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〜モンドリアンの描く体温〜

Agenda 2020 <1月・③>

今週はピエト・モンドリアン Piet Mondrian(1872 - 1944)
彼が30代後半に描いた作品『L’arbre rouge 赤い樹』(1908−1910)です。

そして彼の言葉 ↓(仏・英)
« Le bleu appelle une couleur qui s’oppose a lui. Les impressionnistes déjà exagérèrent la couleur, les néo-impressionnistes et les luministes allèrent encore plus loin. Pour parler de mes propres expériences, j’ai trouvé quelquefois une certaine satisfaction à peindre un moulin en rouge contre le bleu du ciel. »

“ The color blue calls for an opposing color. The Impressionists, in their time, exaggerated color; the Neo-Impressionists and the Luminarists went still further. As for my own experience, I can find myself taking a certain satisfaction in painting a red windmill against a blue sky. ”

青色は自らを際立たせるために反対の色を求める…直訳しても面白い言葉です。
何百年も前から画家たちは色彩の効果を試行錯誤してきたのでしょう。
目に映る色を忠実に再現するため、自身が感じ取った色を表現するため、そして よりドラマティックな効果や、より明るい効果を求めて。色遣いの自由度は印象派以降一気に高まって行きました。
モンドリアンは色彩にどんな効果を求めていたのでしょうか。

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この作品『赤い樹』を見ていると、確かに青色が持つ個性を考えさせられます。
昼のような夜のような、明るいような暗いような、燃えているような冷めているような、固いような柔らかいような…。

彼はこの作品以降、画面を水平と垂直の直線のみによって分割し、赤・青・黄の三原色のみを用いる『コンポジション』にたどり着くまで試行錯誤を繰り返します。
去年10月、マルモッタン美術館の企画展<モンドリアン展>で、当時の作品を観ました(写真は、その時のチラシです)。

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青色をバックに風車、教会や花などを描いた作品がいくつかあり、独特の色遣いをする人だなぁと感じていました。
私は絵画を見ながら頭の中に音楽が流れることがよくあるのですが、この時の展示会場では無音。その代わりに 温かい、寒い、ぬるい、冷たい、熱い!、暑い、冷めている…、一枚一枚の作品からさまざまな体温を感じていました。
そして会場最後にたどり着いた『コンポジション』。

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私の温度センサーはOFFとなり、そのかわりに他の感覚が一気に開放される不思議な体験をしたのです。これほど抽象を極めた作品を前にして 全身の感覚が刺激されていることに驚きました。
うまく表現できないのがもどかしいのですが…。

<モンドリアン展>を振り返った時に、彼について勝手にキャッチコピーをつけていました。
「目に映らないものを全身で感じ取り、それを素直な気持ちで受け入れた上で、イメージを膨らませ、それを形にする創造力を持っている人」と。
×「それを形に」→◯「それを形や色に」と付け加えて、今週の空きスペースにメモしておきます。

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