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民法第3条1項「私権の享有は、出生に始まる。」&「千里の行も足下に始まる」

第3条1項  私権の享有は、出生に始まる。

第3条1項の文末「~に始まる。」は、文語的な古い表現です。
助詞「に」は、起点を表わします。助詞「から」も、起点を表わします。
助詞「に」を、助詞「から」に言い換えることができます。
 
念のため、国語辞典・漢和辞典・古語辞典で格助詞「に」について
調べてみました。
国語辞典には、[助詞「に」は、起点を表わす]という説明はありませんでした。
 
う~ん、でも、こんな漢文読み下し文があります。
中国語の原文  千里之行, 始于足下
漢文読み下し  千里の行も足下始まる
読み方     せんりのこうもそっかはじまる
意味  どんな遠大な事業も手近なところから始まるというたとえ。
※コトバンクから引用しました。老子の名言だそうです。
 
漢文読み下し文では、起点を示す助詞として、助詞「に」を使っています。
ネットで検索すると、助詞「より」を送りがなとして使っていることも多いです。
 
漢文読み下し文1 千里の行も足下始まる
漢文読み下し文2 千里の行も足下より始まる
 
さらに、この漢文読み下し文の意味を現代語で説明するときには、
起点を示す助詞として、助詞「から」を使っています。
意味 どんな遠大な事業も手近なところから始まるというたとえ。
 
起点を示す助詞は、3つあります。助詞「に」、助詞「より」、助詞「から」の3つです。
1.助詞「」  ←一番古い。
2.助詞「より」 ←やや新しい
3.助詞「から」 ←もっとも新しい。
このような変化があるのだと思います。
 
明治時代に民法の条文を作った人々は、漢文読み下し文に慣れていました。
そのような人々が、民法第3条1項「私権の享有は、出生始まる。」を
作るときに、起点を示す助詞として助詞「」を使ったのだと思います。
 
というわけで、
明治時代に作られた民法第3条1項の助詞「」を、助詞「より」や助詞「から」に変えて、民法第3条1項を改造してみました。
 
民法第3条1項     私権の享有は、出生始まる。
民法第3条1項改造1  私権の享有は、出生より始まる。
民法第3条1項改造2  私権の享有は、出生から始まる。
改造2が最も分かりやすいと思います。

※追加です※
かつて、石原慎太郎氏が衆議院予算委員会で憲法前文の改正を訴えたことがあります。
『平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して』を引用して、
『信義に』の『に』なる助詞はどう見てもおかしい、正しくは「信義『を』信頼…」だ。
 
ネットでいろいろ調べてみると、
昔々、目的語を示す助詞として、助詞「に」を使ったこともあったそうです。
昭和21年当時の役人は、日本国憲法前文の英文を日本語に訳す時に、
目的語を示す助詞として、助詞「に」を使ったのでしょう。
助詞の感覚は、世代によって変わります。

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