蜘蛛の糸
警告音とアナウンスがひっきりなしに響いている。
避難用のロープを掴んで上に登ろうとするが、骨格が変わっていて力が入らない。
そのうち指が短くなりはじめ、ロープを掴むことしかできなくなった。
いびつな音を立てながら両手は前脚へと変わっていく。
背骨が破裂したような、折れたような音を立て変化する。
前脚からロープが滑り落ち、床に倒れてしまうーーその一瞬、とっさに口でロープを咥えることが出来たのは幸いだったのだろうか。
首から下はすでにガスが充満している。
ガスを少しでも吸ったら、致命傷だ。
どうすればこの状況から抜け出せるのか、打開策は思い浮かばない。
それでも自分は、変容した骨格で、ロープを咥えながら、必死に二足で立ち続けるしかなかった。
「詰み」なのに必死に助かりたくて無駄な足掻きをしているお兄さんはかわいそうでかわいいですね。