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青の記録(第八章)

TEEN'S MUSIC FESTIVAL

毎年夏頃に開催される10代限定の音楽コンテスト。

バンド、ソロ、弾き語り、形態はどんな形でも可。オリジナル、コピー問わずに参加可。という広く参加者を募る、いわば軽音楽部の甲子園と言える。

部室にもポスターが貼ってあったが、あまり意識せずに過ごしていた。
ネットもそんなに普及していない時代なので、どういうコンテストかも理解していなかったが、当時はもう八方塞がりの状態で、イベントだったら何でもいいと思っていたので、よく内容が分かっていなかったが参加することにした。

地区予選みたいなものがあり、まずはそれに参加することになった。

会場はどこかの割と広めのホールだったことは覚えている。

今回は当然、バンドなど組める様な状況でもなく、ましてやユニットでもない完全に1人のソロとして出場した。

形態はアコギ弾き語り。

尾崎豊とゆずのコピーをやることにした。

前回のライブの反省を踏まえて、今回はキーに余裕のある楽曲を選定した。その代わりにギターがちょっと難しいものになってしまった。

二年生が部室を使える日は、僕以外は部室を誰も使っていなかったので、一人で使い放題だった。

ただ夏前の文化祭の準備を始めるシーズンだったので、三年生や一年生が部室を使う日は、エレキギターやドラムの音が相変わらず部室から爆音で鳴り響いており、自分はなぜやりたかったバンドではなく、アコギの弾き語りをやっているんだろうか、と複雑な気持ちだった。

予選当日、指定された会場に向かうと、参加者でかなり賑わっていた。

見渡す限り、出場者のほとんどがバンド形式で、ソロでの出演者は僕一人だけであった。

待ち時間、誰も彼もがメンバー同士で談笑したり、曲の確認をし合っている中、一人で黙々とコードの確認なんかをやっていた。

審査員は5人くらいいて、レコード会社や有名なライブハウスの関係者など、様々な顔ぶれであった。

順番に審査をされていく中、色んなバンドの演奏を見ていた。

上手い下手あるものの、やっぱりバンドっていうのは僕にとって特別で、演奏している人達は皆、キラキラと輝いて見えた。

ついに自分の番になり、審査員の前に立った。
前回、大きなホールで演奏した経験から緊張はほとんどなかった。

計2曲演奏した。

歌は順調だったが、ギターはところどころセーハが上手くいかずにコードが鳴り響ききらない部分があったが、そこそこ出来た方だと思った。

演奏が終わると審査員からコメントがあるのだが、全員からほとんど似た様なことを言われた。

「ギターはもう少し練習が必要だけど、歌は良かったよ。あまり弾き語りにこだわらなくてもいいんじゃない?バンドのボーカルならもっと良いところが引き出せると思うよ。」

結果的に予選落ちしたが、自分の中で音楽の活動方針が変わり始めた。

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