見出し画像

NFTゲームと投資

NFTとは?

仮想通貨(暗号資産)の発達に伴い、近時「NFT」という概念が注目を集めているのをご存じでしょうか。
NFTとは「Non-Fungible Token」の略称で、直訳すると「代替不可能なトークン」ということになります。
ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨は、法定通貨などと同様に価値代替物(厳密には物ではなくて、データ)であり代替性があるのに対し、NFTは非代替的だということです。なぜ非代替的かというと、そのNFTにはブロックチェーン技術を用いた固有のデータが割り当てられており、他のNFTとは区別できる唯一のものだからです。
少し現実に即した例を挙げると、私たちは日本円ベースで資産形成しますが、日本円で不動産を買って投資したりします。日本円と不動産の関係は、仮想通貨とNFTの関係によく似ています。

NFTゲーム

このNFTの特徴を利用して、NFTゲーム(ブロックチェーンゲーム(BCG)ともいう)が近時流行り始めました。個々のNFTがゲーム上のアイテムやキャラクターを表しており、それを使ってゲームをするのです。
テニス界では、スタン・ワウリンカが自身をモデルにしたNFTを発行するゲームのプロジェクトに参画したことが話題になりました。スポーツ選手がその肖像を利用してこうしたプロジェクトに携わるのは、スポーツにおけるNFTビジネスの可能性を感じます。
こうしたゲームは海外で発達しているほか、ゲームそれ自体が「eスポーツ」として競技性を持つようになってきているため、今後日本でもますます発展していくものと思われます。
実は私も、スポーツだけでなく趣味としてはゲームも好きなので、話題のNFTゲームを少し覗いてみたりしています。

Play to Earn

NFTゲームの重要な特徴として「Play to Earn」というものがあります。
これは、要するに、ゲームをしながらお金を稼ぐ、というものです。
無料で始められるNFTゲームもありますが、NFTゲームは一般に、NFTを購入し、それを用いてプレイする仕様となっていることが多いです。ゲーム内で仮想通貨が発行されるなどして、それを現実のお金に換えることもできるような仕組みになっていることが多いようです。
強いNFTほど高価でゲームを有利に進めたりできるので稼ぎやすい、という仕組みが多いようです。先ほどの例だと、不動産を購入して、賃料を得るのに似ていますね。
また、NFTが(これまでのコンピュータゲーム内のデータなどとは異なり)非代替的であることを利用して、人対人で現金(仮想通貨)売買することも多く行われています。ゲームに人気が出ればNFTの価値も上がり、転売利益が出るということです。

投資と同じ、ということは

このように、NFTを購入することはあたかも投資のようです。
投資と同じ、ということは、投資と同じようにリスクがあることを自覚しなければいけません。例えば、NFTを買っても、ゲーム自体に人気が無ければNFTの価値は落ちていくばかりですし、ゲームが提供する仮想通貨の価格が下がって損をすることもあります。

さらにひどいリスクもあります。
先日、あるNFTゲームの運営者が、それまでの利益を全て抱えて逃げたのではないか?ということが話題になっていました。
これに触れて私が真っ先に思いついたのは、私自身も業務上で対峙したことのある「投資詐欺」です。

投資詐欺の手口として多いのは
・とにかく楽に儲かることをアピールする
・「運用益」といって超高配当を約束する
・元本保証する(これは、出資法違反です)
・実際、少しの間は高配当を続けて信用させる
・友達紹介に高額の紹介料を出す
・数ヶ月後、配当が止まり、いなくなる
というものです。いわゆる「ポンジ・スキーム」というやつですね。
これによって一気にお金を集めるわけです。
もちろん私たち弁護士は相談を受ければ回収を試みますが、いなくなったあとの業者はもぬけの殻ということも多く、現実の回収は非常に困難となります。

NFTゲームのシステムは、その仕組みを使って悪いことを考える人はいそうだなー・・・と思ってしまいます。
「ゲームをして楽してこんなに稼げる!」というような広告をしているものもあると思いますが、まずは「そんなに甘い話はない」と考えるべきです。
上のような特徴を感じたら、少し立ち止まって考えてみてください。

NFTゲームの発展性

少し警鐘を鳴らしましたが、それでもNFTゲームは発展性のあるものだと思います。スポーツビジネスにおいても応用できると思いますし、ゲーム自体も「eスポーツ」として今後注目されていくでしょう。当然、肖像権や知的財産権が問題となってきますので、スポーツローにも大いに関わりのある話題です。

他方で利用する側としては、上記のようなリスクにも鑑み、
・投資の判断には慎重を期し、十分な調査を行う
・甘い話に飛びつかない、広げている風呂敷は小さい方が信用できる
・損をしてもまあいいかと思える程度の余剰金の範囲で楽しむ
ことが重要だと思います。

あとは、これは何の専門的な見解でもない個人の感想ですが、
・楽しいゲームを選ぶ
ということも重要だと思います。
ゲームを稼ぐ手段と捉えてしまうと、稼げなかった時のショックが大きいと思います。しかも、常識的に考えれば、厳しい仕事や難しい仕事には大きな対価が支払われますが、楽な仕事に大きな対価は支払われません。そんな甘い話はないのです(事業に成功した人や資産を持っている人は楽していると思う人もいるかも知れませんが、そういう人たちも過去に必ずリスクを取っています)。ゲームで効率よくお金を儲けるというのは基本的にはありえない話と思った方が無難です。
そうだとすると、「Play to Earn」は、稼ぐためにゲームをするのではなく、楽しくゲームをやりながら小遣い程度に利益を得る、くらいで考えておかないといけません。そして、その程度しか利益が出ないのに楽しめないゲームは、たちまち苦痛でしかなくなってしまい、人気が落ち、NFTの価格も落ち、大損してしまいます。
楽しいゲームであれば、利益が出るかどうかに関わらず楽しめます。するとそのことによって人気が出てきて、そしてそのことによってユーザーの手持ちNFTの価値が上がっていくという発展をしていくでしょう。当然ですよね。この発展の道筋は、別にNFTゲームにかかわらず、すべてのビジネスの王道だと思います。
個人レベルで見れば、ゲーム自体を楽しむという効用を得ていれば、もし損したとしても「楽しみのためにお金を払ったんだから、まあいいか」と思いやすいですしね。

結構注目しているビジネスモデルではあるので、法整備周りも含め(個々で書いた以上に、暗号資産やNFT周りではたくさんの法的論点があります)、僕自身も引き続き情報に敏感になっていこうと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?