“シニアから若い世代まで気軽におせちを楽しんでもらいたい” 「ローソンストア100のオリジナルおせち」にかける想いとは?
ローソンストア100は、生鮮食品や日用雑貨を中心に価値あるリーズナブルな商品を取り揃え、様々なニーズに応じて進化してきた。ローソンストア100の年末の看板商品である「おせち」もその一つ。当初は100円でスタートしたが、今年はさらにお客さまに満足してもらうため、おせちに欠かせない定番商品が揃う100円、150円に加えて、新たに高級感を楽しめる200円、300円の注目食材を揃えた。おせちシリーズを手掛けるチームの近藤さん、宮永さん、三瓶さんに話を伺いました。
ローソンストア100 商品開発本部 本部長/ 近藤 正巳
1975年、愛知県生まれ。食品卸問屋、ベーカリーショップの開店・商品開発業務を経て、2005年に前身の生鮮コンビニである『株式会社九九プラス(現ローソンストア100)』で商品開発に携わる担当として経験を重ね、デイリー部長、副本部長を歴任し、現職に至る。日配食品や冷凍食品からデザートまで幅広い分野に精通した食品業界のプロフェッショナル。休日は話題の店に足を運び、一人で長蛇の列でも並んでチェックする。
ローソンストア100 デイリーユニット ユニットマネジャー/ 宮永 理恵
1974年、埼玉県生まれ。結婚・出産を経て、2004年に前身『株式会社九九プラス(現ローソンストア100)』にてパート勤務を開始。2014年に正社員へ。商品のデータ管理、契約書対応、商品企画サポートなど、約10年ほど多岐にわたるバックオフィス業務で活躍した後、商品部ベーカリー担当に。ベーカリー担当時代は、パンだけで年間300種類以上のアイデアを出し、うち100種の商品を発売した。今年9月からは、さらにおせちチームで手腕を振るう。
ローソンストア100 デイリーユニット マーチャンダイザー/ 三瓶 邦秋
1980年、埼玉県生まれ。飲食店で調理師の経験を重ねた後、2012年に前身『株式会社九九プラス(現ローソンストア100)』に入社し、店舗での店長経験を経て、生鮮サポートチームで各店舗への青果指導を担当。その後、商品部で青果や精肉、日配食品のマーチャンダイザーを歴任し、仕入れや販売計画、在庫管理、販促企画などの実務全般を担う。おせちチームでは近藤さんの右腕として活躍。私生活では4児のパパとして奮闘中。
全40種のうち34種が150円以下
蒲鉾シリーズは鯛入り、のどぐろ、ふぐなど高級食材入りも
── 去年までの100円、150円に加えて、200円、300円のラインナップが加わりました。とはいえ、全40種類のうち34品と多くが100円と150円という低価格に驚きました。あわびやふぐ蒲鉾も150円なんですね!
近藤:私は、2012年の発売時から携わってきたので、すごく感慨深いです。蒲鉾は、他にものどぐろ蒲鉾、2014年には鯛入りと様々なバリエーションも増えました。発売当初から取り扱っている紅白の蒲鉾も絶えずブラッシュアップしてきたので、発売時よりもさらに美味しくなっているんですよ。チームのみんなのおかげです。
三瓶:のどぐろの蒲鉾は、たまたま山口県のメーカーさんと別の案件で商談をしていた時に、会話の中から実現したのですが、いずれにせよ今まで定番の蒲鉾を近藤さんたちが作ってこられた素地があってこそです。近藤さんは入社して20年以上に渡って、食品関係のほぼ全域を網羅しているだけでなく、取引先企業の方々の家族構成を知っていたりするほど(笑)。本当に広く深く、業界に精通しているんです。
宮永:お正月用の蒲鉾って、ちょっと値段の張るものが多いですよね。でも、うちは味にもこだわりながら全部150円です。おせちの定番から高級食材まで揃えましたが、どれも少しずつ選べます。飽きてしまわないよう、毎年何かしら新しい気持ちが感じて頂けるようなラインナップを揃えていくことを心掛けています。
── そもそも、おせちを100円で販売しようと思った狙いはどういったものなのでしょうか?
