サブカル演奏会は同人誌となっていくのか?~これからの演奏会の形を考える~

久々の投稿です。

昨年12月に2つのサブカル演奏会があり、その主催の方が偶然にも同じ趣旨の発言をしており、そこから今後のサブカル演奏会の展望を考えていこう、といったような趣旨の話です。

先に自己紹介をしておきますと、ゲーム系吹奏楽団の団長兼ホルン吹きと、ゲーム系合唱団のソプラノを担当しております、lavと申します。極稀にSSを書きますが、合同誌しか経験はありません。冬コミは3日行きました。若干酒が入った状態で書いています。乱文ご容赦ください。

1.サブカル演奏会とは?

知らない方もいるかもしれないので最初に説明しますと、「アニメ・ゲームなどのサブカルチャーに使用されている楽曲を、楽器や声を使って演奏する演奏会」です。
ネットで流行ったネタもこの範疇に含まれるでしょうか。

大まかに、1つの団体で何度も演奏会を行う常設型と、1つの演奏会を行うために団体を作り、終了とともに解散する単発型に分けられます。
後者を企画型と言うことも多いですね。

2.演奏会①:オディオーケストラ

まず1つ目の演奏会の話を。12/14に行われました、オディオーケストラ(以下オディオケ)さん。
スーパーファミコンソフト「ライブ・ア・ライブ」楽曲をオーケストラアレンジして演奏する企画型団体です。

私自身、「ライブ・ア・ライブ」が大好きで、たまたま主催の方と知り合う場面があったためお伝えしたところお誘いを受け、仕事と演奏会スタッフの合間でしたが行くことを決めました。(結局仕事で最初からは聴けなかったのですが…)

行ってみて思ったのは、従来のゲーム音楽演奏会とはだいぶ違うことをやっているなと。
私自身、最近は自団体や仕事で忙しく、ゲーム音楽演奏会にほとんど行けてないのですが、従来のそれらのイメージは、ゲーム音楽を原曲通りなぞること、お客様にゲームの追体験をしてもらい、そこで感動を与えるというのがセオリーであるように感じていました。
しかし、オディオケさんは2つの点でこれまでの演奏会であまり見られない試みをされていました。
1つ目は、原曲に使用された楽器を忠実に使用し、その演奏をオーケストラの形態の中でうまく成り立たせること。この点も凄いですし編曲の妙だと思うのですが、今回の主題とは離れるので割愛します。
2つ目、これが今回の主題なのですが、原曲をなぞらず、キャラの心情や物語を考え抜いた上で大胆なアレンジを加えていること。
一番それが如実に現れていたのはなんといっても中世編、その中でも(一度目の)MEGALOMANIAでしょう。
パンフレット、また編曲者のダギさんのツイートにもその思惑は詳細に記載されていますが、崩壊していくオルステッドの心情を表すため、原曲にはない不協和音を多様した場面です。
それ以外にも、ラスボス戦の曲の中に主人公たちのテーマを差し込み、ついラスボス側に心情移入しそうなところを「主人公たちの戦い」に戻してくれたりと、語るポイントは尽きないのですが、文字数が足りないので先に進みます。

3.演奏会②:幻宴Project「幻想郷を彩る神々と仏の世界」

オディオケの翌日、PC弾幕シューティングゲーム「東方Project」シリーズ(厳密にはシリーズと呼んじゃいけないんでしたっけ?)の楽曲を演奏する、「幻宴Project」という団体の、「幻想郷を彩る神々と仏の世界」という演奏会が行われました。
私は演奏会スタッフだったのですが、ホール内案内担当ということで幸運にも演奏を端の方で聴くことが出来ました。

東方Projectというのはゲーム音楽の中で少し異端な位置にあり、製作者が二次創作を容認していること、動画サイトなどで二次創作楽曲が大流行し、現在でも活発に楽曲の二次創作が行われていることから、これまでの東方Project楽曲を演奏してきた演奏会でも、原曲やゲームの再現という部分はあまり重視されず、編曲者の音楽性、個性がより強く出る傾向がありました。
前述の通り、これまでのゲーム音楽演奏会ではオリジナルの再現が重視されていたため、これらの傾向は東方系演奏会の特色でした。

