美容室が、お茶や出汁を売る理由
僕が経営する美容室『らふる』では、今月からECショップをはじめた。
そこには、美容室らしからぬ商品が並んでいる。
例えば、お茶。
このお茶は、代々木上原にあるミシュラン1つ星のレストラン『sio』監修によるもので、有機レモングラスと有機緑茶をブレンドし、サロン帰りの感覚をイメージさせる爽やかな清涼感と心地良いキレが特徴のブレンドティだ。お客様に提供する一杯を、「らふるらしいオリジナルのお茶にしたい」と考えていたところ、素材の本質を見極め、おいしさを超えた感動を追求するsioのスタイルに感動し、監修していただいた。
他には、出汁のスープも扱っている。
これは『oh!dashi』という商品で、『椎茸祭(しいたけまつり)』という会社のもの。 お湯を注ぐだけで、簡単に本格的なお出汁を楽しめる。らふるでは「椎茸×昆布」「発酵トマト×椎茸」の2種ご用意している。身体に染み渡るような優しいスープは、口にするとホッとリラックスすることができる。化学調味料は無添加で、自然な旨味が特徴だ。
『らふるのお茶』がリフレッシュなら、
『oh!dashi』はリラックス。
もともと、これらの商品は美容室の店頭で販売しており、それをオンラインでも購入できるようにECショップを開設した。シャンプーやコンディショナーなど、ヘアケアやボディケアにまつわる商品を販売する美容室は多いが、お茶や出汁を販売する美容室はかなり珍しいのではないだろうか。
なぜ、らふるはお茶や出汁を販売するのか?
それは「くらしを紡ぎ、笑顔を繋ぐ」という理念のもと、「笑顔がつづく美容室」を目指しているからだ。
なぜ、美容室がお茶にまでこだわるのか。
お客様が美容室に来る目的は、単に機能として「髪を整える」だけではない。オシャレしたい気持ちの奥には様々な理由があり、リフレッシュしたり、リラックスするためにお越しいただくことも多い。
そう考えると、美容室にとって、「髪を整える」は価値の中心ではあるものの、提供する価値のひとつにすぎない。気の利いたレストランであれば、料理だけでなく、店内の装いや、流れているBGM、スタッフの話まで含めて、その店の価値となるのと同様だ。
例えば、僕らがお茶の監修をしてもらった『sio』。オーナーシェフの鳥羽さんは、インタビュー記事でこんな発言をしている。
「食材にこだわるのと同じように、食器やおしぼり、音楽にもこだわりたい。一事が万事。すべてにこだわるから、料理にもこだわれるんです」
実際、sioに足を運ぶと、そのこだわりに毎回驚かされる。食材や料理の一品一品はもちろんのこと、コース全体の構成、店内で体験する全てのものごとに意味が込められていて、それらの総体で「sioとは何か?」を表現していると感じる。
僕らも同じように、店内で味わう全ての体験を通じて、「らふるとは何か?」をお客様に伝えていきたいと考えていた。一杯のお茶にも、座っていただく椅子にも、ご使用いただくタオルにも、全てにこだわりを込めたい。
そして、全てにこだわるからこそ、それらのアイテムに負けないように、「髪を整える」ことにもこだわっていく。
笑顔が「つづく」美容室とは何か?
では、「らふるらしさ」とは何なのか?
僕は、常々スタッフに笑顔がつづく美容室を目指そうと話している。
笑顔に「なる」ではなく、
笑顔が「つづく」だ。
美容室に来店し、理想的な髪となった時の美しさを100点としよう。そのスコアは時間が経つごとにどんどん減点され(崩れ)ていくような状態であってはいけない。
らふるでは、「末長く楽しめる髪をあなたに」を合言葉に、その場しのぎ的なヘアケアは行わないようにしている。
カラーやパーマが当たり前となった今、科学的な施術によって肌荒れやアレルギーも生み出してしまった。オシャレになることと引き換えに、目に見えないダメージを負っている可能性がある。
僕らは、ずっと髪を楽しみ続けられるヘアデザインを提案していく。
カラーやパーマをご希望のお客様の髪と地肌に、 極力負担をかけぬよう残留物を取り除くことをルールとし、炭酸泉クレンジングなどのアフターケアを無料で施術。その際に使うシャンプーなどもお一人お一人の髪と地肌、気分に合わせたものをスタッフが毎回選んでいる。
くらしを紡ぎ、笑顔を繋ぐ
笑顔がつづく美容室を目指す僕らは、日常と切り離された特別な場所よりも、日常の延長線上にあるちょっとした「ご褒美」のような存在を目指していると言い換えてもいいかもしれない。
らふるでお過ごしいただいた時間が心地よかったとしても、長続きしないものであれば、それは僕たちが提供したいものとは異なる。
一時的な笑顔を作り出すのではなく、生活に自然に染み込むように、ゆっくりと笑顔でいる瞬間が増え、ご機嫌な日々が当たり前になるような、そんな生活を提案できる美容室でありたい。
だから、僕らの理念は「くらしを紡ぎ、笑顔を繋ぐ」なのだ。
そのため、僕らが提供するお茶も、らふるでしか飲めない最高に贅沢な一杯ではなく、「こういう一杯が、日々の暮らしにあったら素敵かも」と感じていただけるものを目指している。
その結果、お客様の暮らしが豊かになればと思い、らふるでは、お茶をはじめ様々な商品を販売するようになったのだ。
伝えるべきは、僕らの「思想」
らふるは、2020年4月に3周年を迎え、webサイトをリニューアルした。
美容室のWebサイトにも関わらず、店内のこだわり・プロダクト・スタッフの紹介にボリュームを割いており、ヘアスタイルの紹介は最低限に抑えている。
ヘアスタイル写真は美容師の技術やセンスを見せるための大切な要素ではある。だが、大前提としてスタイル写真の髪型は、モデルに合わせたものであって、お客様に合わせたものではない。
お客様が知りたいのは「どんなヘアスタイルにしてくれるか」よりも、「どんな考えで、どんな価値を提供する場所なのか」ではないだろうか。
伝えるべきは、らふる の「思想」。
そう思い、ヒト・モノ・場所を、「くらしを紡ぎ、笑顔を繋ぐ」という想いと共に表現してみたつもりだ。
このnoteやWebサイトに書いてある内容に少しでも関心を持ってもらえるようであれば、一度、らふるに訪れてみてほしい。
笑顔がつづく美容室とは、お客様の「くらしを紡ぎ、笑顔を繋ぐ」ことで実現ができる、僕はそう考えている。
編集協力:井手 桂司