「夫源病」
「夫源病」
定年を迎えた男性とその妻必見の記事
あなたの体調不良 夫が原因かも 「夫源病」提唱の医師講演
「中高年だけでなく、若い世代も苦しんでいる。誰もが夫源病になる可能性がある」と話す石蔵文信教授=神戸市中央区
妻の体調不良は、あなた(夫)が原因かもしれない‐。「夫源(ふげん)病」という言葉が今、注目されている。夫の言葉や態度がもとで、妻に頭痛やめまい、不眠など、更年期障害のような体調不良が現れることを指す。名付け親の循環器科専門医で、大阪樟蔭女子大学の石蔵文信教授(58)がこのほど、神戸市中央区で講演した。(中島摩子)
夫源病は医学的な病名ではなく、大阪市内のクリニックで「男性更年期外来」を開く石蔵教授が、2011年から提唱している。
きっかけは、男性の診察時に同伴する妻も、深刻な体調不良に苦しむケースが目立ったこと。多くが夫との関係によって引き起こされたストレス症状で、不平や不満を話したり、夫婦関係が改善したりすると、体調が良くなったという。
石蔵教授は著書「妻の病気の9割は夫がつくる」(マキノ出版)がヒットし、現在は全国各地で講演。今回は、団塊世代が高齢化する中、熟年夫婦のより良い関係を考えようと、神戸市社会福祉協議会などが企画した。
講演で石蔵教授は夫源病を招く可能性がある夫の特徴=表=を挙げ、「『俺が食わせている』などの上から目線がきつい。最近は、『家事をしている』と吹聴するが、実際はずれている“自称いい夫”が嫌がられる」。
また、男性は定年後を「とても楽しみ」という人が多いが、女性は「とても不安」が多いと説明。定年後に会社とのつながりがなくなり、妻の買い物や趣味に「わしもわしも」とついて行く夫を「わしも族」と呼び、「妻を自由に」と話した。
熟年離婚を考えている妻が多いことにも触れ、「理由の上位は、浮気や暴力よりも、小さい日常的なことの積み重ね」と指摘。「良妻賢母タイプで長年我慢してきた女性が、子どもの卒業や結婚を機に夫源病になりやすく、熟年離婚もしやすい」とした。
では、どうすればいいのか。石蔵教授が“治療法”としたのが、「会話と家事」だ。
まずは「夫が妻を対等な一個人として見て、上から目線をやめる。簡単な方法は『おい、お前』ではなく、名前で呼ぶこと」。
妻の話を無視し、「おい、風呂、めしの三言しかなかった」という60代の会社社長が、妻に謝り会話が復活すると、夫婦とも体調が好転した例を紹介。「妻が『しんどい』と言えば『しんどいのか?』『それはつらいな』などと返すだけでいい。言い合うことが大事」と強調した。
また、夫の定年後に妻が、昼食の用意をストレスに感じる「昼食うつ」に触れ、「男性は料理など身の回りのことをできるようにし、妻とは適度な距離をとって自立を」と呼び掛けた。
「妻が夫源病になり やすい夫」の主な特徴
□常に上から目線
□外づらはいいが、家では無口で不機嫌
□定年退職したとたん、妻にまとわりつく
□妻の話は上の空
□高熱で寝込む妻に「飯は?」
□妻の外出に口出し
□子どもの悪い部分は「お前のせい」
□家計を細かくチェック
□家事や子育てを自慢する自称いい夫
〈いしくら・ふみのぶ〉1955年京都市生まれ。三重大医学部卒業。大阪大大学院医学系研究科准教授を経て、大阪樟蔭女子大健康栄養学科教授。「夫源病」(大阪大学出版会)などの著書があり、6月12日には「男のええ加減料理‐60歳からの超入門書」(講談社)を出版予定。