【HPの法務】ウェブリンクの法規制(著作権法のリーチサイト規制)
著作権法は次々と改製が重ねられているところですが、令和2年改正で追加されたリーチサイト規制について、書類送検がなされたというニュースから、リーチサイトのお話をば。
ちなみに、これ自体が著作権侵害ではなく、著作権侵害を誘発するので「著作権侵害とみなす」という構造になっています。
1 リーチサイトとは
リーチサイトというのは、海賊版などが掲載されたURLなどを表示するウェブサイト・アプリなどを言い、リーチサイト規制はこのウェブサイト等について著作権侵害を誘発するとして、直接の著作権侵害ではないけれども、これを著作権侵害とみなすというものになります。
侵害著作物等の他人による利用を容易にする行為であつて、第一号に掲げるウェブサイト等において又は第二号に掲げるプログラムを用いて行うものは、当該行為に係る著作物等が侵害著作物等であることを知つていた場合又は知ることができたと認めるに足りる相当の理由がある場合には、当該侵害著作物等に係る著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす(著作権法第113条2項柱書:かっこ書き省略)。
また、リーチサイトについて、①著作権侵害のリンクを提供した(要はウェブサイトにURLを掲載するなどした)者、②ウェブサイトの運営者をターゲットとしています。
2 権利侵害の罰則等
著作権侵害の場合、考えられる主たる法的措置としては、①差止請求、②損害賠償、③刑事罰があがります。
このうち、差止請求権は、著作権侵害があれば足りますので、割愛。
特に刑事罰としては
①リンク提供者
3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはこの懲役および罰金の両方(著作権法120条の2第3号)。
②ウェブサイト運営者
5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはこの懲役および罰金の両方(著作権法119条2項4号および5号)
となります。
3 まとめ(著作権侵害の重さ)
新型コロナウイルス感染症のことが話題になるようになってから、巣ごもり需要に関連してなのか、著作権に関するニュースが増えたように感じます。先のニュースにおいても、「好きな漫画で簡単に稼ぎたかった」といった被疑者のコメントがありますが、自分の利益を得ることで罰を受けるのが割に合うのかということはよくよく考えられなければならない話ではあります。
刑事罰もそうですが、民事の損害賠償請求ということもありますし、実際高額で和解しているケースもあるところですから、決して実名が出ずに処罰を受けただけだからと甘く見ない方がよいのです。
実際、リーチサイト規制を行うきっかけともなった「はるか夢の址(あと)」ではウェブサイト運営者3名に対し、懲役3年6か月、3年、2年4か月の実刑判決が下されていますし、ファスト映画事件では、グループの1名が映画会社と1000万円を超える賠償金を支払う合意を結んでいます。
鬼滅の刃のグッズ等での摘発も続いていますが、報道ベースで見ても得た利益が100万円を超えたものばかりが摘発されているというわけでもありません。