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【猫小説】スミオ 1:はじめまして
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はじめまして。
僕の名前は「スミオ」です。スミオのスミの字は「墨」です。
今年の七月で七歳になる、黒猫です。
ヒト年齢で言うと、四十代半ばくらい。
オトコザカリ、と、言えましょう。
まあ、実際、日々オトコに磨きをかけているおかげで、
渋みも増してきています。
なめらかで、すべらかな毛並みは、
自慢に値するものだと自負しているし、
並外れた筋力を持つ、マッチョでもあります。
動物病院の先生が、お母さんに、
「スミオくんは、とても筋肉が発達していますね。
よほど、動いているんでしょうね」
と、話していました。
ほら、ね。先生のお墨付き、というわけです。
スミオなだけに。なーんてね。
僕は、二〇十八年の夏、
まだ生まれて一か月くらいの、とても小さい頃に、
東北自動車道で、保護されました。
どうして高速道路に、僕がいたのか。
いろんなことが考えられると、
みんなは予想しているけれど、
僕はいやなことは忘れようと思う。
保護してくれたお母さんも、お姉ちゃんも、とても優しかったから、
僕は元気になって、シアワセになりました。
そこで「スミ(墨)」と名付けてもらった。
だけど、そのおうちにはずっといられない事情というものがあったのです。
そして僕は、新しいおうちに行くことになりました。
お母さんのお友達のおうちです。
その人が、新しいお母さん、今のお母さんです。
「名前を変えていいよ」って、
最初のお母さんが言ったけど、
新しいお母さんは、ううん、スミちゃんがいい、
スミオにするといって、
僕は正式にスミオという名前になりました。
これから、少しずつ、僕の話をしようと思います。
僕のこと、僕の家族のこと、僕の毎日のことなんかを。
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