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接客とは何かに向き合い続けて20年、見つけ出した答え

 全国にあるローソンのオーナー・クルーに、マチの魅力とご自身との関わりをインタビューする企画「#マチのほっとステーションをつくるひと」。
 
今回は、大分県中津市の中津丸山店の店長を務める麻生春香さんにインタビュー。各分野のスペシャリストクルー=ファンタジスタの中で、2021年に接客部門(ファンタジスタ制度は、接客・FF・マチカフェ・まちかど厨房の全4部門)全国1位に輝いた麻生さん。物心ついた時から接客と関わり続けていた麻生さんの、接客魂を伺うことができました。


接客一筋の道を決めた学生時代の経験

本日は、よろしくお願いします。麻生さんはローソンで働かれる前は、どのようなお仕事をしていたのですか?

 大分の別府で生まれ育ったのですが、その後、大分の旅行会社に就職して、バスガイドと添乗員をやっていました。

別府温泉のご案内役、みたいなお仕事ですか?

 それとは逆で、大分のお客様にさまざまな観光地をご案内するお仕事ですね。なので、大分を出発してから大分に帰ってくるまで、お客様を案内するようなことが仕事内容でした。その旅行会社に働き始めた時に、47都道府県を全部制覇したいという目標があって、それは達成させていただきました。

47都道府県制覇はすごいですね。もう一つの目標はどのようなものだったのですか?

 もう一つは、ガイド指名で一位を取る。というものでした。建設業みたいな会社さんだったり、趣味サークルの方だったりが主なお客様だったのですが、どのガイドがいいかというのを指名できる形になっていて。ドラマみたいな展開ですが、オフィスにホワイトボードに紙で作ったお花で指名数が貼り出されるんですよね(笑)。それで一番になりたいなっていうのが当初の目標で。それも達成して退職させていただきました。

最初から、そういった接客業には自信があったのですか?

 自信満々、という訳ではないのですが、両親の影響でいつも身近に感じてはいました。両親が別府で寿司割烹をやっているのですが、こどもの頃からその手伝いをしていたこともあり、社会人になる時に、ガイドならいけるんじゃないかって思って。小学校4年生くらいから、高校卒業するまでずっと手伝いをしていたので。

それは確かにすごいですね。大将の娘さんってなると、常連さんも可愛がってくれたりとか。

 小学生くらいの時は、もちろんそういう時期もありました。でも、高校生になって、見た目も大人になっていくとやっぱり「子供のお手伝い」では済まされないことも増えてきて。今まで許されていたことが許されなくなる、ということが増えたんですね。そこで接客の難しさみたいなのは痛感して。言葉選びや、相手に合わせたお話しの仕方、自分の立場にどういった接客が求められているかを、考えながら手伝ってきました。普通は、社会に出て初めてそういうことを学ぶんだろうと思いますし、社会にポンって出されたばかりではそういう判断が難しいと思うで、自分の中での1個の武器かなっていうのはありましたね。

なるほど。では、実家のお手伝いから旅行代理店を経て、ローソンに。という接客人生ですね。

 そんな大層なものではなくて(笑)。結婚して、旅行会社を退職して、夫の実家が近い中津に引っ越してきた時には、中津にまったく人脈もない状態だったのですが、中津で就職活動する間にお金が必要なので、ちょっとアルバイトしようかなっていう軽い感じでローソンに入りました。


大事なのは、土台をぶらさない強い気持ち

ローソンを選んだのは、接客の得意を活かそう。という考えがあってですか?

 本当にそこまで考えていなくて、知人の紹介で。当時、自分の中ではバスガイドが天職だと思っていて、自分がやりたい仕事をほんとにやってきたので、その次にしたい仕事なんていうのがほんとになかったんですよね。旅行系で探したのですが、中津はそういった仕事があまりなかったという状況だったので、そこで父の知人の方に薦めていただいたローソンにしようかなって。

 でも、実際にローソンで働き始めたら、それが本当に楽しくて。結局、就職活動はまったくと言っていいい程していないんですよね(笑)。結局、ローソンでもう6年くらい勤務して、今は店長です。

前職とローソンとの接客の共通点、違いがあれば伺ってもよいですか?

 まず一番の大きな違いで言うと、目に見える商品があるかないか、ですね。旅行商材は、景色や体験といったものですが、ローソンにお客様がお買い物に来られるのは「欲しい商品」「必要な商品」があるからで、決して接客を求めてご来店される訳ではないというところです。でも、やっぱり同じだと思うのは接客の力で、その商材・商品の魅力が大きく変わるのではないかというところですね。

 ローソンでも他のコンビニさんでもそうですけど、同じコーヒーを一杯買うのでも、接客が雑だとやっぱり味が落ちると思うんです。絶対に接客のいいクルーさんから買った方が美味しいんですよね。不思議なんですけど。商品だけに頼ってはいけないなと思いました。

ローソンの接客の特徴ってどういうところにあると思いますか?

 やっぱりマニュアルがあるところですね。前職では、全部自分が判断してっていう環境だったので、本当にありがたいです。教本もありますし、スーパーバイザーをはじめ、色々なことを教えていただける人がいるっていうのはすごく魅力だし。実は紹介してもらったのが、今、一緒にお話を聞いていただいているローソンのトレーナー(当時はスーパーバイザー)の糸永さんなのですが、糸永さんみたいな何でも聞ける、話せる人がお店と近い距離にいていただけるのは本当に心強いなって思います。

逆に、独自の接客を学んできた麻生さんから見て、ローソンの接客はマニュアル的すぎる、体系的すぎるなと思ったことはないですか?

