芥川龍之介の『羅生門』が描く人間の本質
こんにちは、Laughing Literatiです。本日は10月3日、秋の訪れが感じられる季節ですね。今日ご紹介するのは、芥川龍之介の短編小説『羅生門』です。多くの人が学校の国語の授業で触れたことがあるかもしれませんが、この作品には今だからこそ考えたいテーマが込められています。
芥川龍之介とは
芥川龍之介(1892年 - 1927年)は、日本の短編文学を代表する作家です。彼の作品は、鋭い観察力と人間心理の描写力で広く知られています。『羅生門』はその代表作の一つで、彼の作風をよく表しています。
『羅生門』のあらすじ
『羅生門』は、平安時代末期の荒廃した京都を舞台に、職を失った一人の下人が生きるために盗みを働くか否かという選択に迫られる物語です。羅生門という門の廃墟で、彼は一人の老婆が死体から髪の毛を抜いている場面に遭遇します。その行為に恐怖と嫌悪を感じる一方で、老婆の話を聞くうちに彼自身も生き残るために道徳を捨て、ついには老婆の衣を奪う決断をします。
"老婆はしわがれ声で言った。この髪を抜いてかつらを作り、金を稼いで生きていこうとするのは、何も悪いことではない。それも人のためにだ。"
(『羅生門』)
作品のテーマ
『羅生門』は、人間の「善」と「悪」の曖昧さを描いています。極限状況に追い詰められた時、人は道徳心を捨ててでも生き延びようとするのか、それとも道徳を守り続けるのか。芥川はこの物語を通じて、人間の本質を鋭く問いかけています。読者は、下人の行動に自分自身を重ね、現実社会における倫理観や価値観を改めて考えさせられるのです。
今日の豆知識
『羅生門』はもともと平安時代の説話を元にして書かれたものです。元々の「羅生門」は、貴族たちが繁栄した平安京の入口にあった巨大な門ですが、物語の時代にはすっかり廃れてしまっていました。この背景も、当時の日本社会の衰退や混乱を象徴しています。
秋の夜長にぴったりな理由
『羅生門』の持つ不気味な雰囲気や、陰鬱な道徳の問題は、秋の夜長に読むのにぴったりの作品です。特に涼しくなり始めた夜、静かな時間に一人で読み進めると、物語の暗い世界観に引き込まれるでしょう。現代でも通じる普遍的なテーマが、秋の深まりと共に心に響いてきます。