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ありがとうの気持ち

私はずっと子どもが苦手だった。
年下の兄弟もいなかったし、従姉妹も遠く会う機会も無く、つまり自分が子供じゃなくなったころから一度も間近で子どもを見たことがなかった。

子どもはストレートで距離感がなくて、どう接したらいいか分からなかった。

夫と結婚してもしばらくは二人で生活するのが幸せだったし、そこに「何か欠けてる感」を感じることが出来ずにいた。むしろ子どもがいたら出来なくなることがいろいろある気がして先延ばしにしてきたかもしれない。
私は子どもの居る幸せを知らなかった。想像も出来なかった。

でも子どもは生まれて来て今一緒に生きている。

子どもは私の自由な時間をものすごく奪ったし、理不尽な要求を突き付けてくるし、合理的な選択は許されず、そして責任は果てしなく重い。それでも、子供は本当に産まれてくれてよかった。
本当に母になれて良かったと心から思う。
こんな幸せが人生にあったとは、本当に知らなかった。
知らなかったから結婚して子供がずっと居なくても、周りがどんどん子どもを産んでも全く焦りもしなかったのだ。母になるという意味を知らなかったから。

今でも毎日のように子どもに言う。

産まれて来てくれて本当にありがとう。私を母ちゃんにしてくれてありがとう、と。

あなたが産まれて母になれた。
あなたが産まれて子どもの愛おしさを知った。
あなたが産まれてあなただけでなく全ての子どもたちの存在の尊さを知った。
あなたが産まれて知らない世界をたくさん知ることができた。
あなたが産まれて自分を育てた親へ思いを馳せることが出来た。
あなたが産まれて花も電車も恐竜も詳しくなった。
あなたが産まれて世界は深みを増し、未来はぐっと距離を縮めた。

つい自分の苦しかった道を思うと、そんな道を歩まずに済むように手を引いてあげたくなってしまうけれど、あなたにとって何が幸せで何が辛いのかは私とは関係がないのだからそれは意味の無いことなんだろう。

あなたは私の子供ではあるけれど、私のものではない。
産まれた時に思った「神様からの預かり物」という気持ちを忘れずに、親のもとを旅立つ日まで一緒に歩いていこう。

世界には美しいものや素晴らしい出会いがあり、愛すべき人たちがいて、朝陽は美しいし、歌えば幸せだ。そしてあなたはそのままで素晴らしいよ。

あなたに出会えて本当に良かった。母ちゃんは本当に幸せです。

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