幻宴Projectの主催(パンフレットには主催と書いてないけど、認識として間違っていないはず)である指揮者兼編曲者兼諸々の白鷺ゆっきーさんもまた幻宴Project、またその事実上の前身である針の音楽でも、物語性と日本らしさの高い編曲をされてきていました。
パンフレットにも楽曲の解説ではなく、その曲の原作が持つ背景が書かれています。また、カラーイラストがほぼ全ページと同人誌レベルのパンフレットもツイッターで話題になりました。

4.ようやく本題

タイトルと話の流れでおおよそ察されたかと思いますが、この2演奏会の主催の方がされた同じ趣旨の発言。

「この演奏会は同人誌である」

オディオケの方はツイッターでそれらしき発言を見つけ、また幻宴の方は指揮者挨拶でそのような話があり。
奇しくも2日連続で同じ話を見つけ、面白いと思って考察しようと思い早半月。お正月の暇に任せて書いております。

発言の意図としては、どちらも「自分がその作品をなぞる一次創作的な楽曲ではなく、自分がその作品を愛し解釈し再構成する、二次創作的なアプローチをとった」ということかと思います。
ゆっきーさんの場合は、プロジェクターでイラストを投影したり、パンフレットにイラストを描いてもらうといった、実際に合同誌に近い面も含めての発言かもしれません。

結論から言います。だいぶ長くなったので。

この先、ゲーム音楽演奏会は「原作再現型」から「同人誌型」にシフトしていくでしょう。
先に書きます。決して原作再現型が劣っているとは思いません。むしろ、お客様側の需要はまだ十分に存在していると思います。
最大の要因は、ゲーム音楽演奏会自体の増加です。黎明期は、メジャータイトルの演奏会が主でした。そこから、企画型演奏会の増加により、様々なタイトルの楽曲が演奏されるようになりました。常設型団体も例外ではありません。回数を重ねるに従い、これまでやってこなかった楽曲をやりたくなるのはオタクの常でしょう。
かくして、楽曲の幅が広がりました。次に開拓されるのは、演奏会自体の幅でしょう。
この動きはもちろんこの2団体に始まったことではないでしょう。私の知る限りでも、10/27に行われたオニオン弦楽合奏団さんの演奏会で、マザーとアンダーテールの2作品から共通するテーマ(ヒーロー、雪など)で楽曲を編曲するというプログラムがあったそうです(残念ながらフロアスタッフしてたので演奏自体は聴けませんでした…)。
こちら編曲されている大澤久さんも、あちこちで名前をお見かけする限り、二次創作的な、楽曲を再構成するような編曲をされているような印象です。

5.そろそろ締め

特定作品のみを対象とする演奏会にとって、同人誌型アプローチは適しており、この先も増えていくと予想されます。
一方、特に常設型団体に多いですが、特定作品に絞られない、アニメのみ、ゲームのみ、サブカル全般を扱う団体の場合、ややこの方向には進みにくいのかな?という印象があります(団員それぞれやりたい作品が別にあるだろうので…)。いや、編曲者がやれば出来るか…。ただ演奏会企画立てる上でやりにくそうな印象。原作知らない人もいるだろうし。
そのような団体で、今後どのような変化、進化が見られるのかといった辺りも興味深いところであります。
どのような形であれ、この界隈が今年も盛り上がっていけば良いな、という言葉で締めさせていただきます。

6.免責事項

先に書きました通り、私はゲーム音楽メインで活動していますので、アニメ側などではまた別の動きがあるかもしれません。合唱で多い非アニメ、ゲーム系の動きまでは触れられていません。そもそもそんな古参でも無いので黎明期とか言ってるの大嘘かもしれません(2014年くらいの記憶で書いてる)。そもそもそんな何十回も演奏会通えてるわけでもないし。酔っ払いの戯言と流していただければ幸いです。

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