宮永:高齢化や単身世帯の増加など、多様化するライフスタイルに対応するためです。通常のお重に入ったおせちだと、食べ切ることができなかったり、苦手な食材が入っていることがありますが、小分けで販売すれば、自分で好きな食材を買ってカスタマイズできます。そうした理由から、これまでに単身世帯やシニア世代に「少しずつ楽しめる」と好評いただいているのですが、これからはもっと自由に若い人たちにも気軽に楽しんでもらいたい思いがあります。おせちの可能性を広げていきたいですね。
近藤:実は、いま宮永さんが言ってくれたことは、このおせちシリーズのコンセプトそのままでもあるんです。我々ずっと「おせちは作る時代から買う時代に」ということを言ってきました。30代以下の若い人たちはおせちを食べる人は減少傾向なのですが、「伝統を守りながら、新しい世代の人たちにも楽しんでもらいたい」と考えています。
── 『ローソンストア100オリジナルおせち』は、2016年から売り上げが右肩上がりで、2020年からは一気に販売数も拡大しています。宮永さんのように、料理など家事を担うシーンが比較的多い女性の視点は、チームにとっても大きな力なのでは?
近藤:そうなんです。実は、最初に販売数が伸びた時も宮永さんが力になってくれたんです。彼女が正式におせちチームに加わる前のことですが、一度各商品をお重に詰めて見せてくれたんですね。それを見て初めて「こんなに立派なおせちが完成する!」と僕らも気づかされたんです。ここを原点として、詰める、盛り付けるという楽しさと合わせて発信しようと本格的な展開が始まりました。
宮永:ちょうど子どものお弁当を毎日詰めていた時でした(笑)。みんなで計算したら、合計2500円ぐらいで作れましたね。
三瓶:家で子育てもきちんとしながら、仕事でも結果を出すのは、本当にすごいことだと思います(しみじみと)。
低価格の実現は一番の課題
取引先と“困りごと”を見つけて解決へ
── お重などに盛り付けると、本当に豪華でお正月気分が上がりますね。しかし昨今は、物価高が続く厳しい経済状況です。これだけの商品を、どのように低価格で揃えられたのでしょうか?
宮永:そこは今も一番苦労しているところですが、例えば商品製造が少ない閑散期の工場を活用させてもらったりしています。そうすれば、工場側としても稼働できて売上げにもなるので、お互いWin-Winになるということで協力していただけています。
三瓶:価値ある価格を実現することは大変ですが、近藤さんはじめチームでいろんな取引先の皆さんと信頼関係が築けていて、社内のPRチームが頑張ってくれて、現場でたくさん販売していただいて⋯⋯という好循環が生まれています。できるだけコストを抑え商品化しなければならないのですが、おかげさまで取引先からも「これだけお客様に喜んでいただけるなら作りましょう」と仰っていただけます。また、大量発注・大量生産も低価格実現のベースになります。
近藤:新しいメーカー様と商談すると、最初はだいたい「お客様に届けたい気持ちは山々だけれど、コストが合わないですよ」と言われてしまいます。けれども、コストが下げられない要因も一緒に解決できることが少なくないんです。例えば、もし物流がネックだったら、うちの物流網と統合して効率化を図ることができます。また、原料が足りないとか余るという困りごとがあるのであれば、うちで取り扱う商品から繋げることも。いろんなところで点在している困りごとや課題を線にすることで、商品開発が成功することも少なくないですね。
── 皆さんの創意工夫と信頼関係あっての低価格実現なんですね。今年始まった200円の商品は、田作り、味付け数の子、豚角煮、ふかひれ煮こごりの4種のみ。数の子が200円というのも衝撃的です。
宮永:去年は150円だったのですが、ちょっとペラペラでおせちとしては存在感が薄くなっちゃうな……と改善することにしたんです。今年は、上位グレードのしっかりした食感の数の子です。
近藤:ペラペラ……とダメ出しされましたが、僕がめちゃくちゃ苦労して、試行錯誤して商品化したんですけどね(苦笑)。こうやって、どんどん僕を超えていってくれて、いい商品を生み出してくれているので、すごく嬉しいです。
三瓶:今回こうしてチームとして対応させていただいていますが、これまでは近藤さんと私と二人でそれぞれ動いていたものが、こうして宮永さんも加わってチームとして機能するようになった自負があります。だから今後は、おせちという枠を超えるかもしれませんし⋯⋯。
宮永:いやいや、おせちでしょ!(笑)
近藤:謎の爆弾発言(笑)
── チーム内の風通しの良さと関係性が伺えます(笑)。
三瓶:言いたかったのは、今後もっとチームで面白いことができる期待感があるということでした(笑)。おせちに違うバリエーションを加えることもできるなと考えているので、よりお客様に喜んでいただける商品を開発できるようチームで頑張っていきます。
取材・文/松山ようこ