 それはないです。やっぱり基本となる接客、ぶれない接客って大事だと思うので。その中で、お客さまに対して真摯に向き合うっていう基本を抑えて自分なりの接客がプラスアルファできれば、それが一番強い接客なんじゃないかなって。私はお客様にの立場を見て、接客のアプローチを変えるタイプなのですが、それも基本のマニュアルはしっかりとやって、それをアレンジする形です。例えばご年配の方であればゆっくり声のトーン低く落としてお話をするとか、お電話しながらレジに来られたときは、なるべく言葉を使わずジェスチャーでお伝えしたりとか。でも、基本の接客の土台はぶらさないぞっていうは、やっぱり大事なので。

 加えてさらにいい接客ができるようにするのは、やっぱりお客様への提案が大事だと思います。この商品が欲しいんですけどないですか?と聞かれて品切れの場合、大抵のお店では「今品切れ中です、申し訳ございません」とお伝えするに留まると思うんですね。でも、そのままお帰ししてしまうと、お客様もまた店舗を回らないといけなくって、どれだけ丁寧に頭下げても、お客さまの目的はかなってないじゃないですか。謝ってもらうことがお客さまのゴールではないので、次に入ってくる便を伝えた上で、お客様にご連絡しましょうか?と連絡先を聞いて。そこまでが私の接客です。ゴールに近づくために、なるべく提案をして、お客様が判断されやすくするのが大事だと思います。


接客の力を信じて、お客様と向き合い続けたい

そんな接客一筋の麻生さんにとって、ファンタジスタはどんな存在でしたか?

 もともとローソンに入った後に、「ここで続けていこう」と思ったのが、クルーランクアップ制度を知ったからなんですよね。レギュラークルーから、リーダークルー、ファンタジスタとランクアップしていくという仕組みに魅力を感じて。まずはリーダークルーを目標にしたのですが、2年程でリーダークルーにしていただくことが叶って、次はファンタジスタを目指そう。次は日本一を目指そうと順々に。
 
 決して驕っている訳ではないのですが、自分の接客に自信もありましたし「努力で日本一を目指す」ではなく、「日本一になる」「日本一になって、自分の接客が正しいということを証明したい」という気持ちの方が大きかったかもしれないですね。正直ほんとに接客業を取られたら私って何も残らないので、そこで自分がやってきたことが正しかったのかっていうことを証明したくて。

実際に、トップ・オブ・グランドファンタジスタになってみて、どうでしたか?

 一番大きいのは、自分の接客に自信がつきました。一位を取った後にお店のオーナーが代わり、店長になったのですが、そこでの育成の礎にもなりましたね。日本一を取ったからこそ耳は傾けてもらいやすくなりましたし、言葉に重みが出てきたと感じました。私が話して私が実践してそれを結構素直に受け止めてくれる方が多いので。

 一方で「接客日本一のクルーがいるお店」という看板をお店に飾らせてもらえるのですが、それで一層、気は引き締まりましたし、私だけの問題じゃないんだなっていう気持ちになりましたね。今までは、自分がいい接客をして、自分は誰にも負けないよっていうだけだったのですが、飾ることによって、お店全体に関わることになったんだなと実感しました。なので、周りに対しての育成の仕方とかこうなってほしいなとか、後輩のクルーさんと向き合う時間が増えて、周りを巻き込んで、いい接客のお店を作れてるかなっていうのはあります。

ちなみに、今は店長さんをされているということですが、当初の「接客日本一」の目標は達成されて、やり切ったみたいな気持ちはなかったんですか?

 最初はリーダークルーに、次はファンタジスタに、次は日本一に。というような感じで順々に目標を決めて取り組んでいるのですが、達成するとまた次の目標が生まれてきてしまうんですよね。今は、このお店を、グループの(同じオーナーさんが経営されている)お店で一番にしたいというのが目標です。

 正直、このお店は立地にあぐらをかけないお店なんですよ。大きな幹線道路の傍にある訳でもないし、市街地からも離れていて、施設もある訳じゃない。だからこそ、接客の力でどこまでお店が伸びるのかに挑戦してみたいという気持ちです。前のオーナーさんから、今のオーナーさんに経営が変わる時に、接客日本一の私に、思ったようにお店を作って欲しいと言われて。その期待に、どこまで応えられるか挑戦したいという気持ちで、日々頑張っています。

次々と新しい目標に向かって挑戦する姿が素敵ですね。

 私個人としては、ぶれない接客を続けていくということ、変わらないことが最大の目標なんですよね。
 
 時代も令和になって、世の中的にもどんどんセルフレジのような機械が登場して、接客に対しての付加価値が薄くなっているなっていうのを日常的に感じていて。接客はもうそんなに必要とされてないのかなって思うことがあります。でも、私がずっと素晴らしいと思っていた、お客様に対して真摯な気持ちで向き合い続けるという接客の力を信じていますし、どんな時代でもそれがすごく価値のあることだと示し続けることが、ずっと変わらない自分の中での目標ですね。

麻生さん、ありがとうございました。