百人一首についての思い その16

 第十五番歌
「君がため春の野に出て若菜摘む我が衣手に雪は降りつつ」 光孝天皇
 君に捧げようと春野の原に出て、若菜を摘みました。私の袖には雪が降りしきっていました。
 
 For you,
 I came out to the fields
 to pick up the first spring greens.
 All the while, on my sleeves
 a light snow falling.
 
「君」は目上の人のための言葉だったが、この歌を作られたのは光孝天皇である。実際には時康親王と呼ばれていた時代の御製である。しかし、作者は光孝天皇であると記されている。
 天皇よりも目上の「君」とは一体誰だろう。ここで「君民一体」、つまり天皇と日本国民は親戚であり、一体なのだという考えに及ぶ。
 
 日本の国歌「君が代は千代に八千代にさざれいしの巌となりて苔のむすまで」でも、「君」とは「あなた」のことである。「大君の代」ではないのだ。この歌を英訳したマクミラン氏も、「あなた」と読み解いている。
 ただ、この歌に関しては光孝天皇が詠まれたということなので、やはり「君民一体」の考えに基づくと解釈した方が良いと思う。国民のことを思う天皇がおられるので、日本国民は安心して働けるのだし、おおらかに楽しく生きていけるのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?