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【第1回】著作権とは何を守るのか【著作権法をはじめからていねいに】


1 「はじめからていねいに」を初めから丁寧に

本日から、「著作権法をはじめからていねいに」と題して、著作権法のアレコレをnoteに書いていきたいと思います。

こういう企画を始めようと思った趣旨ですが、昨今、SNSやニュース報道のみならず、弊所で私が著作権の相談を受ける中でも、著作権についての基本的なところについて知りたいとのことでご相談を受ける機会が多くありました。
YouTube関係を始める際に、引用などについてご相談をいただくことも非常に多くありますが、クリエイティブな仕事をされている中でのトラブルケースもあるところ、これは著作権がかかわるものではないが、自称著作権のトラブルとなっているというケースも多くございました。

こういったエセ著作権と題する書籍もあるように、エセ著作権(著作権としての保護対象にあたらないもの)を主張してのトラブルも散見されます。なお、友利氏の別書籍「エセ商標権事件簿」も購入していますが、非常に面白く拝読させていただいています。

トラブルとなった場合、最終的には、法律的観点のみならず、道義的な観点などにも鑑みてトラブルにどう対応するかを決めていくところですが、法的な検討が抜け落ちたまま、焦りから対応方針を決めてしまうというものもあります。他者の権利を侵害し、損害を生むようなものであればさておき、法的な保護がされないものを数などの暴力で押しつぶすようなものは賛同できません。

そして、トラブルに見舞われた際に、インターネットでの検索で調べるということもあるかと思いますが、特に著作権については、不正確な記載も多くみられます。

特に、AIの話に際し、著作権法30条の4について話がSNSでは書かれますが、条文から違っていたりなど色々とあります。

そういったところもあり、弁護士としても10年目に差し掛かったところ、自身の理解するところを形とするべく、またある程度初心者(一般のクリエイティブにかかわる方)向けにまとめてみようと思った次第です。

ご参考としていただければ幸いです。

ちなみ、毎回の投稿は2000文字~3000文字くらいをイメージしていますが、ある程度、図なども出しながら、長々とならないよう、かみ砕きつつ書いていきたいと思います。それこそ、5,6分くらいでサクッと読めるくらいをイメージしてます。

なお、「はじめからていねい」と題したのは、私自身が高校~大学にかけて東進ハイスクールに在籍しており、そこで読んでいた書籍シリーズから流用させていただいています。いまだに喜久子姐さんの朗読覚えてるっていうね・・・

2 著作権法とは、何を守るための法律か。

さて、導入はこのくらいにして、初回を始めましょう。
法律は漫然とルールを作るものではないので、それぞれに目的があります。そういうわけでどの法律でも目的を見ることから始めましょう。

目的は、法律の最初に書かれていますので、著作権法の第1条を見てみましょう。

(目的)
第一条 この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=345AC0000000048

一部太字にしましたが、その周辺を抜き出してみると「公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利を保護する。このことをもって、文化の発展に寄与する」

つまり、最終目的が「文化の発展」なわけです。このあたりは他の知的財産の目的とは異なります。

特許法
(目的)

第一条 この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=334AC0000000121

意匠法
(目的)

第一条 この法律は、意匠の保護及び利用を図ることにより、意匠の創作を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=334AC0000000125

商標法
(目的)

第一条 この法律は、商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=334AC0000000127

上で見たように、知的財産基本法で挙げられている各法のうち、特許、意匠、商標は「産業の発達」に寄与することを目的としています。一方、著作権は文化の発展。根本から異なる立て付けになっているのがよくわかります。
(ちなみに、細かいので割愛しましたが、実用新案法、種苗法も同様に産業の発達が目的です。)

著作権法は、法律の目的からすれば「文化の発展」を目的にしているのであり、産業の発達、言うなればビジネスを主目的に置いていないわけです。とはいえ、昨今の著作権はAIもそうですが、産業に資するものもありますので、ビジネス視点が法律解釈において考えられることは十分あり得るところです(法律の目的のみを考えるわけではないので注意です。)。

3 目的をなぜ考えるのか

著作権が、何を守る法律なのかを見てきましたが、なぜそんなことに触れるのか。

トラブルに備えてあらかじめ法律を定めるというのは、なかなか難しいことです。それこそ、新しい技術、問題が出てきた時に対応するために後から作ることがままあります。

新しい問題が出てきて、ドンピシャな法律がない。そうなったとき、そこでこれまでにある法律に解釈を加えるするなどし、問題解決のルールを作れないかと考えるわけです。

え、ルールなんていらない?

そう思うかもしれませんが、ルールがなければ最終的には自力救済。力がものを言う社会。それでは公平でない。

ルールがあるから仕方ないね、と、ある意味説得する。そのツールとして、法律を用いると考えてもらうのが良いかなと思います。それこそ、裁判では、裁判官に対して、法律などをもとに「自身の主張が正しい」ので救済するように判決を出してもらうことを意図して、説得するわけです。交渉であれば、これは交渉相手を説得することになるわけです。

さて、初回はここまで。

次回は、著作権の源である「著作物」についてやっていきましょう。著作物にならないのであれば、著作権が生じません。なので、2回目にして超重要ポイントになります。

できれば10回~20回行かないくらいでまとめていきたいところですが、モチベーション維持のため、スキでしたりコメントなどいただけますと幸いです。

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