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【街みちネット】糸魚川市駅北大火からの復興まちづくりの取り組み見学・交流会に参加してきました
はじめまして、ローローと申します。
学生時代は建築学部で都市の研究室に所属し、災害復興についての研究を行っていました。
UR都市機構様が行っている活動の「街みちネット」が開催している見学・交流会に参加して来ましたので、そのレポートをいたします。
微力ではありますが、災害復興と地方創生について興味を持っていただける方が1人でも増えれば幸いです。
2024年11月21日に開催された第34回見学・交流会は新潟県糸魚川市の駅直通施設のヒスイ王国館で行なわれ、2016年に糸魚川駅北で発生した大規模火災の復興について取り上げられました。
構成は、糸魚川市産業部都市政策課様による復興の施策について、株式会社イールー様による復興まちづくりの住民意識について、現地視察の3本となっておりました。
それぞれについてのご紹介と感想について述べさせていただきたいと思います。
1.糸魚川市駅北大火からの復興まちづくり
最初に糸魚川市から、糸魚川市の特性、大火の内容、復興施策についての行政の対応についてのご説明がありました。
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〇地勢
・新潟県の最西端
・富山県、長野県に隣接
・日本海から北アルプスまで豊かな自然資源
・市域の約9割が森林山野
・フォッサマグナの西縁となる糸魚川・静岡構造線の北端に位置
・面積:746.24㎢ (新潟県:12,584㎢)
〇人口(2024年4月1日現在)
・人口:38,419人 (男性:18,825人 女性:19,594人)
・世帯数:16,972世帯
・高齢化率:41.3%
糸魚川市駅北大火概要
〇2016年12月22日(木)10時20分ごろに発生し、翌23日(金)16時30分の鎮火に至るまでの約30時間続いた大規模災害
〇冬場としては珍しいフェーン現象で乾燥した南からの強風にあおられ、焼失範囲は約40,000㎡、火元から約300m離れた日本海沿岸まで燃え広がり、火災としては初めて災害救助法、被災者再建支援法(風害による)が適用
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震災に起因しない火災としては約40年ぶりの大規模市街地災害になりました。
強風による飛び火により延焼の範囲が広がり、被害増加につながりました。
火災としては初めての災害認定(風害)となりました。
糸魚川市が掲げた復興まちづくり計画の構成は以下の通りです。
目標 「カタイ絆で よみがえる 笑顔の街道 糸魚川」
3つの方針 目標を達成するために3つの方針を掲げ、復興まちづくりを推進
方針1 災害に強いまち
方針2 にぎわいのあるまち
方針3 住み続けられるまち
計画の詳細は糸魚川市ホームページに掲載されている以下の計画書をご覧ください。
https://www.city.itoigawa.lg.jp/hope/wp-content/uploads/plan2017_keikaku.pdf
ご紹介のため、一部抜粋させていただきます。
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市道の拡幅、防災広場の整備、建築物の不燃化助成など
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まちづくりを担う人材の育成、にぎわい創出広場や拠点施設の整備など
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まちの特徴である雁木の再生と集計事業、区画整理事業など
説明の中で何度も出てきたのは「地域住民との早期の対話」というワードでした。
市は発災直後から計23回の被災者説明会を行い、住民と行政で意見のすり合わせを早期に行っていました。
復興まちづくり計画ができるまでとにかく住民との対話を行い、住民が求めるものを具体的に案に落とし込むことができたことが、計画完了後に一斉に事業をスタートできたことがスピード復興の要因であったと説明がありました。
中でも驚いた話として、当時の市長がどの程度の復興なのかまだ見えていない状態で土地習得を行う判断をしたという点でした。
区画整理事業において行政による土地取得は必要ですが、住民の土地が一時的にでもなくなることにより人口の流出につながるという側面があります。
復興には区画整理が必要であるという市長の判断と、それをスムーズに行う為に市民と粘り強く対話を行い理解を得た市の対応は非常に素晴らしいといえます。
糸魚川市の復興事業が称賛されている理由は行政主導による市民のためのまちづくり計画・復興事業であったことがわかりました。
2.駅北広場キターレの役割について
先ほどが行政主導のハード面であり、ここからは復興した後の地域活性化という民間主導のソフト面になります。
登壇されたのは株式会社イールーの代表を務める糸魚川市出身の伊藤薫氏。
伊藤氏は海外での勤務経験を経た後に旅行業の起業し、旅行業のほか大火の災害復興アドバイザーとして糸魚川に携わっていたそうです。
当時の糸魚川は人口減少に悩んでいたところに火事によりさらに人口の流出が進んでいました。
糸魚川は街道が中心のまちであり、市民全員が訪れるようなランドマークやにぎわいの場が少ないという問題点がありました。
また、糸魚川には大学・専門学校がないため、高校卒業後に進学する人は市から出ざるを得ないという状況でした。
伊藤氏は復興に当たりこの2点に焦点を当て、駅前に市の中心となる施設づくり、Uターンや移住者へのアプローチを重視したまちづくりのご提案をされました。
