【随筆】アイドルでかつては教祖として神だった~アイドル編~

 ごきげんよう。紺色です。今回は私がかつて教祖として活動していたときのことを書きますね。そして書いていたら思いの外長くなってしまったため、まずは教祖になるにあたって深く関わっていたネットアイドル活動についての経緯から紐解きます。因みにネットアイドルは現在進行形で続けているので推して下さってもよろしくてよ。
 では、以下どうぞ。

 時は2009年夏。私は15年ほど前からインディーズバンドのライブに頻繁に通うようになっていて(所謂バンドギャル、バンギャです)、その11年前には特にFICE(ファイス)という電波パンクユニットのライブに足しげく通っていました。FICEというのは、彼女達以前から存在はしていたけれど、現在も活動を続けているという点や影響力においても、所謂"地下アイドル"の祖とも言える存在であるため、メディアではほぼ"アイドル"として扱われています。そして、そのFICEの定期主催ライブに行った時のことでした。
 主催としてトリをつとめ、会場も熱気に包まれ、私を含めるファン(アイドルオタク、オタク、オタなどとも呼ばれる)のオタ芸と呼ばれる踊りも最高潮の時でした。

 ぐるんっ!

 私の左膝が捻れたのです。
 私の膝はもともと半月板が存在せず(医師によるとたまにそういう人が居るらしい)脱臼を起こしやすい器質であり、それより以前にもう片方の右膝も脱臼をした経験がありました。マズい。
 そこでしかし、周りの知り合いでもないオタク達が私の異変に気付き、場内の熱気を下げないよう計らいながら、私を持ち上げ安全な場所に運んでくださったのです。
 ライブは無事にはねて、終演後の物販と呼ばれるグッズ等の販売作業の準備が始まりました。そうするとすぐさまオタク達が私の状態をスタッフに告げてくださり、FICEのえんちんも実際に確認なさって、救急車を手配して頂けました。そのオタクの中には普段の仕事である整体師などの救急時脱臼程度なら対処できる方もいらっしゃったようですが、その場でできる限りの介抱をして下さりながら
「今免許を持ち合わせてないからごめんね。痛いだろうけど待っててね。」
と知りもしなかったであろう小娘の面倒を見てくださったり、その他もとにかく周りの方々に思いやっていただきました。そして忘れもしません、物販の手が少し空いたミゼッツというユニットの方が
「大丈夫?大変だったね。もうちょっとだからね。」
と屈んで励まして下さったのです。

 こんなに優しい世界ってある?

 私はつくづくそう感じました。怪我についてですが、それから現在に至るまでも、まあ骨折などではないのですぐ治りましたし、未だに膝が弱いことは弱いですが、適切な処置のお陰で身体的な問題は特段なく生活をしています。
 しかし、静養中は当然ながら暇でした。通院不要の許可を得るのに概ね2ヶ月程度かかりましたし、靭帯が伸びて筋肉も損傷しますから、一定期間のギブス着用の上の松葉杖生活を余儀なくされます。リハビリ開始まではなかなか外出も億劫になり、趣味のライブハウス通いも当然できませんでした。
 そこで私はアメーバブログで叫ぶlogというものを作ったのです。それはただ、「ああああああああああ!!!」だの、「ううううううういえあ」だの、兎に角ただ、叫びたいときに叫びや呻きを文字に起こしただけのブログでした。当然読者などできませんし求めませんでした。自己満足なので。
 そんな無為なことを続ける日々のなかで、ある日唐突に思ったのです。不慮の事態とは言え人に迷惑をかけたのにとんでもなく優しくして頂き、そのご本人様達に届くようなお礼もできないまま私は生活を続けたくないと。このブログを利用して何かの形で還元できることはないかと。そうして私はアメーバブログのランキングを見ることにしたのです。さすがに芸能人のブログは省きました。一般人のブログから、私にもできる何かヒントを得られないだろうか、そう考えたのです。
 すると、出てくる出てくる有象無象。当時はまだ黎明期で日本人ユーザーの少なかったTwitterでは、昨今だとよく、承認欲求と称され貶されがちな言葉で片付けられる画像や、アメーバブログ独特の行間の広い散文や、時として詩などの群れが。そのなかに、ひときわ私が惹き付けられたブログがありました。それは、美しい肢体をお持ちで、生まれたままの"腋毛"をたくわえた、筆舌に尽くしがたい、エロティシズム漂う女性のブログでした。1位ではなくとも比較的上位にランクインしていたそこそこに人気のブログでした。
 (これだ!!!)
 今思うと、何が"これ"だったのでしょう。今は理解不能です。でも彼女のブログがきっかけで、私は助けてくださった"地下アイドル"ではなく、インターネットアイドルになると決めました。この流れに関しても、正直今思うと何を考えていたのか意味がわかりません。しかし、脳内の電極がバチっと繋がったような感覚だけは覚えています。

 「私は今からネトアだ。ネトアとして世のため人のために何かをするぞ、何かしらだ。」

 こんな風に、私はネットアイドルになったのでした。

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