターゲットの仮訳文章を平易な単語に言い換え、語句の簡単な説明を添えるに留めておきます。




1. 海洋汚染防止と削減

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2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。


海洋汚染の原因は主に次のように分類されます。

1.陸からの汚染 (例: 生活排水による富栄養化)           2. 探査や開発による汚染 (例: サンゴ礁の埋め立て)        3. 投棄による汚染 (例: 海洋ごみ)                                  4. 船舶による汚染 (例: 油や有害物質の流出)                5. 大気による汚染 (例: ダイオキシンの流入)                 6. 人為による汚染 (例: 石油タンカー事故)      

また、海洋汚染の影響の削減のための方法としては「レジ袋の有料化によるプラスチックごみ削減」、防止のための方法としては「法律による海洋への有害物質流出規制」などが挙げられます。



2. 生態系の保護と管理

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2020年までに、海洋及び沿岸の生態系に関する重大な悪影響 を回避するため、強靱性(レジリエンス)の強化などによる持続的な管 理と保護を行い、健全で生産的な海洋を実現するため、海洋及び沿 岸の生態系の回復のための取組を行う。


SDGsにおける他の目標(例: 目標9,11)でも使用される「レジリエンス (resilience) 」とは、困難にうまく適応・回復する能力のことです。ここでは、海洋における生態系破壊という困難に対し、人間の行動規制のみならず海への適切な介入によって生態系が得る強さを指します。この管理・保護の具体的な方法としては、「重要海域の指定・抽出」などが挙げられます。

また、「生産的な海洋」の実現方法の一つは地球温暖化の解決です。近年の海水温上昇により、栄養塩(植物プランクトンの餌)の多い冷たくて重い水が海の底に沈んだまま魚たちのもとに来なくなってしまっています。気候変動については目標13で詳しく説明されていますが、このように他の目標との関連を考えることは、目標14の他のターゲットでも重要となっています。



3. 海洋酸性化の影響軽減

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あらゆるレベルでの科学的協力の促進などを通じて、海洋酸性化の影響を最小限化し、対処する。


海洋酸性化とは、大気中の二酸化炭素が雨などを通じて海に入り込み海水の液性が酸性に近づくことです。海水が酸性化すると海水中の炭酸カルシウムの量が減少し、サンゴや貝・ウニは骨格を維持できなくなってしまいます。

なお、産業革命以来排出されてきた二酸化炭素の量は膨大であるため、海洋酸性化をアルカリ性の物質投下による中和で元に戻すことはほとんど不可能であるそうです。その影響を少しでも軽減するために、公共交通機関の利用などによる二酸化炭素排出量の削減が推進されています。



4. 漁獲規制

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水産資源を、実現可能な最短期間で少なくとも各資源の生物学的特性によって定められる最大持続生産量のレベルまで回復させるため、2020年までに、漁獲を効果的に規制し、過剰漁業や違法・無報告・無規制(IUU)漁業及び破壊的な漁業慣行を終了し、科学的な管理計画を実施する。


漁獲規制には、獲る者への規制と獲られるものへの規制があります。

獲る者への規制には、法執行の徹底や市場の厳格な管理が挙げられます。漁獲による生態系破壊の背景には、IUU漁業 (Illegal: 違法, 国際法や国内法に反する漁業) (Unreported: 無報告, 獲った量を過少に報告するもしくは報告しない漁業) (Unregulated: 無規制, 認可されていない漁船による漁業) の存在があります。IUU漁業を減らし、またIUU漁業によって獲られた魚を売らないようにすることが必要なのです。

獲られるものへの規制の例には、クロマグロ漁の漁獲枠制限及び自粛が挙げられます。2020年8月28日時点で、日本ではクロマグロやサンマ・マイワシを含む9種への漁獲規制が導入されています。ブリやマダイなどにも規制が進められる一方で、小規模業者へのサポート不足といった課題も出てきています。



5.海域保全

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2020年までに、国内法及び国際法に則り、最大限入手可能な科学情報に基づいて、少なくとも沿岸域及び海域の10パーセントを保全する。


動植物や地形を保全するために、陸上では自然保護区が設置されます。海においてのそれは海洋保護区と呼ばれ、SDGs以外に生物多様性条約や生物多様性国家戦略などで保全面積の目標が定められています。

ここでは海域の少なくとも10%の保全を目指していますが、既に海洋保護区は全世界の国家管轄権内水域の14.4%に設置されています。日本でも、管轄権内水域の8.3% (面積にして36.9万㎢)がこれに該当します。



6.補助金規制

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開発途上国及び後発開発途上国に対する適切かつ効果的 な、特別かつ異なる待遇が、世界貿易機関(WTO)漁業補助金交渉 の不可分の要素であるべきことを認識した上で、2020年までに、過剰 漁獲能力や過剰漁獲につながる漁業補助金を禁止し、違法・無報告・ 無規制(IUU)漁業につながる補助金を撤廃し、同様の新たな補助金 の導入を抑制する。


乱獲による海洋資源の減少に対し、WTOは補助金の禁止という方法を取ろうとしています。しかし、水産物を主要輸出品とする途上国はこの政策に反対しており、なかなか合意ができないのです。日本もまた、東日本大震災の被災地の漁業に支障が出かねないという立場を取っています。

IUU漁業に繋がる補助金は撤廃、経済発展に必要な補助金は続行、と行けばいいものの、監視が行き届きにくい海洋での営みを単純に管理することは難しいようです。



7. 小国の漁業促進

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2030年までに、漁業、水産養殖及び観光の持続可能な管理などを通じ、小島嶼開発途上国及び後発開発途上国の海洋資源の持続的な利用による経済的便益を増大させる。


