スーパーバイザーの苦情対応・コールセンター就業のススメ

コールセンターにおけるスーパーバイザーの重要な仕事のひとつに苦情対応があります。厳密なことをいえば、クレームと苦情は異なる意味をもつのですがここでは説明の便宜上、同義として扱います。

コールセンターの最前線ではオペレータの皆さんが問い合わせ業務に従事してくれています。通常対応として問い合わせに関する業務を遂行してくれているのですが、なかにはミスや提供サービスに関する理由で苦情となる場合があります。初期対応としてオペレータが説明のうえ納得いただけるよう尽力しますが、それでも苦言を呈されて上司に対応を替われと要望されます。「上司を出せっ」という意味です。

この上司を出せと言われる理由は、大きく言えば2パターンです。ひとつは社としての対応や仕様に納得いかないので責任ある立場の人間と話して交渉したい。もうひとつは出来ないことはわかったがオペレータの対応に不満があり上司に文句を言いたいという意味。スーパーバイザーはいずれかのパターンであることを想定して苦情に対処するのです。

苦情対応に関して言えば、前者の方が手強いです。後者の場合はオペレータの不満をお聞きして然るべき対応を約束すれば早く終結します。

なぜ、前者は手強いのか?
そもそも社としての対応や仕様に納得がいかないということについて、オペレータではなくその上司へ交渉を持ちかけてくる問い合わせ者は、知能が高くないとそのような行動はとらないからです。一般的な人(オペレータ)のIQが100前後だとすれば、上司指定の交渉を希望してくる問い合わせ者は110から120前後のIQの持ち主です。

とすれば、そもそもオペレータでは歯が立ちませんし、場数を踏んで鍛え上げられた比較的IQが高いスーパーバイザーでなければ太刀打ちができません。集団のなかでリーダーシップを発揮して牽引役となるような人物はおおよそ110から120前後のIQの持ち主です。また、そう言った人物をスーパーバイザーに任命していなければセンター運営自体がうまくいっていないはずです。

センター運営は、事後対応、事前予防などいくつかのビジネスライフサイクルを経て、螺旋状にレベルアップしてくいくものです。センター運営がレベルアップしていくと問い合わせ内容もレベルアップする法則があります(詳しくは別の機会に述べます)。そうなれば問い合わせ件数は低くなり、難しい問い合わせが入ることが多くなります。そして、手強い苦情対応も増えていくこととなります。その際に白羽の矢がたつのは言うまでもなくスーパーバイザーなのです。

スーパーバイザーが従事する苦情対応は、まさに心理戦であり高度な折衝能力を求められる場面も多いです。ましてや相手の表情がみえないなかでの対応となりますので、神経を集中させて想像力を働かせながら言葉を選び、納得感を導いていかねばなりません。真の苦情は、感情を受け止めることだけではありません。感情だけなら15分あれば収まります。冷静かつ賢い問い合わせ者はいます。

2017年にオックスフォードのマイケル・オズボーン教授が「未来のスキル」という論文で、2030年に必要とされるスキル等をランキング形式で発表して話題となりました。必要とされるスキルの第二位は雇用との相関で0.613だった「心理学」です。わたしは苦情対応は心理戦だと言いました。もちろんコールセンターでの対応は戦いではありませんが、問い合わせ者の感情や考え・要望に応えていくには「心理学」の知識はとても大切なものといえます。

コールセンターは実践知の宝庫であります。苦情対応のノウハウを単なる場数として捉えるだけでなく、哲学的に学術的に捉えなおすことでスーパーバイザーの仕事の面白さや苦情対応の奥深さを感じられるはずです。

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