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RSD(CRPS)で後遺障害認定を受けるために必要なこと|交通事故

交通事故で治療を続けた後も痛み(疼痛)が残ってしまう方は少なくありません。
その症状は、CRPS(複合性局所疼痛症候群)として重度後遺障害(7級、9級、12級)として評価・賠償を受けられる可能性があります。

CRPS、RSDとは

診断基準

RSD(CRPS)(以下単に「RSDJという)は、疼痛、腫脹、関節拘縮、皮膚変化を主な症状とする外傷後の疼痛であり、主要な末梢神経の損傷がない点で、カウザルギー(主要な神経損傷を伴う疼痛として自賠責保険でも従来から「特殊な性状の疼痛Jとして認められていたもの)と区別されます。交感神経の異常克進が原因で末梢の血流が阻害され、組織が萎縮して疼痛が発生すると考えられて、反射性交感神経性萎縮症(Reflex Sympathetic Dystrophy(RSD))と名付けられました。
診断基準は、2005年の国際疼痛学会の新診断基準や、日本国内の日本版CRPS判定指標などがあります。
これらの医療分野の診断基準は、骨の萎縮を要件としない点で一致しています。

診断基準は、骨萎縮を必須としていません。

自賠責保険の認定基準

自賠責保険のRSDの認定基準は、

①関節拘縮
②骨の萎縮
③皮膚の変化(皮膚温の変化、皮膚の萎縮)

神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準関係資料 (mhlw.go.jp)

という慢性期の主要な3つのいずれの症状が、健側と比較して明らかに認められる場合とされています。

自賠責保険の認定基準は厳格です。

賠償、裁判での取扱

認定に必要な3要件

最近の裁判例は、骨の萎縮等の所見を重視し、骨の萎縮を含む自賠責保険の認定基準の全ての要件を満たさない限りRSDを否定する裁判例が大勢です。
例えば、骨の萎縮の所見が認められない場合でも緩やかにRSDを認定するような裁判例はあまり見られません。
賠償、裁判でRSDによる等級認定を得るためには
①関節拘縮
②骨の萎縮
③皮膚の変化(皮膚温の変化、皮膚の萎縮)
が基本的に必要と言って良いでしょう。

3要件|必要な証拠

①関節拘縮:後遺障害診断書
②骨萎縮:XP
③皮膚変化:写真、サーモグラフィ
これらが基本的な証拠となります。
また、これらの基本的な証拠が本当に事故による症状を示したものか(他の原因で発症していないか)を判断するために、診断書や診療録から認められる治療経緯・内容や投薬内容も当然重要な証拠です。

骨萎縮があるかはXP(レントゲン写真)が重視されます。

後遺障害認定された場合の賠償

慰謝料

後遺障害が認定された場合は等級に応じた慰謝料が支払われます。

7級:1000万円
9級: 690万円
12級:290万円

日弁連交通事故相談センター東京支部「損害賠償額算定基準」2024年版

逸失利益

後遺障害による経済的損害が現在価値に引き直して支払われます。

7級: 約8200万円(56%喪失)
9級: 約5131万円(35%喪失)
12級:約2052万円(14%喪失)

日弁連交通事故相談センター東京支部「損害賠償額算定基準」2024年版
男性事故前年収800万円・40歳・喪失期間27年として算定

仮に後遺障害が認定されなければ、後遺障害慰謝料も逸失利益も認められません。後遺障害認定を受けると、賠償金額に大きな差が生まれるのです。

後遺障害認定により賠償額が大きく増加します。

後遺障害認定されなかったとき

神経症状として評価される可能性

自賠責保険の認定基準を厳格に適用してRSDを否定する裁判例の中には、局部の神経症状として後遺障害等級表14級を認めるものも少なくありません。その場合、14級のむち打ち症状の事案と異なり、労働能力喪失期間を5年に限定しないものもあります。
また、自賠責保険の認定基準によりRSDの発症を否定しつつ、12級以上の後遺障害を認める裁判例もあります。

12級の認定を受けるために必要なこと

神経症状が12級の認定を受けるのは、いわゆる他覚的所見を伴う「頑固な神経症状を残すもの」に該当する場合です。
他覚的所見があるかの判断では、次のような事情・証拠が考慮されます。

①受傷内容:神経損傷を生じさせるような衝撃や骨折・脱臼等の外傷が生じていたか
②症状は慢性的なものか
③外部から見た異変(膨張、むくみ、発赤、その他外変等)はあるか
④可動域の制限はあるか及びその推移
⑤疼痛等の症状に対し施行された治療内容、症状軽減の有無・程度
⑥主治医の所見

神戸地判令和3年6月25日判決・判例時報2518号101頁参照

認定・証明のために必要なこと

証拠収集

前提として、①関節拘縮、②骨の萎縮、③皮膚の変化(皮膚温の変化、皮膚の萎縮)を示す証拠を収集することが必要です。
しかし、治療が進んだ慢性期からの準備では間に合わないこともあります。
例えば、①の関節拘縮があるか、特に事故後に関節拘縮が生じているかは、事故直後から一定の頻度で関節可動域を正しく測定し記録化しておく必要があります。

的確な説明

さらに、医療面で証拠が残っていたとしても、必要な証拠を漏れなく自賠責や裁判所に提出すること、膨大な医療証拠の中から重要な情報を抜き出して説明を加えることも必要です。
この作業は簡単には行うことができず、裁判所や自賠責の考え方を踏まえた準備・説明が不可欠です。

最後に

弁護士法人オリオン法律事務所は、複数拠点に事務所を設け、CRPSやその他の神経症状を感じておられる多くの交通事故被害者の方から多くの相談をいただいております。

ご来所、電話、LINE、メール、WEB通話など、いろいろな方法で相談を承っております。どうぞお気軽にご相談ください。