女として見られたくないのに、女として見られたことがないことに傷つき続けている
私は、これまで彼氏がいたことがない、処女の、アラサーの女である。
昨年、「将来一緒に住もうね」と10年近く誓い合っていた女友達と、縁が切れた。
きっかけは、その友達が彼氏を作ったことだった。
お互いにこれまでの人生に彼氏がいたことがなく、また男嫌いであったため、その友達から最初に「気になっている人と付き合うことになった」と聞いた時、「付き合う」に「異性と交際する」以外の意味があるんじゃないかと思った。それほど信じられないことであった。
何年も何年もかけて育んできた女の友情でも、ぽっと出の男には敵わない。「男が嫌い」と言っていた以前の彼女からは考えられないくらい、彼氏について惚気る友達を見て、痛感した。将来一緒に住もうと何度も言い交わしてきたが、私という「女友達」と一緒に住む未来がくることは絶対にないだろう、ということも。
ずっと唯一無二の心から分かり合えている親友だと思ってきたが、自分が彼女の中で一番ではなくなったのを目の当たりし、彼女に対してしらけた気持ちになった。(我ながら幼稚だなとも思う。)そして、向こうもわたしに対して同じように思っているのも感じた。
繋がっていたSNSの鍵アカウントを向こうが先に削除し、追ってわたしも削除した。はっきり「もう絶交!」と言ったわけではないが、これがアンサーだろう。
わたしは今なお彼氏がいないし、今のところ作りたいとも思っていない。
けれど、この一件で、自分が実は「彼氏がいたことがない」ということにデカいコンプレックスを抱いているということを、めちゃくちゃ自覚させられてしまった。
自分が男から女として見られることにひどく抵抗があり、男に触られたり裸を見られたりなんて考えるだけで気持ち悪くてたまらない一方、誰にも愛されたことがなく、「女」として受け入れられたことがないという事実が自尊心を深く傷つけてもいる。
健康診断の時、子宮頸がんをやるかどうかの問診票で性交経験「なし」にまるをつけて提出する時、毎回「自分は女として価値がありません」と自己紹介しているような気持ちになる。
自分から男を避け、男女の仲になることを避け続けて生きているにもかかわらず、だ。
私はどうしたいのだろうか。どうなりたいのだろうか。自分でもわからないままである。
男が嫌いであるにもかかわらず、私は男性アイドルのオタクである。
コンサートに行く前には、新しい服を買い、美容院へ行き、ネイルを変え、万全の状態で現場に臨む。
推しに恋愛感情を抱いている、いわゆる「リアコ」ではないし、ガチガチに同担拒否というわけでもない。けれど、同担に対してうっすら対抗意識を抱いてしまっているのを否めないし、自分より可愛いオタクを見ると落ち込む。
現場に行くためのおしゃれは9割が自己満だが、たとえ記憶に残らなくとも、推しの視界の片隅に映る自分が見窄らしいのは耐えられない、もし1ミリでも視界に入るのなら、どうせなら可愛く映って欲しい、という思いも正直超ある。てか、もらえるものなら全然ファンサとかほしいし…。
自分で気づいていないだけで、これは恋心の一種なのだろうか。アイドル自身と付き合いたいとか、付き合えると思っているとかではないが、心の奥底では推しを通して疑似恋愛をしているのだろうか。
以前、マツコが何かの番組で「女が見た目を気にするようになる原因は100%男」みたいなこと(大うろ覚え)を言っているのがバズっているのを見て、確かにねと思った。
わたしは普段から服やメイクにもこだわったり、ちょっとした美容医療に加点したりと、美容にまあまあ精を出している方だと思う。
美容にこだわる一番の目的は自分の気分を上げるためであるが、深層心理に「女として美しくありたい」という気持ちがあることも自覚している。
高校の時、女子校に通っていた時には(若かったのもあるだろうけど)、今ほど自分の見た目に固執してはいなかったように思う。
自分の見た目にバリ執着しだすようになったのは、大学生になり、男性アイドルにハマり出してからのような気がする。
それまで私は主に二次元が好きで、しかも主に男性ではなく女性キャラが好きだった。
男性アイドルを好きになり、コンサートなどの現場に行くようになってから、周りのオタクに引けをとりたくないという思いが強くなったように思う。
また、女の子のキャラやアイドルを好きだった時よりもお金を使ってのめり込んだ。
別に常日頃から推しの視界に入りたいとか、「推しから見た自分」を意識しているわけではない。
けれど、なんというか大枠で見て「好きな男を見にきている大多数の女」の中で、「抜きん出て可愛い存在でありたい」とか、「美しさで他の子に負けたくない」と思ったのは確かである。
推しがもし女であったら、おそらくここまで強くこの気持ちが生じることはなかったような気がする。
先日会った友達が、「これまでそこまで彼氏を欲しいと思っていなかったが、一人暮らしをするようになってから欲しいと思うようになった」と言っていた。
また、彼氏と同棲している別の友達と話した際、「コンプレックスやこんなの見せて大丈夫かなと思うことはたくさんあるけど、案外大丈夫だし、それを受け入れてもらうことで自己肯定感も上がる」と言っていた。
生活の変化や、異性との交流を通じて初めて、これまでなかった感情が生じることがあるのだなと、彼女たちの話を聞きながら思った。
最初に述べた縁の切れた友達も、これまで男が嫌いだと思っていたけど、彼氏という自分を愛してくれるひとりの男ができて初めて、彼女自身も思いもよらなかった感情の変化がいろいろあったのだろうなと、今になって思う。
私も、彼氏を作ってみたら何か変わるのだろうか。
自意識やコンプレックスを拗らせまくりのわたしは、誰かに自分を曝け出し委ねるなんてこと考えられないのだが、受け入れてくれる人と付き合ってみれば、逆に和らぐものなのだろうか。
それでも今はまだ、わたしは新たな感情を知りたいよりも、異性と関わることへの不安が優ったままである。
一緒に住む約束をしていた友達を失った今、将来は一人、即身仏になる予定です。