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旦那さんと <キュビスム展>
2023年10月に訪れた<キュビスム展>について前回投稿しました。
実はその2ヶ月後(2023年12月)に旦那さんが<キュビスム展>を観に行く!というので簡単な事前レクチャーを頼まれました。
あなたがそんなに勧めてくれるなら、行ってみようかな。
素人にもわかりやすい解説を頼むよ
それほど美術に興味がない旦那さん。美術展に無理やり誘って一緒に行っても「ゆっくり見てていいよ。わたしはあそこの椅子に座って待ってるから」と、やはり私とはペースが違います。結局 お互いに気を遣ってしまうので、最近はあまり一緒に美術館に出かけていません。
しかし2019年には私の知らないうちに一人で〈バスキア展〉に行き、2020年には〈ピーター・ドイグ展〉に行ってきたようです。自分なりに “カッコいい” と感じた作品のポストカードを購入してご満悦でした。
今回の<キュビスム展>、彼にちょっとHITするかも知れない!と、気合を入れて事前レクチャーをしたのです。
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そもそも【キュビスム】って何?。そんなに凄いものなの?
全ての対象を「立方体」に単純化してそれを積み上げたように描く作品の「立方体」=キューブから名前を取っている【キュビスム】は、西洋美術の歴史をガラリと変えることになった活動。
「どんな風にガラリと変えたの?」というのを少し説明するね。
私たちが学校の授業で教えてもらったのは、
「そこ」から「見える」景色をそのまま「紙に」「写し取り」なさい!というもの。
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右)ウィレム・クラースゾーン・ヘダ作 『蟹のある朝食』 1648年
そのために、遠くのものは小さく、横から見たコップの飲み口は楕円形に描くようにと、「写し取る」ためのコツを教えてもらいました。
富士山でさえ紙の上では小さく描き、本当は丸いコップの形も歪めます。そして私が通った小学校は、残念!あの山の向こうに隠れて見えないから描けません。
だって「絵画」って人間がある「一点」に立った時に「見える」景色を いかに「そのまま」紙の上に「写せる」か・・・絵画とはそういうものだから、と。
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しかし遠近法や陰影法などの技術を磨いて、そっくりそのまま描くというだけであれば職人道を歩むことになります。技術者とは違う “芸術家” としての表現を探っていくことになるのです。
そこで、鑑賞者の視覚だけでなく五感に訴えかける、“滑らかな”、“匂い立つような”、“音楽が聞こえてきそうな”、“美味しそうな” 表現方法を探求していきます。
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ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ右)『聖マタイの召命』1599-1600年
また “神秘的な”、“理想的な”、“ドラマティックな” そんな演出効果も駆使して目の前に広がる景色で鑑賞者を驚かせるような作品も生まれたのです。
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しかし19世紀に入ると写真が普及します。
この代物、「絵画」で表現してきた「人がある場所に立った時に見える景色」をそのままソックリに焼き付けることができるのです、しかも瞬時に!
このままでは絵画は写真に取って代わられる?絵画に未来はないの⁈
いやいや、絵画にはもっと可能性があるはずです。
そこで登場したのがあなたも知っているモネやルノワールの【印象派】。
機械には不可能なこと。それは、人間の目でしか捉えられない「光」や人間の心でしか感じ取れない「空気」を描き出すことです。
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左)クロード・モネ『アルジャントュイユの船着場』1872年
右)ピエール=オーギュスト・ルノワール『ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会』1876年
私は【印象派】の誕生によってずいぶん絵の描き方が変わったなぁ…、美術史の新しい幕開けだ!などと思っていたのですが、この【印象派】でさえ結局、自分が立っているそこから見える「光」やその瞬間の「空気」感を、紙に写し取ろうとしたに過ぎなかったのです。
絵画とは、そういうものだから、そういう枠組みの中の芸術だから、と。
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しかしちょっと待てよと。自分が見ていることが全てのように描くのって、ちょっと傲慢ではないかしら?あなたは宇宙の王様?。世界は、あなたに見える景色が全てじゃないでしょ?
丸いコップの飲み口を楕円形に描くなんて、その物の本質を捉えて描いていないじゃない?。大きいものは大きいし、丸いものは丸いんだよ。
丸いコップの縁はまんまるに書いてみましょう。日本のシンボルで日本一の山、富士山は真ん中に大きく描くべきね。そしてここからは見えないけど、私が通った小学校は、グランドだけ書いちゃえ!
いろいろな角度で物事を捉えましょう!とセザンヌは言いました。
それに、人間の五感なんて限界があるでしょ?。もっと「理性」によって画面を秩序よく組み立ててみたらどうかな。それに我々の常識なんてちっぽけなもんだよ。価値観が変わればモノの見方、そして世界が変わるんだ。もっとチャレンジして絵画独自の世界を創り上げようよ。とピカソ。
そうだ、紙に絵を描いていくのが「絵画」なんて決めなくていいよね。いろいろな素材をくっつけたり、彫刻や既存製品との組み合わせも面白いかもしれない。とジョルジュ・ブラック。
芸術ってボーダーレスなんだよ!
そんな探求を続けて、我々が囚われていた絵画に対する先入観
=「絵画」とは 人間がある「一点」に立った時に「見える」景色を いかに「そのまま」紙の上に「写せる」かという芸術
から解放してくれたのが【キュビスム】なの。
そうか。
規制を取っ払って、多角的でグローバルな社会へ・・・と我々も芸術も変化していかねばならないからねぇ。
ふむふむ。なるほど。
私も、芸術って過去のものほど貴重で、古ければ古いものほど尊いと思いがちでした。鑑賞者たる私も変わらなければならないねぇ。
旦那さん、いいこと言うじゃない!
で、あなたが思う<キュビスム展>の見どころポイントはどこ?
と聞かれたので、前回投稿した<キュビスム展>を10倍楽しむ “わたしだけの鑑賞法” を熱く語ったのですが・・・。
あまりにもマニアック過ぎたらしく途中からあまり聞いていませんでした(汗。
事前レクチャー、終了です。
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<キュビスム展>から帰宅した彼に「どうだった?」と感想を聞いたところ、
ピカソの『輪を持つ少女』よかったね。形と色のバランスがカッコいい!
心に刺さる作品って、人それぞれ違って面白いですね。
私は『輪を持つ少女』をチラシで何度も見ていたので、逆に実際の作品と向き合うことができていなかったかも知れません。
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パブロ・ピカソ『輪を持つ少女』1919年
図録で作品をじっくり鑑賞してみました。
本当だ、素敵な作品ですね。クラシックな鏡や、女性の髪型・首飾りや衣装から、ちょっとベラスケスが描いた王室の女性を思わせます。
少女から大人になりつつある女性が持つ「輪」は何かを暗示しているのでしょうか。輪から覗き見える景色はどんなものかしら。
その少女は本当に目の前にいるのか、それとも鏡に写る虚像かしら?。
そして私たちがカンヴァスを通して見ているのは果たして絵画なのか。。。
わおーっ、奥深い作品に思えてきました。チラシのメインビジュアルに選ばれるだけあります。
旦那さんの “カッコいい” 感覚、悪くないですねぇ。
で、私の事前レクチャーは役に立ったかしら?と聞こうと思ったのですが。。。
まあ、どちらでもいいか。
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さて<キュビスム展>は、前回投稿した通り<東京展>を終え、会場を京都に移します(投稿が遅くなったこと、反省しています)。
<キュビスム・京都展>(京都市京セラ美術館)
2024年3月20日(水)〜7月7日(日)
お近く方、京都にお立ち寄りの方は是非ご覧くださいませ。お勧めです。
<終わり>