映画再解釈|基礎知識0から楽しむ。「インターステラー」その①
クリストファー・ノーラン監督、空前の大ヒットSF超大作。
「インターステラー:Interstellar」
わたしもこの映画大好きで、既に6回ほど視聴しています。
正直に申し上げます。
6回観たけど、ぶっちゃけこの映画の1割も理解できていない、と。
そんな宇宙知識0の筆者でもインターステラーを分かった気になれる解説、を目指していくコラムになります。
この特性上、視聴済みを前提とした内容を多く含みます。
先にご視聴頂いてから読むことをおすすめします。ネタバレ注意。
加えて記事は分割し、何作かに渡って書いていこうと思います。
あらすじ
インターステラーで舞台となっているのは近未来の地球。
「雨が降る」という現象がなくなり、地球全体に大規模の砂嵐が発生するようになった世界。人類に残されたのは「食料飢饉」問題。
地球の資源はほぼ何もかも枯渇しつつあり、もはや国家間で戦争をする余裕もない。劇中内で軍事活用されていたであろうドローンが登場しますが、主人公であるクーパー一家に捉えられ、農業トラクターを最適化させるためのジャンクパーツ扱い。武力や抑止力の為のテクノロジーは放棄された世界観であると示されます。
ひょんなことから、滅びゆく地球を救う選択肢がクーパーに提示される。
解体されたと思っていたNASAが秘密裏に宇宙移民計画を遂行していたのです。
NASAが語ったのは2つのプラン。
◉プランA
惑星移民コロニーに人類を収容し、生命活動が可能な星に移住する。
地球全員を収容できる特大規模のコロニーを地球から射出しなければならず、その為にも”重力”のコントロールが課題となっている。
◉プランB
居住可能な星に大量の受精卵を持ち込み人口培養する。
人類の種を再発展させる。ただし、地球にいる人間は見捨てる。
クーパーはこの問いかけに対し、当然の疑問を投げかけます。
「移住可能な星など存在するのか?」
地球は奇跡の惑星です。よくある例えで「全てのパーツをバラバラに分解した腕時計を箱の中にいれ、えいっと一振りだけして腕時計が元通りになるくらいの確率」のもと、地球が生まれたと、されています。何百万何千万回試行しても出来る気がしません。
NASAはそれに対して「彼らがワームホールを用意してくれた。別の銀河に第二の地球がある」と答えます。
ワームホールにより別銀河へのワープ
ワームホールを超えることで物理的に不可能な渡航を実現できる、いわゆるワープです。
劇中でもこのワープの仕組みについて触れていました。
2次元で考えれば、○から✕までは明らかな距離があります。
しかし3次元的に考えれば、紙をひねって直接重ね合わせる。これで○と✕の距離は0になります。
4次元は、残念ながら図示できませんが、この2次元と3次元の関係と同じです。
作中のワームホールについて、クーパーは”球状の穴”と表現しました。
例えば、○と✕が重なった紙にボールペンでブスリと穴を開ける。
2次元からボールペンの通った跡を観測すると”円”に見えることでしょう。
3次元の住人の私たちが”球体”だと感じるものも、高次元からは別の事象に見えているかもしれない。その最たる例が球体のワームホール。ここに飛び込むと物理的な距離を無視して、別の銀河にたどり着ける。まさに”ワープホール”です。
このワームホールには過去に12人の優秀な研究者たちがすでに飛び込んでいました。彼らはその先の銀河で居住可能な星を見つけ、地球に合図を送るという使命があります。
これが犠牲者ありきの人類存亡を賭けた『ラザロ計画』の第一段階でした。
この12人の研究者の内、3人が地球に合図を送ってきた。そんなタイミングでNASAに迷い込んだクーパーは、NASAからみればある意味救世主だったでしょう。
なぜなら彼は人類史上比肩するものが居ないほど、最高のパイロットだったからです。
光にも速度ってあるんじゃないか?
作中では、光や距離、速度、そして時間が大変複雑に絡み合って描かれます。
「たった1時間で7年の月日が経過する」惑星が登場しました。
これを理解するのに、私はまず光とは何かについて学ぶ必要がありました。
光は、この世に存在しうる限り最大の速度のもの、と認識すると、理解が早かったです。
光の元となる物体は”光波”と呼ばれるものですが、これは質量を持っていません=質量0。素粒子の中で唯一、質量を持たない稀有な粒子です。
なので、この世に現存する物体の中で最も軽い。よってその物体が移動する速度も最も早い。だからこそ光は最速であり、この世に光より早いものはないのです。
同時に光は慣性の影響を受けない。
下記の図は学校でお世話になった慣性の解説。
この場合、”人”は電車の慣性を受けます。しかし光は電車がどれだけ加速しようが減速しようが、一切慣性を受けません。
さて、ここから本題なのですが、以下の方程式を変形させてみます。
時間 = 距離 × 速さ
速さ = 時間 ÷ 距離
そして光速不変の法則を当てはめると、速さは変動しないことになります。
速さ(固定) = 時間 ÷ 距離
では、この場合において距離が変わったらどうなるでしょう?
速さは常に固定でなければなりません。
距離が変化した場合、時間もそれに合わせて変動しなければならない。
逆に時間が縮めば、距離も変動しなければならない。
そのように、なんとも直感に反した不思議な現象が起こるのです。
ワープとは、いうなれば極小の時間で極大な距離を進む現象です。
光速不変の法則に当てはめれば、時間が伸び縮みすることが現実にありえる、となります。
ワープを成し遂げたクーパーたちは、ガンガンチュア(ブラックホール)に極端に近い「ミラー惑星」で、時間の伸び縮みを直に体験することになります。
ひとまず、その①はここまで。
また次回をお楽しみに!