復興まちづくり計画の中で核となる施設として建設されたのが「キターレ」です。
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キターレホームページ:https://www.kita-re.jp/
キターレは運営、交流・チャレンジ、伝承の3つが主な役割であり、建物もホール、エントランス、厨房・ダイニングの3つにゾーニングされています。
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天井はなく壁面もガラスのためかなりの解放感でした
ホールは机といすのある約115㎡のスペースで、ある日にはヨガ教室なども開かれているそうです。
私が訪れた際には高校生が勉強したり、小学生が外のスペースで縄跳びをしたりと、地域の方が訪れる場として機能していると感じられました。
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エントランスは壁面に大火のパネルが張られ、中央に雑誌や文庫のコーナーがある約60㎡ほどの空間でした。
災害復興まちづくり計画の視察研修プログラムもこちらで行われており、他の行政の方などが多く訪れているそうです。
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厨房は3つに分けれれています
厨房・ダイニングは3つのキッチンスペースと共用のダイニングが併設された約100㎡のスペースで、キターレが持つ役割の目玉だと感じました。
1時間、1日、1か月単位で借りることができ、ホームパーティとしての利用のほか、飲食店スタートアップの場として活用されています。
飲食店を開く前に地域の方に名前と味を覚えてもらってから本格的に店を開くことができ、Uターンや移住者の増加に一役買うシステムになっています。
また、隣のスペースで営業する人ともつながりを持つことができ、さらに輪が広がるという地域活性の核になっていると感じました。
キターレは現在IUターン者によって運営されており、伊藤氏は駅を中心として更なる市内の発展に尽力されているそうです。
大火前の糸魚川は街路に沿った線的な都市構成でそれぞれの区画が独立しているようになっていましたが、キターレの誕生とキターレ出身者による事業者のつながりによって面的な都市構成に変わりつつあるのではないかと思います。
個人的に印象に残ったのは18歳で大半の人がまちを出るということでした。
東京や大阪に進学した方が戻ってくることは少なく、また戻りたいと思っても仕事がないため戻れないという問題点を持っていました。
そこに対して「戻ってきやすくする」というアプローチを仕掛け、Uターンだけでなく移住者も受け入れやすい体制を整えたうえで災害復興に寄与する計画に非常に感銘を受けました。
多くの地方都市は同じ悩みを抱えている現状があり、糸魚川市が参考にされている理由もよくわかりました。
「出て行かなくてもよいようにする」には教育機関や企業の誘致が必要になってくるのでしょうか。
今後の糸魚川氏の発展に期待と注目をしたいと思います。
3.現地視察
火災を受けた駅周辺について現地を見て感じた点について述べていきます。
・街路について
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低層の建物が多く見晴らしがとても良いです
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こどもやお年寄りでも使える仕様になっているそうです
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街全体の調和が生まれています
・駅北復興住宅
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スプリンクラーなどの防火設備や交流スペース、訪問診療所が併設されています
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東側(写真中央)はテラスとしても利用できるよう現代風にアレンジ
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建材には糸魚川市の木材が使用されています
・キターレ
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下には巨大な防火水槽があります。
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エントランスにはマンホールがあります
以上が見学会参加のレポートになります。
いかがでしたでしょうか。
比較的新しく災害を受けたまちで、災害復興とその後を見据えたまちづくりの現場を現地で観ることができ、非常に勉強になりました。
行政主導の都市計画や官民一体のまちづくりといった、復興だけでなく地方創生において非常に参考になる事例だと感じました。
更なる発展に向けては、教育・労働施設の整備による人口流出阻止や移住者の定住化などの課題があるかと思いますが、糸魚川市の持つ魅力を前面に押し出せばそう難しいことではないのではないかと思います。
そして何よりまちがとてもきれいでした・・・!
開けた道から見える海・山・空はとても雄大でここで生活したいと思う型が多いのも納得でした。
この記事を読んで災害復興および糸魚川市に興味を持っていただいた方が一人でも増えれば幸いです。
では。
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