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「ラミィの日本酒づくりプロジェクト」~お酒の販売戦略とVtuberの話~

 昨日(2/15)水戸市の総合酒類メーカーである明利酒類株式会社と、Vtuber事務所ホロライブを運営するカバー株式会社によるプレスリリースで、Vtuber雪花ラミィが自身の手で日本酒を作る「ラミィの日本酒づくりプロジェクト」が発表されました。

 お酒のPRをVtuberとのコラボレーションを行うという試みは、過去の取組みとしては、リカー・イノベーション株式会社の運営するオンラインストア「 KURAND(クランド)」が行った各企画が、今のところ最も有名だと思われますが。

 「VTuber酒蔵応援プロジェクト第一弾と銘打たれた「各酒蔵の日本酒ごとに違うVtuberを起用したラベルを貼って販売」し、その参加Vtuberによるオンラインイベントを別途実施する企画『酒蔵応援プロジェクト #Vノ酒祭 ~バーチャル屋形船TOUR~』(オンラインイベントチケットは日本酒付で販売)。
 「VTuber酒蔵応援プロジェクト第二弾として行われた「Vtuberが選んだお酒の中から数種類をランダムで5本以上詰めた詰め合わせを各Vtuber由来の購入特典とセット販売する『酒ガチャ』」。
 Vtuberが選んだお酒3本にVtuberオリジナルラベル酒&ステッカー&ボイスのセットを加えて販売した『ホロのみ ホロライブ Ver.』。

といった具合に、企画内容はVtuberのあしらわれたラベルやパッケージ、別の商品をセットで販売するものが主流でした。

 今回の明利酒類株式会社もまた、ラベル及びパッケージをホロライブ所属のVtuber、兎田ぺこら仕様にした「百年梅酒ぺこらver.」を販売し、販売当日には決済画面に入れないぐらいアクセスが殺到したり、即日完売して後日再販と通年販売が決定したことなどが、過去に話題になりました。

 このように、これまでのお酒とVtuberのコラボレーションというものは、以前より各所で見られていた「アニメとお酒のコラボレーション」同様に、包装部分にキャラクターのデザインを付与して販売する形式が一般的だったように思います。

事実、明利酒類株式会社リカー・イノベーション株式会社も過去にアニメやキャラクターパッケージのお酒の販売を行ったノウハウを持つ会社です。

 ゆえに、あまり良くない表現ですが、これまでのVtuberはお酒の販売戦略におけるヒットアニメキャラの代替品、であったとも言えます。

 しかし、今回の企画は少々毛色が異なるものだと言えます。

なにせ包装ではなく「中身の酒本体にキャラクターの意思を反映させる」という取り組み自体が、ほとんど類を見ません。

実に挑戦的な取組みだと思います。熱心なファンほど買わざるを得ない心境にさせられる点でも、面白い企画です。


 一応、今回のように「製造段階からVtuberが関わる」と銘打たれたものは実は今回が初めてではなく、私が知る限りでは、昨年に沖縄生まれのVtuber、根間うい久米仙酒造が共同制作した、泡盛ベースのチョコレートリキュール「ちょこもり」に続いて2例目となるのではないかと思います。

ちなみにこちらは発売3週間程度で限定1000本が完売し、再販が行われるほどの人気となった模様です。

企画としての先見性もさることながら、ホームグラウンドである地元の企業との結びつきを生かし、毎回、よそで誰もやっていないことをやって地元の魅力発信・地域活性化を狙う、根間ういらしい素晴らしいものだったと思います。

なお、こちらについては関連動画がいくつか配信されていますので、興味がある方は根間ういのYouTubeチャンネルをぜひ確認してみてください。


 そしてもう一つ、これは私が個人的に驚いただけの話ですが、今回のこの「ラミィの日本酒づくりプロジェクト」に関するプレスリリースもまた意外でした。

下にそのプレスリリースを貼っていますが、Vtuber事務所の「カバー株式会社」版と、「明利酒類株式会社」版の、内容の異なる2種類のプレスリリースがあるのがお判りになるでしょうか?

 必ずしもそうとは言えない話ではあるのですが、通常コラボレーション企画が成立した場合、営業をかけた側がこの手のプレスリリースを発表するケースが顕著なのですが、そんな中、今回のようにキャラクターサイドと商品製造サイドの双方からひとつの商品のプレスリリースが発表されていることは、ちょっと珍しい出来事だと思います。

 少なくとも私は、Vtuber関連のコラボでプレスリリースが複数出た例は、過去ににじさんじ楽天株式会社と行った「パ・リーグ6球団コラボ」ぐらいしか記憶にありません。

このことについてはなんというか、本企画に対してかける双方の熱意みたいなものが感じられて、ちょっと期待値が高まる思いがします。

 さかのぼる事1年とちょっとの2019年の12月、明利酒類株式会社ホロライブのそもそものご縁は、兎田ぺこらが配信中に「百年梅酒を飲んでいる」と発言して、twitterのトレンドに「百年梅酒」がトレンド入りしたことと、それ以降、明利酒類株式会社のtwitterが各Vtuberの「百年梅酒」発言に反応を返し続けたことがきっかけでした。

当時はこんな熱いタッグを組む関係までになるとは、まさしく誰も予想しなかったことだったでしょう。
何がきっかけで縁が生まれるかは本当にわからないものだなぁと思います。


 もっとも、今回の企画が成立するにあたっては、「近年の若者の日本酒離れ」や「日本酒のブランド化と海外展開」などの近年酒造メーカーで注目されている課題と、「お酒を飲むことが特徴」かつ「飲料品の製造に関わったとしてもイメージが悪化しない清潔感」と「若者や海外へのインフルエンサーとしての知名度を持つVtuber」という要素が上手くかみ合った、縁だけではない非常にビジネスライクな側面を持っていることも、推察できるところです。

 さて、そんな「ラミィの日本酒づくりプロジェクト」ですが、昨日の配信では、彼女の好む端麗辛口タイプの日本酒ではなく、万人受けが良く高級感のある香り高い日本酒の方向性をなんとなく押している印象でした。
お米もブレンドする方向のようですし、配信時に「大吟醸の副将軍」をピックアップして飲んでいましたので、何となくですが「精米歩合の高めな甘めの日本酒」が生まれそうな予感が今のところはします。

 今後も製造過程に関しては随時配信も行われるようですし、その進捗についてはとても楽しみにしたいと思います。是非無事に成功し、Vtuberの将来的な宣伝の可能性を広げるような結果になってほしいところです。


<追記>
今回の企画の主役「雪花ラミィ」のキャラ付けに関しては、まーがり様が面白い考察をnote記事にされていらっしゃったので、ご紹介します。

いつもながらVtuber、特にホロライブのキャラクター分析に長けた記事を書かれる方なので、興味がおありの方は是非ご一読ください。

それと、今回の記事内でちょっと触れました兎田ぺこらの「百年梅酒騒動」については音霧カナタ様が過去に面白おかしく触れていらっしゃいますので、こちらのnote記事もおススメです。

今回紹介させてもらおうと思って記事を検索したら「スキ♡」つけ忘れててびっくりしました。以前から楽しく読ませていただいています。

<2/17追記>

前述の音霧カナタ様が同件に関する記事をUPされたのでご紹介。
読みやすく整頓されていて、それでいて楽しげな雰囲気のある記事です。

私のこの記事も文中でご紹介していただいていまして、ありがたいやら恐れ多いやら、という感じです。ありがとうございます。


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