麝香連理草
12月の畑で育てるものに困り、いっそ花でもと思い立ち、センチメンタルに浸りながら種を撒いたスイートピーがようやく花を咲かせた。周囲の畑ではネギやサヤエンドウが早く食べてくれと風にそよいでいる中、まさに紅一点、麻痺毒を携えたスイートピーが、遠くからその存在をアピールしてくれていた。
寒かったり、暑かったり。
いつ花を咲かそうかと悩みながら蕾を膨らませたからだろうか、力強い茎と弦とは対照的に、咲き始めにも関わらず花びらは枯れる直前のように弱々しかった。近づいて花びらを眺めると染まり切らない赤味を感じて、さらに物悲しい気持ちになってしまった。
あまり気を遣ってあげられず、、、。安易に種を撒いて申し訳ない。でも咲いてくれてありがとう。
そんな独り言がこぼれてしまった。
スイートピー=Sweet pea=甘いえんどう豆=和名は麝香豌豆(じゃこうえんどう)=別名は麝香連理草(じゃこうれんりそう)というらしい。
調べてなるほど、えんどう豆と同じ葉、弦、花の形だった。近くの畑のおじいさんやおばあさんが、ずいぶん威勢のいいエンドウだなと言ったのは、畑でスイートピーなんて育てる輩がいないのと、葉や弦の形で覚えているのだなと。
麝香=じゃこう鹿のお腹から出る香料=ムスク
なるほど。
連理= 1本の木の枝が他の木の枝と連なって木目が通じ合っていること。 《「連理の契り」から》夫婦・男女の間の深い契りをたとえていう語。
なるほど。
これを「スイートピー」と名付けよう。
これを「じゃこうれんりそう」と名付けよう。
それぞれの名付け親に会いたい。
特に麝香連理草の名付け親に。
連理という言葉。連理という響き。連理という言葉の意味。
初めて知る言葉。徐々に自分の生に投影されていく感じが心地よい。
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