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51%の偽善と49%の露悪

昨日の『BSフジ プライムニュース』が見ごたえがあり、面白かった。

「ウクライナ侵攻の本質」をテーマに浅田彰氏と先崎彰容氏がゲストで、思想の専門家による議論が、他のニュース番組でコメンテーターが自分の主張だけ大声でするのとは違い、興味深かった。

「ウクライナ侵攻の根底には1917年のロシア革命に始まるユーラシア主義がある」というロシア(プーチン)側の世界観や、「冷戦の終わり方を誤ったことがストロングマン(プーチン)を招いた」という話は「なるほど」と思ったし、「橋下徹はコメディ」というのは面白かった。

一番興味を惹かれたのが、多少のヒートアップを見せた「偽善」と「露悪」についてだった。

「偽善は重要」「偽善を手放した途端、文明は終わる」ということを前提に、自由と民主主義は「51%の偽善と49%の露悪というギリギリのところでバランスを保っている」とし、左派思考の浅田彰氏が「51%の偽善を守るために憲法9条は死守」、右派思考の先崎彰容氏は「偽善と露悪の差が2%しかないことを担保するための憲法9条なら必要(憲法9条という偽善に100%軸足を置いているならば危険)」というのが、右派と左派の思考の違いが発露されていて興味深かった。

また両者とも、感情的な議論によって露悪が偽善を凌駕することの危険性を指摘している点は、同意を感じた。

建前(偽善)ではなく、大きな声のわかりやすい本音(露悪)に皆がなびいていくことの危険。それがポピュリズムにつながるし、全体主義へつながる。わかりやすい本音(露悪)だけを聞くことは、浅田彰著『逃走論』風にいえば「パラノ」にとどまり「スキゾ」になり得ない。つまり、多面的思考を持つことの妨げになる。

何でもかんでも善と悪の二元論にするのは誤った結論を導く。すべてを感情的に美談にするのも危険だし、すべてを感情的に悪行にするのも危険である。

大きな声で感情的に議論するのではなく、多面的な情報収集と情報分析、そこからの冷静な考察が重要で、ウクライナ情勢を機に必要なのは、先崎彰容氏がいうように、

「Twitterで議論するより座禅しろ」

である。「座禅しろ」はつまり「自問自答しろ」であり「国防について具体的に徹底して議論しろ」である。

ウクライナ情勢を機に、憲法9条や核シェアリングについて声高に空虚な議論をするのも、それに乗っかるのもナンセンスで、今はそんなことを議論している時ではないと思っている。

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