バドミントンサークル ビギナー♀に想いを寄せて
ごきげんよう! 春陽漁介です。
先日、及川からのnoteでも感謝申し上げましたが、改めて劇団5454 2022年秋公演『ビギナー♀』にご来場いただき誠にありがとうございます。配信をご覧くださった方もありがとうございます。
劇場でいただいたご感想や、SNS、webアンケートでいただく言葉一つひとつが、11年目を新体制で走り出した5454の力になっています。
配信版は11月27日までご覧いただけますので、まだの方はぜひ!!
映像でも楽しめる作品に仕上がっております。なんなら、映像の方が楽しめるシーンもありました。生で舞台を観てくださった方にも観ていただきたい高画質演劇です。
さて、今作のトピックの一つとして、過去最多の出演者だったことがあります。
役者としてはもちろん、人として魅力溢れる21名。本当は公演前にちゃんとご紹介したかったのですが、微塵の余裕もないまま公演が終わってしまいまして……
まだ配信が残っているうちに、改めてご紹介と感謝を舞台写真と共に残します。
この記事では、双柳大学バドミントンサークル「ビギナー♀」メンバーのご紹介です。
スナックわかばとすすぎの高校演劇部も、配信終わるまでには書きたい……。間に合わなかったらごめんなさい。
それでは、ビギナー♀(ひとり♂)に想いを寄せて。
小栗 はな(おぐりはな)役:神田莉緒香
シンガーソングライターとして活躍する神田さんは、演劇に出演するのは5年ぶりとのこと。稽古序盤こそ不安そうな表情もありましたが、稽古が進むにつれてどんどん台詞を自分の言葉にしていく姿を見ました。稽古場以外の時間でしっかり芝居に向き合っているのだなぁ、と感じましたし、稽古場で常に発見をし続ける姿勢に大きな信頼感を持ちました。
結果、稽古序盤の神田さんの不安そうな姿が、そのままはなが将来に不安を抱える姿と重なりましたし、稽古終盤の神田さんの作品への熱意は、まさに大会に向かうはなのようで。
オープニングの歌詞にあるように、心のマーブル模様を内包し続けられる希少な俳優です。
選んだ写真について、歌ってるシーンやバドミントンシーンもあるだろうに何故? と思われると存じます。僕はこの1枚に神田さんの作り上げたはなが詰まってると思っています。足の開き方、指の挿し方、カバンの持ち方、表情……
はなが感じている公園のベンチの居心地の良さや、仲間との信頼関係、根にある臆病さなどたくさんの情報が詰まっていて大好きな写真です。
塩本 菜津子(しおもとなつこ)役:森島縁
5454俳優陣としては、唯一の旗揚げメンバーとなってしまった森島が、この作品にかける想いは並々ならぬものでした。新生5454としての意気込みや責任感は、稽古場からひしひしと感じました。
短編『ビギナー♀』の時には難しさで苦悩したグループシーンも、華麗に回し切り、素晴らしいバランサーをまっとうしてくれました。
目の前にいる相手役に常に寄り添い、一言も逃さず聞き、隙間に提案をする。劇団を10年支えてきた力は、今作でしっかりと土台を支えてくれました。
写真は、まさにバランサー真っ只中の1枚。台本にはない些細な立ち振る舞いが、作品と観客の架け橋になるのだと改めて感じます。にしてもケンカの仲裁でこの笑顔って。健気で泣けてきちゃう。
藤原 麻未(ふじわらまみ)役:山下聖良
山下さんは、5454は初出演ですが、3年半ほど前に別現場でご一緒した俳優。
台詞を真っ直ぐに発する人。それは当時も思っていたことですが、今作でもピュアな芝居で、短編ではいなかった「麻未」という可憐なキャラクターを生み出してくれました。
写真は、過去のケンカを後悔しながらも、素直に戻ることが出来ない麻未の姿ですね。
印象に残ってるのは、稽古場で山下さんが初めてこのシーンを読んだとき。涙いっぱいで必死で言葉を発していたのを観て、僕の中で麻未のイメージが固まりました。「あぁ……。麻未は、相手を許せないんじゃなくて、相手を傷つけた自分を許せないんだなぁ」と。
相手に対して、常に優しくて穏やかで、少し天然で周りを笑顔にさせる山下さんは、大学生チームを一層尊い存在にさせてくれました。
森 ももか(もりももか)役:鈴木千菜実
2度目の5454で、2度目の森もも役の鈴木さん。
よく言ってることではあるのですが、僕はぶりっ子と呼ばれる、女子を売りにした女子がとても好きなのです。でも、そういうキャラを任せられる俳優は少ないと感じていて。過去に劇団員で竹間という、この世の女子を集めて固めたような俳優がいまして、僕にとって「竹間ポジ」というすこぶる重要な役目が確立しているのですが、それを鈴木さんは担ってくれます。
