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ポエム・エッセイ

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ポエムのまとめです。わたしの頭の中は、こんな感じです。
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バス停

「待っててね」ってキミは 一緒に帰ろうと誘ってくれたのに あなたの望みを想像しなかったボクは ひとつ離して 椅子に座る 並んで歩く この道の 短い時間は好きなのに バイバイしか言えなかった キミの家があるバス停までは ボクのより ひとつ先なのに 夜を埋め尽くすのは星じゃないって知っていたのに それでも 夜空ばかり見てる 今日で最後の帰り道 じんわりと仲良くなんてならないと分かっていたのに きちんとボクの世界で一番を決めるべきだったのに ひとつ離して 椅子に座る

嘘つきのフェーズ

「冬なのに、ここが温かいから来るんだって」 そう言ってキミは笑う 水面を滑る白鳥を指さしたキミ とても白くて だけど、暖かい膜にでも包まれているみたに見えた 綺麗だと思うより先に、キミを好きになる ——眼と口と鼻と眉と額と一所になって、 たった一つ自分のために作られた顔である—— まえに読んだ、夏目漱石の一文を思い出した そのままのことがボクの世界にもあった 11月の曇り空と寒さが キミの息のかたちをつくって空に昇って消える どうしてボクの隣にいるのだろう もうすぐ

雫を集める森のように

雫の国にいた王子の夕暮れ 朝の反対側にある それは いちばん楽しい色のついた時間 波が石を転がして丸める 風が海を押して 絨毯みたいに転がって 太陽が丸いのも それを真似したせいだと思っていた ある日 絵描きが現れて 王子に絵を描いてみせた 知らない色をたくさん使って描いた 眠ったあとの夜の絵と 眩しく光る朝の絵と 誰かが泣いてる昼の絵だった それから 絵描きはこう言った 「わたしは世界が描けます」と 地図を片手に 王子は何度も会いに行く 絵描きはいつも同じ場所で笑っいる

雨フル世界

悪い日な気がするから いつも 片手には傘 傘をさしてるのは変なひと 屋根に棒をつけて歩いている変なひと パーカーが好き 帽子が好きで 歩き出すのが好きだからと こんな日に外に出る 粒の音はポツポツと2回 二回繰り返すのはどうして? 水平線に目を奪われながら聞いた その音が続いていることを 想像しながら 息を吸って吐いてをくり返すように 居なくなりながら産み落とす 永遠に繰り返すくせに 終りがあることを証明する ポツポツとまた雨が降る 影法師が乾いてしまわないように 湿った

すり抜けて行く〔詩〕

本のページとページの間に 睡魔のせいで 有りもしない言葉が挟まる 夢か記憶の 録画ミスしたみたいな映像と一緒に 忘れるだけの言葉 もう覚えていないけど 一緒になって消えた時間は戻らない 誰かの髪の毛と ホコリと ほつれた栞糸 WANTED 睡魔は瞼の裏で目玉を押している WANTED このナイフを抜かれたら眠ってしまう 本の重みが この世に引き留める 壁に貼られた手配書のポスターに ナイフを突き立てる

ひとり遊び

ひとりぼっちで秘密をつくって それを後ろ手に隠していた 罪悪感より寧ろ高揚感のような わくわくする冒険心が 新しいロウソクに火を点けるみたいだ 炎の横に添えた手の平 風を避けるための行為が 同時にその中核を隠した姿になった 秘密が一つ増えるたび 手持ちのカードが増えた気がした いつかゲームを 有利に進められそうだったから 持ちきれなくなったら影の中に入れる マジシャンやピエロみたいに カードを消したり投げたりするのに 憧れたこともあったけど できそうになかったから 影の中に

鳥 〔詩〕

その朱鷺は音も無く降りてきた 落ち穂を啄む訳でも 夢のある明日のことを語る訳でも無く 彼は私の 恋心をひやかし笑う 彼が恋をすると雪が降らない 彼の住む街は壁に囲まれていて そこから出るには 其れ相応理由がいるそうだ 朱鷺は笑う この世界を見て 私は悩む この世界を思って 壁を造っても息苦しくて 壁が無いと傷付けられて 誰もいない寂しさと あなたが居なくなる寂しさを 区別できずに 互いに互いを食べることにした 食べ終わるまでは 友達でいよう