「小島嶼開発途上国」とは、領土が狭く、低地の島国のことです。例としては、キューバやツバル、シンガポールなどが挙げられます。地球温暖化による海面上昇の影響を顕著に受ける上に、人口が少ない、大陸の都市から遠いといった理由により、持続可能な開発がしにくい傾向があります。

「後発開発途上国」とは、開発途上国の中でも特に開発が遅れている国のことです。1日当たりの国民総所得が1.025米ドル以下であることに加え、妊産婦や乳幼児の死亡率、就学人口、さらに自然や経済のショックに対する強靭さの度合いなどが判断基準となっています。現在、全国196ヵ国のうちの47ヵ国がこれに属します。



a. 研究促進・拡散

ここからは、前述した課題への対抗手段を解説していきます。

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海洋の健全性の改善と、開発途上国、特に小島嶼開発途上国および後発開発途上国の開発における海洋生物多様性の寄与向上のために、海洋技術の移転に関するユネスコ政府間海洋学委員会の基準・ガイドラインを勘案しつつ、科学的知識の増進、研究能力の向上、及び海洋技術の移転を行う。


ユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)は、海洋の調査・研究について各国政府間での取り決めを行うユネスコの機関の一つです。日本では文部科学省を中心に、IOCによる事業・会議への専門家の参加促進、また信託基金による支援をしています。

ちなみにここでの海洋技術は「海洋環境の安全な使用、開発、保護、および介入のための技術」を意味します。単に海洋資源を利用するだけでなく持続性を求める姿勢に、目標8「働きがいも経済成長も」の面影を感じます。また、そして発展途上国にも知識や研究の普及を目指すとなると、目標4「質の高い教育をみんなに」とも関連してきます。



b. 零細業者への支援

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小規模・沿岸零細漁業者に対し、海洋資源及び市場へのアクセスを提供する。


小規模漁業は、世界の捕獲漁業と漁業従事者の90%以上を占めています。またその約半数は女性で、全世界の漁獲量の約50パーセントを供給しています。日本の漁業経営も、その96%は家族など小規模であると言われています。

こうした小規模漁業経営者たちの多くは、不健全な労働環境や乏しいインフラの元で活動・生活しています。(あまり表立つことのないカカオ農園とも取れます)十分な教育を受けていないため文字が読めず、支援のためのデバイスを差し出しても使い方の説明に困る場合もあるそうです。それでも、国連食糧農業機関(FAO)によるガイドライン制定に代表される小規模漁業経営者の保護への動きが世界的に高まってきています。しかしながら日本では零細業者保護への政策は十分でなく、クロマグロ漁規制への反発といった形で浮き彫りになってきています。



c. 法の実施

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「我々の求める未来」のパラ158において想起されるとおり、海洋及び海洋資源の保全及び持続可能な利用のための法的枠組みを規定する海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS)に反映されている国際法を実施することにより、海洋及び海洋資源の保全及び持続可能な利用を強化する。

「我々の求める未来」とは、2012年にリオデジャネイロで開催された国連持続可能な開発会議で採択された文書です。そしてそのパラグラフ158番には、「海洋が地球の生態系の基本的要素を構成し生態系を維持するために不可欠であることの認識、また『国連海洋法条約(UNCLOS)45』に則って、海洋とその資源を保存し持続可能的に 利用することの認識」を重要とみなす文章が記載されています。

ここまで出てきた他の目標からも見てとれるように、自然保護に関するいくつかの目標は2020年の達成を目安としています。そして現在、達成状況の確認及び計画の修正が進められています。全ての目標の達成期限である2030年に向けて、これからの10年で法の整備・執行も一層厳格になるでしょう。




おわりに


以上で、目標14のターゲット10個全ての解説が終了しました。                      やはり全てを整理し1つの記事にまとめようとすると長い。そして深い。今回ここに書いたことは問題の表面にすぎず、一つ一つのトピックについて具体例を細かく見ていけばさらなる課題が見えてくるのです。     次回、目標15で同じことをします。お楽しみに。




参考サイト

総務省仮訳→ https://www.soumu.go.jp/main_content/000562264.pdf                                                                                   ターゲットイメージ→ https://www.asahi.com/ads/sdgs169/japanese.pdf

海洋汚染の原因→ https://www.eic.or.jp/library/ecolife/knowledge/earth08a.html                     レジリエンスとは→ https://kotobank.jp/word/レジリエンス-674159
地球温暖化と栄養塩→ http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/sinfo/sympo/h19/1211/lecture(6).pdf.                                             海洋酸性化→ https://youtu.be/koZIxHeWbfY
漁獲規制→ https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/282.html https://www.google.co.jp/amp/s/www.jiji.com/amp/article%3fk=2020082700840&g=eco        海洋保護区→ https://www.env.go.jp/council/12nature/y120-35/mat02_4.pdf                                                        WTO交渉→ https://www.google.co.jp/amp/s/www.sankeibiz.jp/macro/amp/170606/mca1706060500009-a.htm      小島嶼開発途上国→  https://ja.m.wikipedia.org/wiki/   後発開発途上国→ https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/ohrlls/ldc_teigi.html                                                                                    海洋技術→ https://en.m.wikipedia.org/wiki/Marine_technology   IOC→ https://www.mext.go.jp/unesco/005/003.htm 小規模漁業者支援→ https://www.mext.go.jp/unesco/005/003.htm          http://www.nouminren.ne.jp/newspaper.php?fname=dat/201709/2017091801.htm                          https://www.ide.go.jp/Japanese/IDEsquare/Column/ISQ000011/ISQ000011_005.html?media=pc              我々の求める未来→ https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol91/index.html                                                        http://geforum.net/wp-content/uploads/2013/05/report201303-2.pdf




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