そして、2回目の森ももを見事にアップデートしてくれた姿に、僕はいたく感動しました。そもそも、過去出演した作品のオーディションに申し込んでくる姿勢に感動しましたし、言っていいのかわからないけど(ごめん、言うね)自己PRに「森ももは私です」という言葉があって。劇作家としてそんな嬉しいPRはないわけです。
その高いモチベーションのまま大学生チームを引っ張ってくれました。大きな舞台でダラダラとスマホを弄って先輩に悪態をついている森ももを観て、僕は謎の涙を流しました。
写真の森ももの目。普段可愛いくしてる女子の本性が溢れ出ていて最高。
杉内 佳苗(すぎうちかなえ)役:竹森まりあ
オーディションで芝居を観たとき、劇団員全員が「あ、佳苗来た」と思いました。
前傾気味の立ち姿。エネルギー全開の台詞回し。黙ってても賑やかな表情。全てがイメージ通りの佳苗でした。
竹森さんの素晴らしさは、精神面のバランスの良さ。真面目さと雑さの塩梅がちょうど良く、過去に出会ったことのないくらいポジティブ。稽古場でなかなか上手くいかないことも楽しんでいるように見えましたし、その思考が大学生チームの楽しい空気感に直結していました。
芝居の一瞬一瞬を楽しむ才能があり、もっと良くなる為にはどうしようかと考えてる向上心もあって、とっても助かる存在。どんな現場でも演出家のメンタルを支えてくれる俳優なのだと思います。
写真は、みんな大好きバイト掛け持ちシーン。1枚の写真からでもわかる躍動感とキレは、佳苗の真骨頂です。
楢原 芽衣(ならはらめい)役:及川詩乃
稽古場で不安そうに近づいて来た及川が僕に言いました。
「私、頭おかしくないですか?」
初めて5454に出演したのが4年前の『ト音』という作品。そこで秀才キャラを担っていた及川は、2度の客演を経て劇団員になって3作品目。しっかり頭のおかしいキャラに成長しました。
フェンシングのごとく構えるラケット。ガニ股の足。ぶら下げるシャトルケース。間の抜けた左手と口。なのにその真剣な目。全てがアンバランスであり、完璧なバランス。芸術的調和です。このまま彫刻にしたい。
森島演じる菜津子や鈴木さん演じる森ももと同じく、2度目となる役をしっかり進化させてくれて、劇団5454としての成長も感じさせてくれました。
楠 健(くすのきたける)役:高品雄基
「あれ、この人劇団員だっけ?」
そのくらい5454作品に馴染んでくれた、紛れもなく初出演の高品くん。
鮮度の高いリアクションを維持出来て、リアリティのある会話技術が高くて、なんでもない台詞を面白くしてくれて、自分も相手も魅力的に出来る俳優です。
オーディションの時は、髪型がちゃんとカッコよくて(パンフレットご購入の方はご参照ください)、イケメンとして起用するつもりだったんですよ。けど、他の仕事の都合で坊主になっちゃいまして。「キャラ作り直しだよ!」なんて言ってたんですけど、坊主になってから健のシーンが書きやすいったらなくて。また5454に出る時は坊主で出て欲しいとさえ思っています。
写真は、素敵な台詞を語る健なのですが、なんかちょっとおもしろく見えちゃう。高品くんの人柄から役が生み出されているのを感じる大好きな1枚です。
楠 志保(くすのきしほ)役:井澤佳奈
オーディションを実施していた当時、健の妹という役は想定していませんでした。だから、ハマる役は無いかなぁという印象で、こんなこと絶対言っちゃいけないけど(ごめん、言うね)、実は、最初のキャスティング構想に井澤さんは入っていませんでした。しかし、
どうも気になって仕方ない!
あのふてくされた顔(芝居)が忘れられない!
井澤さんで健の妹役を作ってみたい!
という創作意欲を駆り立てられ、出演をお願いしました。
過去作品に兄妹の設定って無くて、イメージが湧いたこともないので、井澤さんは僕にとって新感覚。10年以上も作り続けているとどうしても似たキャラが出て来てしまうものなので、そんな風に新しいキャラクターを生み出してくれることにとても感謝をしています。
そして、舞台上でも稽古場でもバドミントンのコーチをしてくれました。バドミントンを題材にする上で多大なる説得力を担ってくれたことにも多大なる感謝です。
選んだ写真は、創作意欲が湧いた「ふてくされ志保」ではなく、シャトルを幸せそうに見つめる志保。兄とばかり打ち合っていたシャトルが繋ぐのは、新しい仲間との絆。
以上8名がビギナー♀メンバーでございました。
大学生らしい気怠さと賑やかさやがあって、大人と子どもの曖昧な心情が尊いチーム。友情が強固になっていく様は、恥ずかしくもあり、羨ましくもありました。
時が経てばいられなくなってしまう居場所ですが、この8人にとっていつまでも思い出せる大切な場所になっていますように。
次回はスナックわかばのご紹介です!
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春陽漁介