〔詩〕夏休みが終わるようなそんな日に

朝晩の風の 碧の匂いを運ぶような風の 吸い込みやすい温度には 見えない雲のかけらが混じって それを 知らずに吸い込むから 胸のあたりが詰まって感じる 台風が運んでくる頭痛 硬めの枕の下に手を入れた圧迫感 茜色の空に キリギリスが宙を見つめ 罪悪感を感じている やり残した夏と 雲が滲んだ秋の空に

想い人と月〔詩〕

なにもない夜に想うひと わたしはその人に花束をわたすことはしなかった この野原に咲く花は枯れても花であるけれど その輝きを増すためにかき集めた花は あなたを喜ばすかわりに いずれ萎れてしまうだろう そのものはもう花ではなく 別の物になり捨てられる 人はその為に生きて 月はその為に輝いているのだ 新月の夜に野原を歩く 星 見える限り あなたを想う

夏の海〔詩〕

太陽と月がいつ交代したのだろう まだ明るい夏の夜に 海に向かう 私はサンダル 「幸せですか?」 なんてあなたは聞いてこないから 誓った通りに生きてる あの日から海は夏を引き戻そうとして 打ち寄せる波に映る月 それとすべての現実を 揺らし滲ませながら 白い泡を作る それで浜辺はできている 透き通るはずの涙が足元を濡らして できればこのまま 過ぎ去らないでと 隠れた太陽の声を唄う それを一緒に貝殻に込める ずっと波の音がしている

何度目の夏か〔ポエム〕

台風前の肌がヒリヒリする暑さと それでも見ていたくなるような 澄んだ空に見つめられている わたしの頭の上は青く 奥に見える山々の首から上には 雲が雲の影を作って見えた 湯気吹くようなその塊の中は 涼しいのだろうか そう思うのは わたしからは もう搾り取る水気が無いのだと 言い渡されるように雲のない 突き抜けた青が 頭上に広がっているからだろうか いや さっき自転車で通った運動部の学生が 首に巻いたスポーツタオルのせいだ 遠く離れた空に 部活動のコールが聞える わたしから出た

この世の主役にはふさわしくない〔詩〕

雨の下ではみんな平等にひとりになる 雫の大きさはたぶんそれぞれの適切な大きさ 太陽から見えないように 雨よ  わたしを隠してください 一人になりたいから 今日くらいは空から消えていたい わたしと雲の間にしか雨は降らないから わたしの部屋はいつも長靴履きなの 雨を知らないくせに雨の日に嫉妬するあなたは 晴れた日におかしなことを考える レインブーツで登山させて 肌を焼かないように日傘をさすように仕向けた そんな陰湿な奴なのに 孤独なくせに穏やかに笑うあんたをみんな好き わたしは

夜風が吹く、たぶん誰かがそれを飲んでるから。〔エッセイ〕

 連日のように熱中症注意が叫ばれ、いつもより暑い夏だという気にさせられている。それでも梅雨明けと共に湿気が去った新潟の空は、わたしにとっては不快ではない。  でもウダウダと平日の忙しさにかまけて夏の予定を立てずにきてしまったので、恐らくそんなに遠出はしないことになりそうだ。映画と読書と、日帰り温泉くらいは行きたいかな。夏の露天風呂は案外、気持ちいいものだ。  わたしは特にサウナブームには乗っからなかったけど、元々、日帰り温泉を利用するのが好きだ。そして、わたしが夏に行きたいの

あなたの真似して買ったサイダー

エンドロールみたいな小さな小波が足の指の間をくすぐる日曜日 あなたのとなりで わたしのサイダーがはじけている ギラギラしてる太陽が見下ろす ペットボトルの中身はまだ冷たい あなたのとなりで あなたと同じボタンを押したから 心の中身を隠したままで あなたとキスする日曜日 心の中身がこぼれない 唇があるから大丈夫 サイダーが喉を通り過ぎていったみたい だってこの辺ではじけているから #炭酸が好き