「upd8」というMCNの終了に思う今後
11/1に、バーチャルタレント支援プロジェクト「upd8」が2020年末に活動を終了するという発表がありました。
Activ8株式会社が運営する、Vtuber界に一つの時代を作ったマルチチャンネルネットワーク(以下MCN)が、ついに幕を下ろすことになるわけですが、今年の春にはいずれこういう結末が訪れるであろうことを予測していた人も、相当数いたのではないでしょうか。
それぐらい2020/04/30のキズナアイ、織田信姫、そして現774inc勢のあにまーれ、ハニーストラップの各メンバーが「upd8」を離脱した際の影響は大きかったし、おそらくあの時点で「upd8」はその存在意義をほぼ失ったのではないかと、私なんかは思ってしまってました。
もしかしたら、今年の8月にYuNiが離脱しているあたりがトドメ、なのかもしれないですが、仮に在籍していたとしても大差なかったのではないかなというのが、率直な感想です。
ここでちょっと脱線しますが一応、MCNってなんぞや?って方に簡単に説明をしておきますと、広義の上では「YouTubeの配信者へタレントマネジメントサポートをする組織」のことです。
ただこれ、比較的新しい単語であることのせいか、日本では説明する人によって解釈が違ったりもしていて、イマイチ線引きが不明瞭な所があります。
なので日本の、それも現在のVtuberの場合はほとんど「MCN」という単語を用いず、運営元はホロライブ、にじさんじ、アイドル部、774.incに代表されるように「事務所」や「プロダクション」と呼ばれる場合がほとんどです。逆にYouTuberの事務所は「MCN」を名乗ることが多いように思われます。
その名称の使い分けは、現在のVtuber業界では主に「その企業が管理しているVTuberが企業内で作成されたどうか」で使い分けをされていると、私は解釈しています。
今年4月以前のキズナアイを例にしてみるとわかりやすいのですが、「事務所」がActiv8、「MCN」がupd8とすると理解が速いのではないでしょうか?
ここら辺の解釈についてかなり人で違うので、どうしても詳しく知りたい方は、Wikipediaのページとferretさんの解説を貼っておきます。興味がある方はご覧になってください。
話をupd8に戻します。
upd8は「バーチャルタレント支援プロジェクト」と銘打って活動をしているVtuber業界では数少ない純粋なMCNで、現在もおめがシスターズや渋谷ハル、ヤミクモケリン、キミノミヤ、MonsterZ MATE、かしこまり、響木アオ、魔王マグロナ、兎鞠まり、懲役太郎、由宇霧、Icotsuなど、音楽からバラエティ、性文化や葬儀文化等の特殊カルチャーに至るまで豊富な人材が参加しています。
そのupd8の役割は基本的にノウハウの提供、機材やコラボ、グッズ化などのサポート、そして案件の受注です。他の事務所やプロダクションのように、自社でVtuberを生み出すことをしていません。
あくまで立ち位置は支援に限られていました。性質的には個人勢の集合体で作られた協会のような立ち位置だったのではないかと思います。
その為、ビジネスとして見た場合の収益構造はかなり脆弱なものだったのではないでしょうか。
詳しい収益構造は判りませんが、自社制作のVtuberではない以上、参加しているVtuberの「動画広告の収益」や「スーパーチャット」を収入源とすることは考えにくく、おそらく「グッズ製作」や「案件受注」の手数料、「upd8への加盟料」あたりがその収益のメインだったはずです。
となると、おそらく今回の活動終了には、今般の某ウイルス流行による案件の減少なども影響としては大きかったのではないかと思われますが、
そもそもとして、upd8に参加した個人勢全員が案件を取れるほど知名度が高ければ別ですが、そうでない場合upd8は収益をどこから得るのか、という点でそのビジネスモデルには問題があったのではないかと思われます。
少なくとも、upd8に参加したVtuberがノウハウ提供後もずっと在籍し続け、知名度を上げて収益を得られるようになるためには、upd8内にキズナアイという看板Vtuberの存在が必要不可欠でした。
そう考えると、今年の4月にキズナアイがupd8を離脱した時点で、upd8は既にその役割の大半を喪失していたのではないでしょうか。
このあたりはミライアカリが失速した時点で箱としての動きが鈍化し、昨年末に活動を終了したENTUMと似た印象を感じます。
また本家ともいうべきYouTuberの方でも、日本最大手のMCNであるUUUM株式会社が先日増収減益を発表するなど、MCNの業態自体にも強い向かい風が吹いているのが現状のようです。
とまあ、あまり裏付けの取れない考察はさておき、かつてはVtuber業界で最大手であったupd8という箱は、もうすぐ無くなってしまいます。
ただ、そこに所属するVtuberに影響があるのか?というと今のところそんなこともないようで、おのおのが面白おかしく今回のupd8活動終了をネタに配信をしている姿を見て、そこはちょっとホッとした気持ちになります。
特におめがシスターズの配信には実際にupd8の社長を呼んで、今回の事態の説明をするという前代未聞の配信が行われたので、興味がある方は是非見ていただきたいのですが。
なんにしてもVtuber界において、個人勢にノウハウを提供できる純粋なMCNという存在は、これでほとんどなくなってしまったように感じます。
(他にMCNと呼べるものは日本テレビが運営するV-Clanぐらいしか私は知りませんが、こちらに参加しているVtuberはほとんどが企業所属で、あまり個人勢の加入を意図していないMCNのように見えます。)
Vtuber界の個人勢は今後生き残る道をどう模索していくのか、そして新しい個人勢が生まれる余地はあるのか。upd8所属のVtuber達がどういう風に活動を継続していくのか、などに今後は注目していきたいところです。
<追記>
upd8活動終了関連ではわさすらさんと、メルクマさんが読み応えのある面白い記事を書いていらっしゃったので、こちらもご紹介させていただきます。
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